「できない」って決めたのは一体誰なんだ? | NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ

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2024年4月、10年目突入。肺がん患者・家族の「いきる勇気」につながればいいなと思っています。

 

久光さんが亡くなった。

 

久光さんは背中を見せる人だった。

 

そして、勇気をくれる。

 

 

小児病棟への慰問にお邪魔させてもらったことがある。

 

自分自身ががん患者であること、プロ選手として、フットサルを続けていると語る。

 

そして子どもたち数人とフットサルの練習をする。

 

中学生くらいの子もいるし、幼児もいる。

 

薬の副作用のためか、みんな帽子をかぶっている。

 

 

みていると、ボールを蹴る、それだけのことが、久しぶりのことだと伝わってくる。

 

10畳もない病院の部屋。フットサルは似つかわしくない。

 

でもそんなことはおかまいなし。

 

元気な久光さんの声にひっぱられて、

 

おっかなびっくりだった子どもたちも楽しそうだ。

 

 

そこに久光さんが問いかける。

 

 

「病気になると、できなくなること、あきらめることがある。

 

でも考えてみて。

 

「できない」って一体誰が決めたんだ。

 

やってみなきゃわからないだろう。」

 

 

 

問いかけは続く。

 

 

「俺と勝負しようじゃないか。

 

俺からボールをとったら、君の勝ちだ。

 

どうだい。やるかい?」

 

 

空気が張り詰める。

 

勝負は1対1。

 

時間は20秒。

 

真剣勝負だ。

 

 

 

子どもたちの答えは・・・

 

「やる」

 

 

「お兄ちゃんがんばれ!」と小さな子も応援する。

 

 

 

勝負がはじまる。

 

子どもは必死になって久光さんに向かっていく。

 

なかなかボールはとれない。

 

もうすぐ時間がくる。

 

そんな最後の最後で

 

子どもは久光さんからボールを取ることに成功。

 

子どもの勝ちだ。

 

子どもが笑顔になる。

 

まわりも笑顔になった。

 

 

 

 

とてもやさしい慰問だった。

 

 

 

 

 

「共に前進しよう」

 

久光さんがいつも言っている言葉。

 

なんて勇気をくれる言葉だ。

 

 

心よりご冥福をお祈り申し上げます。