老後の蓄え | 広島で乳がん治療をしているひがき乳腺クリニック院長・檜垣健二のブログ

広島で乳がんの治療をしているひがき乳腺クリニック院長・檜垣健二です。

 

 私が小学生だったころ、イソップ物語が授業でとりあげられたとき、「アリとキリギリス」が紹介されました。確か、「ラストはキリギリスがアリに頭を下げて食べ物を恵んでもらう」、というストーリーだったように思います。

 その後、イソップが書いたものにはラストシーンがないことを知りました。要するに、教育用にストーリーが作られたのです。

 「イソップ物語 その恐ろしい真相」(五島勉著)を読むと、アリがキリギリスを食べてしまったという結末もあり得るとのこと。著者は教訓として、「好調の時にこそ、それが崩れる危機感を持て」と述べています。

 たしかに、中務哲郎訳の「イソップ寓話集」(岩波文庫)では、キリギリスではなくセミとなっており、アリの「夏場はどうしていたのか」の質問に対して、「怠けていたわけではなく一生懸命に歌っていました」と答えたセミに、「夏に笛を吹いていたならば、冬には踊るがいい」と言って物語は終わります。

 このところ、私は月間の「文藝春秋」を購読しています。新年特大号には、和田秀樹氏の「どんな時もいちばんラクな方法を探す」は頷けました。

 精神科医であり八十代の方を中心として診られた経験から、どんなにすごい肩書であろうが一過性であり、年をとってやりたいことをしようと思ってももう遅いことがおこりうる。そう考えると、老後の蓄えは最小限で、あとは今のうちに人生を楽しむほうがいいのではないかと思えるようになりました。

 いつ地震や戦争が起こるかわからない今日、キリギリスとしてどう生きるかを考えなくてはならないと思います。

   

広島で乳がんの治療をしているひがき乳腺クリニック院長・檜垣健二でした。