辰野町を見下ろせる丘の上にある荒神山公園に着きました。ここにはD51 59号機が静態保存されています。



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D51 59
荒神山公園
2017年10月13日

この蒸気機関車は1937年8月に川崎車輌により製造されたもので、この時同社により製造されたのは鉄道省の流線型電車:クモハ52や南満州鉄道のあじあ号牽引機:パシナの最終号車(パシナ12)も落成しています。

1936年、鉄道省の標準型貨物用蒸気機関車として登場したD51は凡そ10年に渡り1,115輌製造された日本の機関車のなかで最多製造数を誇る"名作"であり、国内に留まらずロシアや台湾のほか国連にも輸出される※など、戦前に設計された工業製品のなかで高い評価を受けるに到りました。

製造に関しては川崎車輌のほかに汽車製造・日本車輌・日立製作所・三菱重工業のほか、鉄道省でも浜松・大宮・鷹取・小倉・長野・土崎・郡山・苗穂の各工場で行われており、日本の鉄道車輌の製造技術水準の向上にも貢献しております。

※輸出仕様D51が製造されたのは戦後(1946〜1950年頃)になってから。
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正面を見ると、北海道時代のまま保存場所に来ているようです。まず、北海道のSLを物語るうえで欠かせないボイラー前の手摺りはなんと右側が無くなっています。状態が良い保存機なだけにこれは残念です。
前照灯はLP403、補助灯はLP405を装備しており、スノープラウも履いています。
煙突には回転火の粉止め(煙突から火の粉が出て沿線での火災を防ぐため煙突上部に羽根や金網が設置されている)も付いています。


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1937年8月、追分機関区に新製配置されるもすぐに稲沢機関区に貸し出されます。1937年12月には追分に返却されました。
1961年9月、金沢機関区へ移動しますが1962年6月に追分に戻りました。1968年2月には小樽築港機関区に移ります。蒸気機関車ブームの最中にはスワローエンゼルことC62 2号機と同じカマのメシを食うも動力近代化の波に飲まれるかのように1973年10月には北見機関区、晩年には岩見沢第一機関区配属となり、観光用を除いて国鉄最後の営業用列車を務めた夕張線が、この機関車の最後の住処でした。つまり、この機関車は1975年12月24日※にD51241号機が牽引した本線上では最後の蒸機列車(貨6788)運行時にも、岩見沢で生きていたうちの1輌です。

※説明板には『昭和51年1月24日北海道夕張市において〜』と記述があるがこれは誤りで元号で示せば昭和50年12月24日。


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除煙板(デフレクタ)は切り詰め型。これは連結・切り離しの多い石炭輸送での仕業から連結作業での使い易さからこのような型に変わったと言います。もっとも、地元の中央本線や篠ノ井線でもD51は数多く活躍し"長工デフ"と呼ばれるデフレクタや集煙装置を備えており一部の蒸気機関車ファンからは不満出るかもしれませんが、それはそれ、これはこれで日本最後まで残った由緒ある1輌として思わぬ出会いは嬉しい限りです。

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機関士側から見ると"ナメクジ"と呼ばれたエントツからサンドドームまで一体型のシルエットが目に付きます。足回りは白塗りになっており、岡崎南公園の※D51 688のような艶っぽさはありませんが欠品は見受けられず、定期的に手入れはなされているようです。

D51 688号機については過去の超快速やまやのブログをご覧ください。


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コンプレッサーや各種配管、汽笛、清水缶などメカニカルなパーツが並ぶキャブ前まわり。

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機関士側キャブ前方に並ぶ装備品の数々。
キャブ窓は吹雪対策の旋回窓を付けています。これらは1962年10月に耐寒工事施工時に行われたものと思われます。

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キャブ下に向かい何本か白いパイプがキャブ下の箱に向かい延びています。これはエアパイプで箱のなかは空気分配弁が収まっています。
本州では弁は剥き出しになっていますが、北海道で活躍した蒸気機関車は飯盒状のカバーを使っています。

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ナンバープレート下には、メーカープレートが付いていましたが、残念ながらありません。ナンバープレート上にはタブレットキャッチャーがあります。


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区名札と運行札はダミーの札が入っています。単線運用も多く、タブレットキャッチャーは補助側にもあります。


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耐寒工事の際にHゴム化されて表情が変わった運転席窓。発電機も通常のものとATS用の2基が載っています。既にこの地に据え置かれて40年余りが経過してもなお、北海道での勇姿をいまに伝えています。

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旅もいよいよ佳境へ。色づき始めた道を進んでいきます。