トヨタの元常務 医療用麻薬持ち込み事件 | NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ

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2024年4月、10年目突入。肺がん患者・家族の「いきる勇気」につながればいいなと思っています。

こんにちは。
今日はトヨタの元女性常務が医療用麻薬を持ち込み、世間を騒がせているあの一件のことです。


人それぞれ違うかもしれませんが、往々にして私たち患者は、医療用麻薬に抵抗を持っています。依存、中毒になってしまうのではないか、そう思っています。そして、お医者さんは必ずこういいます。「適切に使用すればそんなことありません。痛みを我慢してもひとつもいいことはありませんよ」

そうかもしれません。いや、それが正しいと思います。

しかし、「なぜ中毒にならないのか?」をわかりやすく、ちゃんと説明した文章を、私は読んだことがありませんでした。


今回紹介するのは、その仕組みがかかれているブログの文章です。書いているのは緩和ケアの先生。偉い先生のはずですが、お名前は公表していません。許可を得て、転載させていただきます。


※先生の 緩和ケア医の日々所感 ブログはこちら

 



トヨタの女性常務の
オキシコドンに関するニュースは、
予想していた以上に、
患者さんに動揺はなく、
ほっとしています。


ただ、多くの方は、不思議に思われているのではないかと思うのです。
麻薬は、
痛みの患者さんにはがまんせず、
しっかり投与するように言われている一方で、
痛みがない人が持っていると
逮捕されてしまう・・・・


まるで、紙一重の薬剤・・
何が違うのか・・と。


薬剤には、様々な目的があります。


ターゲットを殺傷してしまうようなもの。
例えば、抗生剤とか抗がん剤。
■健康な人に投与した時も、患者さんと同様に、副作用は出現します。

足りないものを補充するもの。
例えば、不足したホルモンを補充するためのホルモン剤。
■充足したホルモン状態の健康な人に投与すると、過量による副作用が生じます。

足りないものを足りるように促したり、それに代わる作用があるもの。
例えば、胃粘液不足に対する粘膜保護剤や消化を促進させる薬剤。
■充足した健康な人に投与してもその性質によっては明らかな副作用を生じないことも多いです。

ある病態で、好ましくない条件を好ましい方向に変化させようとするもの。
例えば、炎症を抑えるための抗炎症剤。
■炎症のない健康な人に投与しても、炎症などの作用に関する副作用よりも、その薬剤上の副作用(腎障害、肝障害など)が主たる副作用となることが多いです。




では、医療用麻薬は・・・


効果について
脳のμオピオイド受容体に結合して鎮痛効果を発揮します。

副作用について
まずは、前置きです。



<疼痛の有無による脳内ドパミンの違い>
・疼痛がない人の脳では、”ドパミン” が ”ストレスで増える嫌悪物質” と均衡(=)を 保っています。

・疼痛を慢性的にがまんしていると、脳内のドパミンが相対的に減少(↓)し不均衡を起こしています。



<依存とドパミンの関係>
・依存状態とは、脳内のドパミンが異常に増えた状態(↑)を意味します。

・一方で、痛みを慢性的にがまん(嫌悪物質が増大)している人の脳内は、
 ドパミンが(相対的に)減少(↓)し、依存の反対の状態であることがわかっています。



<ドパミン>
ドパミンは、前頭前野の集中、情動、社会性などに関するエリアや
やる気中枢と言われる側坐核に投射されます。



<疼痛の有無による麻薬投与の影響の差>
・疼痛がない人に医療用麻薬を投与すると、均衡を保っていたところに、ドパミンが多量に投射(↑↑)されるようになります。

・疼痛がある人に医療用麻薬を投与すると、減少していたドパミンが正常化(=)し、均衡を取り戻します。



つまり・・
医療用麻薬は、鎮痛効果に加えて、
慢性的疼痛状態でドパミンが不足しているところに、
除痛することで相対的にバランスを正常化させる作用があるのです。

不足しているものを足りるように2次的に促すような薬剤なのですが、
まるでホルモンのように、はっきりと効果がでるため、
痛みがない人に投与すると
ドパミンが過量となり依存のリクスが高まるのです。



したがって、
医療用麻薬の副作用(依存)を整理すると、、
■ドパミンが相対的に不足している人(疼痛がある人)は、ドパミンが正常なバランスを取り戻す。その一方で、正常なバランスの人(疼痛がない人)に投与すると、ドパミンの過量によって依存状態となる(可能性を生じる)。

言い換えれば、慢性的に痛みをがまんし続けていると
痛みの原因は内臓などだったとしても、
脳の中では、異常事態が起こっているのです。

皆さんも、歯が痛かったことや何か強い痛みで困ったことなどあれば、思い出してみてください。
何もやる気が起きず、うずくまって、うつうつとした経験はありませんか?
がんの痛みが特別なわけではありません。
原因にはよりません。


では、痛みがある人なら、どんな投与の方法をしても安全かというと・・・
痛みを飛び越して、
イライラするなどのような痛み以外の症状に
必要以上の過量投与を続けると
依存状態に近づく可能性が出てきます。

ですから、「痛みに対する医療用麻薬の適正使用」という言葉が生まれてくるわけです。
多すぎても少なすぎても好ましくないことから、
「適正」=ちょうどよい量を見定める
を目指すのです。

このちょうどよい量を保つため、
痛みの増減に対し、
医療用麻薬を増減することを
継続的に行っていくのです。

これをタイトレーションと言います。

この増減を繰り返すという点がポイントで、
逆に、急な中止も好ましくありません。



今回の事件のことで、急な自己中断をしてしまって、身体に影響が及ぶようなケースを心配しています。

逮捕されるような薬剤だから、
飲まない方がよいと思って
突然、中止してしまうようなことがないよう
十分注意をしてください。

それぞれの人の状態で、
薬となったり、毒となったりするのが
病気に対する薬剤というものなのですから。

 

以上です。
先生、ありがとうございました。
 

 

 

 

<告知>
7
20日、秋葉原にて、イベントあります!

 

http://www.cancernet.jp/56jlcs4c/

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