久光さんが亡くなった。
久光さんは背中を見せる人だった。
そして、勇気をくれる。
小児病棟への慰問にお邪魔させてもらったことがある。
自分自身ががん患者であること、プロ選手として、フットサルを続けていると語る。
そして子どもたち数人とフットサルの練習をする。
中学生くらいの子もいるし、幼児もいる。
薬の副作用のためか、みんな帽子をかぶっている。
みていると、ボールを蹴る、それだけのことが、久しぶりのことだと伝わってくる。
10畳もない病院の部屋。フットサルは似つかわしくない。
でもそんなことはおかまいなし。
元気な久光さんの声にひっぱられて、
おっかなびっくりだった子どもたちも楽しそうだ。
そこに久光さんが問いかける。
「病気になると、できなくなること、あきらめることがある。
でも考えてみて。
「できない」って一体誰が決めたんだ。
やってみなきゃわからないだろう。」
問いかけは続く。
「俺と勝負しようじゃないか。
俺からボールをとったら、君の勝ちだ。
どうだい。やるかい?」
空気が張り詰める。
勝負は1対1。
時間は20秒。
真剣勝負だ。
子どもたちの答えは・・・
「やる」
「お兄ちゃんがんばれ!」と小さな子も応援する。
勝負がはじまる。
子どもは必死になって久光さんに向かっていく。
なかなかボールはとれない。
もうすぐ時間がくる。
そんな最後の最後で
子どもは久光さんからボールを取ることに成功。
子どもの勝ちだ。
子どもが笑顔になる。
まわりも笑顔になった。
とてもやさしい慰問だった。
「共に前進しよう」
久光さんがいつも言っている言葉。
なんて勇気をくれる言葉だ。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。