ええっと、オスカルとアンドレを縛る3つの鎖に関する考察の合間なんですが、

 

SSのホストクラブの話でカロリーヌを書いたので、ちょっと外伝 黒衣の伯爵夫人について、喋らせてください。

 

この外伝について言えば、私は自分が「リアタイ」だ。と言えます。(真のリアタイはオスカルさまファンクラブのエミリさん方ですが。)

このお話はベルばら本連載が終わって、オスカルさまがフランス万歳!と亡くなられて、ショックで学校を休んで泣き伏した少女たちに与えられたボーナスストーリー。1974年週刊マーガレット4・5合併号、6・7合併号の前後編。私は11歳ですね。

オスカルさまが生きていた!アンドレも!の過去ものの外伝。熱烈歓迎、シュプレヒコール!

 

絵柄がね、いいんですよね。まだ、連載終わって、割とすぐだからね。オスカルさま死んじゃってもうマーガレット読まないという子もいたからね。時期はアンドレ偽黒い騎士になるため髪を切って、ベルナールに眼を潰される前。

両眼開きのアンドレ!アンドレ髪、結構長い!肩の下くらいまである。ということは、偽黒い騎士で盗賊やってた時期は案外長いのねー(髪の伸びるのに時間かかるから)とか思ったりしました。

ピクニックの後、ロザリーとル・ルーを追っ払って、見つめ合う二人。いやー、もう2ページないくらいのこのサラサラと風の吹く野外に佇むコマをどれほど見返したことでしょう。

次のページでオスカルさま、無防備に仰向けに寝ててさー。(興奮する読者少女たち。いえ、まだこの時期はブラびりの前ですから・・・そんなことないんですけど。)

 

ええっと、最初から行きましょう。

これってホラー作品ですよね。1970年代は流行ってました。さっきちょっと見たら、

 

という研究があって、すごく面白い。

 

黒衣の伯爵夫人の話は冒頭で、「全身が凍りつくような妖気」をオスカルさまが感じられて、「あ、今回ホラーなのね。この女が怖いことするのね。」と告知されているので、読者少女たちも安心して読めます(笑)

それで、オスカルとアンドレが生還するのは当然として、子どもは死なないからル・ルーも生還。この場合に生還するファイナル・ガールはロザリーでしょう。

 

対する、あ、これは死に役だなというのが、カロリーヌ。徹底的にロザリーに意地悪を仕掛ける。

いやー、すごくわかりやすいからリアタイで読んだ時には、何にも思わなかったけど、

これ、今読むとカロリーヌの死体を片付けるのがすごくイヤだわ。でもって何がかわいそうかって、あの人の良さそうな(娘に似あわぬ)おかあさんのルフェビュール侯爵夫人。おかあさんが変わり果てた娘の葬式に立ち会ってる姿を思うと胸が痛む。

 

連載当時は、ロザリーが少女読者の間でとても嫌われ者だった。カミソリもロザリー宛に出版社に送られたんですよね。

でもってこの物語はロザリーの復権も兼ねていて、カロリーヌはロザリーに

「蒸留水みたいな心してますって顔して、憎しみもねたみも欲望も持ってませんって顔して、いい子ぶっているそんなあなたがとても嫌いよ」

っと言い放ちます。

これはねえ、カロリーヌはロザリーをねたむ読者少女の象徴なんですね。当時はまだぶりっ子とかいう言葉はなかったのですが、ロザリーの可愛らしさ、あざとさ、強さは確かに妬ましいかも。

でもって、ロザリーは

「オスカルさまのあのまなざしをそそぐ、全ての女の子がねたましくて、そのくせ自分が自分でいやになるほど何も言えなくて」と言っています。

自分もドロドロの内面だっと言っているんですね。これは当時の少女マンガにはまずなかった。お人形のように可愛らしいキャラクターは同じとても綺麗な内面を持っていると信じられていたし、設定されていたから。

画期的だと思います。当時、親や大人の人々から、「どうしてロザリーは人気ないの?」と聞かれても無視してました。少女読者は。その後、ベルばらの人気に眼をつけた「ラ・セーヌの星」とか福井芳雄先生のNHKフランス語講座に少女主人公シモーヌが見るフランス革命みたいな作品が出たけど、まあ、面白いんだけど、ベルばらほどでない。

 

可愛い少女は内面も綺麗という常識をベルばらは覆してくれるのですね。オスカルさまもこのぬめぬめした人間社会を女でありながら生きるって言ってるしね。かっこいいですよ。

 

さて、カロリーヌですが、セオリーに乗っ取ってリオネルに殺されてしまいます。カミソリ送るような意地悪な少女はこうなっちゃいますよという寓話ですね。昔のホラーはモラルや道徳が密かに隠されてます。不遜な行動をしたり野外で性行為するようなバカップルは一番先に殺される。(アニメの蛍の2人は気をつけてー〜。ホラーでなくてもその場所は危険という気がするが。)

 

ホラーのセオリー通り、カロリーヌが殺されて、後半戦、オスカルとアンドレがロザリーを助けに走り、アンドレがロザリーを片腕に抱いて階段の手すりを滑って、オスカルの救出へ。

 

アンドレ、ヒーローですよー。この作品は彼のコミカルな部分もセクシーなショットもオスカルとの関係性も楽しめる、たいへんお得な作品です。

アンドレ、謎のスーパーな能力。

「弾は一発きり。」なんでそんなことわかるの?この時代の銃って一発だけなの?いや、7月12日の戦闘では連射してるように見えるんだけど。レジェンド様式だから?

でもって、「あたったにしても」

というオスカルのためならの捨て身な作戦を企てます。

で、「眼を閉じろ」って言って、ロザリーを抱き階段の手すりを滑るんだけどさ、

アンドレ、自分にあたることは想定なんだけど、ロザリーにあたるかもしれないことは考えてないよね。

ロザリーも先ほどの「オスカルさまがそのまなざしをそそぐ全ての女の子がねたましくて」

と言ってますが、男はいいんですかね。先ほど野外でオスカルさま、アンドレと見つめ合ってますけど。

アンドレとロザリーは、オスカルをめぐる同士、あるいは好敵手なんでしょうね。

当時の読者もここでアンドレがロザリーを抱えていることに対して、何も言わなかったもんね。

館が火の海になってアンドレがつぶやきます。

「よし、ロープを」

は?ロープどっから出てくんの?ロープがある場所どうして知ってんの?昔のお城の構造はだいたい同じでロープをしまって置く場所はわかるとかなんでしょうか?えー、ありえん。

アンドレ、謎のスーパーな能力を駆使して、肩に弾をかすらせ、額に伯爵夫人の鞭を受けながら、オスカルにロープを投げる。オスカル取る。でもって、アンドレ、「手がやける。」のコマが。

オスカルが薔薇の茂みに飛び降り、階段を上がって、アンドレを救出へ。えーーーっと、確か、さっきアンドレが火で下に降りれないからロープをでなかったんでしょうか。降りられないのに上がってこれるのね。

 

最後に、私が一番怖かったのは、カロリーヌの死でなくて、伯爵夫人が小間使いの女の子が針を刺したからって眼に針を刺すシーンです。いや、これ怖いわ。針をちょっと刺しちゃっただけなのに目潰し。時計技師も目潰し(というか技師は目が見えなかったらダメでしょ。足でしょ、傷つけるなら。)作者先生、アンドレの目もやったけど目潰し好きなのよね。

なんの罪もないのに酷い目にあったり死んだりする例がベルばらには多い。デュバリー夫人のろうそく係の毒ワイン殺人とか、ディアンヌとか。ディアンヌの場合は、縊死だからベットに降ろしてそのまま放置するアランと母上がいけないんだけどね。

 

黒衣の伯爵夫人、久しぶりに読み返したら大変面白かったです。