今後のマンション政策のあり方に関する検討会(5) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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2022年10月に国土交通省によって設置された"今後のマンション政策のあり方に関する検討会"は、9回にわたって議論が重ねられ、2023年8月10日に取りまとめが行われました。
9回の各検討会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は令和5年3月20日の第5回の検討内容についてです。

■第5回(開催:令和5年3月20日)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000214.html

(1)自主建替え(デベロッパー等が不参加)の円滑化について
1)事業採算性が見込めない建替え
2)通常建替えと自主建替えの比較
3)自主建替えの課題
(2)第三者管理方式について
1)管理会社による第三者管理の現状
2)利益相反に留意した取組事例
3)課題と方向性
(3)改良工事の状況(耐震、省エネ等)
(4)EV用充電器の導入
1)導入状況
2)EV用充電器の設置にかかる議論
3)充電に要した電気代の費用負担の方法ごとのメリット・デメリット
4)普通充電設備の設置モデルケース


(1)自主建替え(デベロッパー等が不参加)の円滑化について

1)事業採算性が見込めない建替え

・近年のマンション建替事業では、事業にあたって新たに利用できる容積率が小さくなっている傾向がみられ、建替後のマンションで新たな入居者に販売をすることができる住戸の面積が減少している。
・高経年、とくに旧耐震設計(築約42~43年以上)の民間分譲マンションのほとんどが容積率100%消化、または既存不適格(耐震基準上<容積率制限上もあり>)状態にある。
→再生検討初期段階で既に、建替えた場合の保留床が見込めず、建替えの見通しが立たない。

・上記のような20~50戸程度の小規模現場では、「保留床が見込めない」=「事業採算性が見込めない」ことから、初期の再生検討段階から事業協力者が参画することはほぼ困難
※事業協力者(デベロッパー)は、事業参画の条件として一般分譲をする保留床取得について【売上○○億円以上】や【保留床専有面積○○○○㎡以上】などの取り組み基準を設けていることがほとんど。

2)通常建替えと自主建替えの比較

【通常建替え】
①資金調達
・建替組合が資金調達をせず、参加組合員(デベロッパー等)の負担金で事業費を賄う。
・参加組合員との契約を与信上の担保にして組合が金融機関より資金調達
・デベロッパーは、抵当権等の担保設定をせずに、比較的容易に低利で資金調達できるケースが多い。

②検討体制
・設計、建築、保留床処分すべて参加組合員(建替えコンサルタントやデベロッパー)を軸に専門家が組成される
③保留床処分
・参加組合員(デベロッパー等)の責任と負担において行う。
・デベロッパーによる分譲販売。
④コンサルタント(専門家)
・「検討段階」から組合アドバイザーとして参画すれば円滑に事業推進が可能

【自主建替え(事業協力者としての「参加組合員」が参画しない建替え)】
①資金調達
・建替組合が直接資金調達をするため、保証会社が必要となる
②検討体制
・組合が主体的に合意形成、事業手続きを実施する必要。
・管理組合での再生検討段階から、コンサルタントを軸に設計や保留床処分の販売代理会社などのチームを編成する必要あり
③保留床処分
・組合自ら又は販売代理店等を通じて分譲販売。
・組合の販売代理で販売会社に委託することは可能だが2点課題あり
 ・借入れの返済期限までに全額資金回収するスキーム要(返済・解散・事業完了への見通し)
 ・組合自ら事業主体兼売主となることに伴う宅建業免許の要・不要の問題
④コンサルタント(専門家)
・「検討段階」から組合アドバイザーとして参画しないと課題の解決は困難ゆえ、コンサルタント参画は必須条件

3)自主建替えの課題

①資金調達
・資金調達手法(借入れ可能な金融機関、保証会社)の選択肢を広げること
②検討体制、コンサルタント(専門家)
・自主建替えをサポートするプレイヤー不足
・コンサルタントのみで、再生検討サポートに始まり、合意形成・スキーム組成・資金調達・許認可手続き・販売価格設定・入金管理など全てを引き受けるのはハードルが高いため、コンサルタントチームとして動くスキームが必要となる。その場合のチームとしての業務報酬規準を前もって定める必要がある。
③保留床販売にともなう宅建業免許の課題
・組合自ら分譲する場合、宅建物取引業の免許が必要か否か個別に行政協議等が必要な場合あり。
④保留床販売にともなう契約不適合責任の課題
・建物は通常の建替え同様に施工会社直で可能だが、土地を免責とできるのか。
→建替え組合は、事業完了後に消滅してしまうため、分譲敷地に瑕疵があった場合(地中埋設物や土壌汚染など)への対応に課題あり。
⑤デフォルトリスク
・各区分所有者が工事費を負担することになるため、一軒でも払えないとなることがリスクと捉えられ、ゼネコンに受注してもらえないといったことが考えられる。
→金融や費用縮減等に関する新しい制度ができると、自主建替えを検討するマンションも出てくるのではないか。
・デフォルトによって生じた保留床の売れ残りリスクを誰がとるのかが課題となる。権利者が連帯保証する以外にないと思うが、公的なファンドや保証制度で権利者の後押しをすることも考えられる。


(2)第三者管理方式について

1)管理会社による第三者管理の現状

〇第三者管理を導入している管理組合の割合(平成30年度マンション総合調査)
・区分所有者以外の第三者(マンション管理業者、マンション管理士等)が管理者である管理組合の割合は、6.4%。

〇理事会を設置しない方式の第三者管理
・マンション管理業協会による「マンション管理トレンド調査」によれば、管理者業務を受託する管理会社のうち、理事会を設置しない方式を採用している管理会社が7割存在している。

〇理事会を設置しない方式の第三者管理のメリット
・理事会をなくすことは、管理会社にとっても運営の手間が軽減されるなどのメリットがあり、委託費用を下げることにもつながる。
・分譲当初から第三者管理方式を導入する事例が増えている。分譲会社は理事会がないことによる負担減などをメリットとして購入者へ説明しているが、購入者からは利益相反への懸念を示す声もある。い

2)利益相反に留意した取組事例

・管理組合の利益を不当に害するおそれのある行為に対して、管理者業務を実施している部署とは異なった部署で内部監査を実施
・総会の決議を、管理者に委任できないよう議決権行使書を用いることとしている
・管理者が自社に工事等を発注する場合、監事による承認を必要としたり、総会でその旨を報告した上で発注に関する決議を諮っている

3)課題と方向性

〇総会での議決権行使
・「議決権行使書」によることを原則とするほか、外部専門家には委任できないルールを設けることが考えられる。

〇自社で工事を実施
・自身の管理会社に工事等を発注するにあたり、その旨を申告することを義務づけることや、理事会で事前承認を経るなどのルールを設けることが有効である。

〇解任を可能とするための措置
・管理規約に管理者の固有名詞が記載されている場合、解任を行うためには、規約の改正をする必要があり、特別決議の可決が極めて困難となることから、管理規約に固有名詞は記載しないこととする。

(3)改良工事の状況(耐震、省エネ等)

●関係事業者の意見(ヒアリングによる)
※修繕工事業者・設計コンサルタント等(約10社)からのご意見を国土交通省においてまとめたもの。

〇省エネ工事
・工事としては、サッシの取替、玄関扉の交換、外断熱工事(屋上や外壁)だが、外断熱工事は費用面でのハードルが高く、サッシの交換がメイン。外断熱工事は屋上の防水工事と併せて断熱工事をするケースがある。
・3回目や4回目の大規模修繕工事を控えている高経年マンションで話が出てくることが多い。高経年マンションが増えると、窓やドアの改修は今後数がでてくると思うが、積立金が不足するなかではなかなか進まないのが現状である。
・省エネ工事は、電気料金が安くなるなどのメリットが伝えやすい改修工事であり、コンサルとしては省エネ改修も積極的に提案していきたいが、補助金があったとしても他に優先したい工事があり、省エネ工事まで届かない管理組合が多い。
・管理組合の関心に地域性がある(寒冷地は断熱性について関心があるが、非寒冷地はあまり気にしていない)。

〇防災関係工事(耐震工事含む)
・東日本大震災の際に東北のマンションを担当していたが、その時でも耐震補強工事に対する関心が薄かった実感がある。コストが高いことや、バルコニーなどの共用部分にブレースがつくことを嫌がる傾向があるのではないかと思う。
・旧耐震の物件は大規模修繕工事の際に耐震性不足が議論になるが、診断や構造計算にも費用がかかり、実際に耐震補強を実施する場合も追加で費用がかかるとなると手が出なくなってしまう。

(4)EV用充電器の導入

1)導入状況

・2050カーボンニュートラルの実現に向け、経済産業省を中心とした関係省庁において「グリーン成長戦略」が策定(2021年6月)されており、電気自動車を含む電動車の普及目標に加え、充電器の設置についても目標が設定されているところ。
・マンションに設置されたEV充電器は全国で約4000基となっており(2022年時点。民間調査による)、普及が遅れているとの指摘がある。

2)EV用充電器の設置にかかる議論

・EV用充電器はマンションの共用部分に設置されることが通例であり、管理組合として管理する設備となることから、設置にあたっての費用や維持管理に要する費用、実際に充電に要した電気代の費用負担のほか、万が一故障や事故が場合の管理責任の所在など、管理組合で事後的にトラブルが生じないように設置を行う必要がある。

3)充電に要した電気代の費用負担の方法ごとのメリット・デメリット

①電力量単位での従量課金
・メリット:受益者負担の関係が明確。
・デメリット:専用の電力計の設置など、料金徴収をするための体制・設備に多額の費用を要する。

②充電時間又は充電回数での従量課金
・メリット:受益者負担の関係がある程度明確。
・デメリット:充電実績の記録装置の導入など、料金徴収をするための体制・設備に費用を要する。

③駐車料金に定額を上乗せしての課金
・メリット:料金徴収は、駐車場料金の徴収と同じ方法で容易に実施可。
・デメリット:走行距離が少ない者も、多い者と同じ料金を負担しなければならない。

4)普通充電設備の設置モデルケース

〇既存共用分電盤から供給
・充電器の種類:壁掛けタイプ、コンセントタイプ
・設置台数:1台
・配線・配管距離:約20m(露出)
・工事費用:約46万

〇近隣電柱等から低圧受電で引込・供給
・充電器の種類:壁掛けタイプ+ポール、コンセントタイプ
・設置台数:10台
・配線・配管距離:約60m(埋設)
・工事費用:約1,192万

〇普通充電器と急速充電器
・普通充電器は充電に時間がかかるうえ、今後需要が増えてきた際には複数台設置が必要となり、今後普通充電器のみでは対応しきれなくなる恐れがある。