思いもがけず続きです。
オスカルさま、もしかして不用意な発言をなさる方である疑惑
カロリーヌのロザリーいじめ場面、雨の中に突き倒していて窓から放つセリフ
「オスカルさまになにもかもきいたんだから!パリの下町の乞食娘のくせに!!
ええ そうよ!オスカルさまが直接教えてくださったわ。あの子は居候で気の毒な子だけどただそれだけで何とも思ってはいないって。」
これねえ。オスカルさまはそんなこと言わないって、読者の少女は皆思っているけどね。
じゃあ、カロリーヌはどっからそんな情報得たの?疑惑が残るよね。
「パリの下町」って地域限定だしね、あたっているしね。乞食って言葉が死語だなあ。あと居候も。(居候ってシステムが昭和。どらえもん、オバQは居候)
ロザリーを舞踏会に連れて行くにあたって、オスカルは「私の姉の嫁ぎ先の遠縁」ってことにしたんだよね。だからこの回のオルスタンス姉上宅訪問もその口裏を合わせるためって感じなのかな。手紙でロザリーのことを「私の姉の嫁ぎ先の遠縁」にして欲しいと頼んでおいた?そのためのロザリーの状況をパリの下町で母を亡くした少女を引き取ったとか書いちゃった?でもってそれを見ちゃった侍女がなんかで喋ってるところをカロリーヌが聞いちゃった?「オスカルさまのお姉さまの嫁ぎ先の遠縁ってわたしじゃない?」
いやいやオスカルさまが直接、オススタンス姉上に喋っちゃって、カロリーヌに聞かれた可能性も、実は否定できない。
だって、オスカルさま、ディアンヌにこんなこと喋っちゃった前歴があるんですもの。
「病気の母を養うためパリの街で売春婦をしようとしていたとき、彼女はわずか12歳でした。」
ば、売春婦って、いやいやいや止めたでしょ、外ならぬオスカルさまが。せめてやる前に止めたって言ってあげて。これだとやっちゃった感じ。少なくても売春せざる得なかった状況でやろうとしたと喋ってるよ。
パリってさぁ、山手線の内側くらいの広さしかないのよ。ディアンヌとアランの家がどこにあるのかしらないけど、パリ中心部のパレロワイヤル近くのロザリーんちとたぶんそんなに離れてない。当時のパリは新聞もビラもバンバン出てるし、ロザリーはジャルジェ准将の肖像画持ってるからね。そんな部下の妹なんかに軽々しく喋っちゃダメよー。
売春ねーー。私、小さいころ(大人になってからかなり経っても)売春という犯罪がよくわからなかった。
だって、窃盗や殺人が悪いことだってことは小さな子どもでもわかるけど、被害者と加害者がはっきりしてるけど、
売春はさ、女の方が捉まるのよ?加害者なのよ。
ロザリーとミラボー伯でいえば、売るロザリーが加害者で買うミラボー伯が被害者よ?(まあ、ロザリー12歳だから今はミラボー伯は児童淫行罪で捕まるけどね。これが成人だったら女性側が捕まる。)
んなわけないだろーーー、買う方もどう考えたって悪いだろうっと、割と最近まで思ってた。
売春は自然発生します。
男の子Aと女の子Bは恋愛感情は特にないけど合意で性行為してました。いわゆるセフレというものですね。互いに合意だからまあいい。ところがしばらくして男の子Aは女の子Bに自分の友達男の子Cとも性行為しないかともちかけました。Bは良いと思ったのか悪いと思ったのかわかりませんが合意の上、Cとも性行為をしました。それでしばらくして、AはBを蔑み貶めるようになりました。いわく「タダで男に身体を許す女だから」自分が勧めたくせにです。しかもお金を取って性行為する方がましで、階級が上なのです。タダの女(セフレ)が最下級でいっぱい金取る高級娼婦が上。セックスができる友達は男性側と女性側では全然意味が違う。
女は不特定多数と性行為する男を貶めたりはしない。(見捨てることはするけど)でも、男は不特定多数と性行為する女を無茶苦茶貶め、蔑むんですね。ビッチ、淫売、公衆便所, etc. 酷いものです。
これはね、男性は性衝動をおさえられない自分を軽蔑しているんですよ。理性が劣情に負けた、心ならずも肉欲に堕ちたと思っている。で、ここが恐ろしいところなんですが、彼らはすぐに身を任せる女性を、それが好きな女性で、それを許すのが他ならぬ「自分」だとしても、軽蔑し残念に思うんです。
若いお嬢さまたち、だから男はひっぱっていいんです。なんだーかんだー言って許さなくてもよし。なんなら結婚までそういうことはしないと言ってもよいです。アンドレが25年ほど待たされたように彼らは待ちます。(待てない男には愛はないから振ってよし)
女性の愛のゴールが結婚式で指輪をもらうことなら、男性の愛のゴールは初夜なんですよー。
できれば順序は間違えない方がいい。
アンドレの(いやいやいやいや、アンドレだから大丈夫、そんなことはないと思う)オスカルの「この戦闘が終わったら結婚式だ」の後、驚いている表情が「あ?もう結婚式終わったんじゃ?」でないことを祈る。
ここまでくればわかってくるように、売春は何を買っているかというとそれはもちろん女性の身体ではあるのですが、同時に男性の懺悔、罪悪感を買っているのです。金払った方がいいんですよー。むしろ金払いたいんですよー。愚かにも理性が劣情に負けた罰のゲームだから。金払って、罪悪感から逃れたい。
でもって金払うことによって、堕ちたのは自分じゃなくて女側にしたいのですね。
男を買うシステムであるホストクラブが結局女性の売春を基礎に立脚するのが不思議でしたが、ホストさんたちは賤業とされる性産業を巧みに誉めてフォローするのですね。
まあ、こんなこと言っちゃなんですが、体液を処理する仕事なんて本来ちっとも怖くも汚くもないですわ。介護職も看護職も、だいたい母親をやればオムツ替えは必須。体液満載ですよ。だからホス狂さんたちが、慣れた気にしないとおっしゃるのもわかる気がします。
問題は蔑まれる職業になっていること。
それでこれが最大の問題なのですが、そんな仕事を誉めてくれる人がいる。それがホストさんだと思うのです。
「よくやったね、えらいね、がんばったね。」
それで成立してしまうわけですね。循環してしまう。恐ろしいですね。
人間は名誉の復権には恐るべき額の金を払いますからね。
最初に戻ってオスカルさまのおっしゃったロザリーの売春婦発言なんですが、
売春婦はなにがなんでも可哀そうな哀れな存在で苦しく悲惨な生涯でないとならないようにされています。
私もずーーっと身を売らなければならないほど悲惨な状況なんだ、なんて可哀そうなと思ってきましたが、
そうでもないかもなと最近は思っています。
最後に「貞操」ですが、この古臭い言葉には、人に決して自分のそれまでの性行為歴を決して喋らないということも入っているんだそうです。(過去のなんとか歴など言わない、墓までもってく)人にそう思われるような状況を作らない(昼間だってイチャイチャはできますが、終電逃して泊まったりすると親に知られるのでしない。)ということも入るそうです。昔の人のそれなりな知恵ですな。