『サニー 永遠の仲間たち』 | おじさんの依存症日記。

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                 三角絞めでつかまえて-サニー 永遠の仲間たち


 2012年公開の韓国映画。 監督は、カン・ヒョンチル。 長編はまだ2作目。

 おじさん、この映画の評判の高さは知っていたが、タイトルがどうにも気恥ずかしくて敬遠していた。 しかし、『きっと、うまくいく』 で男の友情物語を観たので、女の友情物語も観てみるかと重い腰を上げた。 これがまあ、大当たり。 なぜもっと早く観なかったのかと、今は慚愧の念に堪えない。 それほど素晴らしい作品だった。

 全斗煥政権下の80年代後半の韓国。 田舎の漁村からソウルの女子校に転校して来たイム・ナミ (シム・ウンギョン) は環境の変化に戸惑うも、義理人情に厚いリーダー格のチュナ (カン・ソラ)、二重まぶたに憧れるチャンミ (キム・ミニョン)、口の悪いジニ (パク・チンジュ)、凶暴な文学少女のクムオク (ナム・ボラ)、ミス・コリアを夢見るポッキ (キム・ボミ)、美少女で雑誌のモデルのスジ (ミン・ヒョリン) とすぐに仲良くなる。 当時流行していたボニーМの 「Sunny」 から7人のグループ名を 「サニー」 と名付け、青春の日々を過ごすナミたちだったが、7人でダンスを披露する文化祭当日のある 「事件」 をきっかけに7人は離れ離れになってしまう。 
 
 そして25年後、夫や娘に恵まれ、慌ただしいながらも幸せな生活を送っていたイム・ナミ (ユ・ホジョン) は、母の入院先でチュナ (ジン・ヒギョン) と再会する。 しかし、彼女は癌に冒され、余命2か月と宣告されていた。 最期の願いとして高校時代の仲良しグループ 「サニー」 のみんなに会いたいというチュナの願いを叶えるために 「サニー」 のメンバーを探す過程で、ナミの人生で最も輝いていた時代の記憶が蘇る。

 しかし25年の歳月は、かつて共に青春時代を謳歌した女子高生たちの運命を大きく変えていた。 映画は過去と現在を自由に行き来し、時の流れの残酷さを浮き彫りにしてゆく。 この、現在と過去のスイッチの仕方が、絶妙。

 チャンミは、営業成績が上がらぬ保険のおばさん。 ジニは整形で顔を変えて玉の輿に乗るが、夫の浮気に悩まされている。 クムオクは狭い団地住まいで、姑のいびりに耐える毎日。 ポッキは実家の美容院がつぶれ、大学を中退して水商売で働くシングルマザー。 スジはどうしても現在の消息がつかめない。

 印象的なエピソードやシーンが随所にちりばめられているが、ナミが現在のメンバーたちに会った後、チュナに渡されたDVDを再生する場面では、おじさんの涙腺が決壊した。 そこには、将来の自分に向けて夢を語るメンバーたちの姿が記録されていた。 無限の可能性を秘めていた高校時代と、いまのリアルな現実との対比が胸を締めつける。

 もうひとつ、恋に破れてひとりベンチで涙する当時のナミを現在のナミがそっと抱きしめるシーンは、映画史に残るくらい切ない名場面だ。

 そしてチュナの葬式のシーン。 チュナの遺言で、文化祭で踊れなかった 「Sunny」 を残されたメンバーが乱舞する。 祭壇に飾られたナミが描いたチュナの肖像画が笑顔に変わり、最後は高校時代の肖像画に変わってゆく演出は心憎い。 このイラスト画は、エンドタイトルのロールでも使われ、その後の 「サニー」 のメンバーたちを語ってゆく。 

 主役の少女期を演じたシム・ウンギョンが 『怪しい彼女』 の主役だとは、まるで気づかなかった。 さらに、親分肌で包容力があり、喧嘩も強い 「男前」 のリーダー、チュナの少女期を演じたカン・ソラに注目。 役に恵まれた面もあるが、その魅力は将来性に満ちている。

 すれっからしのおじさんが感動したのだから、女性の方たちにはたまらない映画だと思う。 二度と帰らぬ青春の日々を、愛惜してみてはいかが?