1918年の札幌電気軌道開業に伴い、名古屋電気鉄道第1号形をお輿入れした木造2軸単車。
台車と電装品には米国製の部品が使用され、展示車(札幌電気軌道22号車名古屋電気鉄道29号車)をよく観てみましょう。


木造2軸単車と云えば、米:ブリル社製21E台車が知られていますが、
鋼板リベット組のペックハム7B台車とウォーカー社製の制御器及び25psモーター1基を備えています。

ペックハム7B台車
軸受上部にはメーカーの刻印が付いた部品を使用。
1900年以降に増備された17号からは電装品をゼネラル・エレクトリック800E型モーター(25ps)にとGE社製のR2型制御器に変更されました。

札幌電気軌道は1927年に市営化されて札幌市交通局となります。しかし、昭和に入ると小型・非力・老朽化が目立ち1935年〜1936年にかけて全車廃車となりました。
廃車後、29号車が車庫内で保管されました。
1951年の円山動物園開園にあたり、遊戯物として園内に展示されました。

円山動物園から返還され
動態に戻された22号車
交通局
1960年

1960年、
円山動物園より返還され、廃車となっていた40型の部品を利用して動態状態に整備されて車籍も復帰しました。復元工事中に台車部から見つかった名電時代の番号と思しき22号に改番されています。

車内。籐の吊革とすずらん灯が今では贅沢に見えますが、明治・大正期には一般的な内装装飾でした。


制御遮断機
三菱電機製の制御遮断機で、戦前の電車でよく見られる大型のもの。これはオリジナルでは無く復元時に40型のものを移し替えたものかも知れない。

制御器
これもかなり年代物の制御器で、GE社製R2型制御器(直接制御式)。

  WESTING HOUSE
  (EL)ECTRIC AND MFG.CO
(括弧内は加工の際に削ってある)


現役時代の運転席の様子。制御器は現役と変わっておらず、車体の羽目板や板割りから見るとこの車輌と思われる。右側のハンドルはブレーキハンドルでこの車輌の制動装置はこれだけ。


制御器をいろいろ調べていると、息子が制御器の裏に"改修証"なるプレートが。
昭和34年12月…1959年はまさに復元工事の最中となります。


1965年に札幌市と豊平町(現在の札幌市豊平区)合併の際に装飾された22号車。1960年に動態保存された後は度々花電車に起用されている。


1972年、札幌オリンピックの際に運転された花電車。屋根には大きなスピーカーを据え、派手な装飾を行なった電車が市内を走った。しかし札幌市はこのオリンピックを控えて大半の路面電車と定山渓鉄道線は廃止された。

市営交通50周年記念パレード
22号車
西四丁目
1977年7月31日

市営交通50周年パレードの後は札幌市交通資料館に収蔵されて静態保存車となりました。その後も車籍は残っていたものの、営業線上の走行は不可能であり、書類上においても1993年に正式に除籍されました。


🔵札幌電気軌道 10形 諸元一覧🔵
型式                  10型(11〜37[13・23・33欠番])     24輌
製造年                  1898年〜1907年
寸法(長×幅×高)   7,387mm×1,828mm×3,500mm
ホイルベース       1,524㎜
車輌重量              5.5㌧
定員                     26名
台車                      ペックハム7B台車(米)
制御器・出力      
(11〜16)          ウォーカー社製制御器(直接制御式)
                  ウォーカー社製25psモーター1基
(17〜24)    GE社製R2型制御器(直接制御式)
                  GE社800E型モーター(25ps)1基
駆動方式              吊り掛け式

※札幌電気軌道・札幌市交通局時代の写真・図面は札幌市交通局50周史より。