アンドレ停止中
たぶん、アンドレは屋敷のどこかに寝かされている。
間髪を入れず、満月の夜、オスカルはジェローデルを話があると呼び出して、庭を歩く。
そうなのよねー、お嬢さま、こういうことするのよねえ。前にアンドレが寝てた時は黒い騎士に眼を鞭打たれた時。ロザリーが心配なのはわかるけど、いきなりオスカルさまはオルレアン公に公式訪問の連絡を入れて、出かけてしまった。(アンドレが偽黒い騎士の恰好をして眼の包帯をほどき救い出してきた。)
今回もアンドレの回復を待たずに自分ちの庭とはいえ、2人きりで男と歩いている。
(あぶないよねえ、状況とはいえ、唇を許した男なんだけど)
こうゆーことするお嬢さまだから、このうちの従僕はいくつ命があっても足りないのよねー。
まあ、いちばん危ないのは毒盛るこのうちの従僕だけどねー。
さて、オスカルさま、親が決めた許嫁と一緒に庭を歩き、問いかけます。
「こないだ愛していると言ってたけど本当か?」
「誓って誠の愛か?」
許嫁、頷く。もちろんもちろん。
オスカルさま、今回は一応シナリオ作ってきたね。
「愛はいとしいものの不幸せを望まない」
「ここにひとりの男性がいる」
「かれはわたしが他の男性に嫁いだら、生きてはいけないほど、わたしを愛してくれていて」
オスカルさま、ちがう。
「かれはわたしが他の男性に嫁ごうとしたら、わたしを殺して自分も死のうとしたくらい、わたしを愛してくれていて」
が正解です。
「もしかれが生きていくことができなくなるなら、かれが不幸せになるなら。」
「わたしもまたこの世で最もこの世で不幸せな人間になってしまう。」
不幸せでコーティングされてますが、「かれが生きていくことができないならわたしも生きていけない」
と言っているんですよね。
ああ、こっからのジェローデルの言動は神じゃなくて道化師です。
「アンドレ・グランディエですか?」
そんなわざわざ名前を言ってあげなくとも。
「かれのために一生誰とも結婚はしないと?」
そう、どーしてジェロさんはそうゆーふーに誘導してあげちゃうかな?身分違いでも偽装結婚を持ちかけることもできるのに。
オスカルさま「かれのために一生誰とも結婚はしない」なんて言ってないのにーーー。
ここでうなずかれちゃう。
そして極めつけ
「愛しているのですか?」
うーん、間抜けだ。なんでそんなことわざわざ聞くのだーー。
いやいや、きっとジェロはここで「かれを愛している」と言ってもらって、「それならばしかたがない」とつなげようと思っていたのかも。
でもオスカルさまはツワモノです。
「わからない」
はい!こっから先は、オスカルさまの惚気(ノロケ)ですからね!わざわざ惚気を聞く羽目になったジェロ氏。
「兄弟以上に魂をよせあって生きてきた。よろこびもかなしみも青春の全てをわけあって。そのことに気がつかないほど近く近く。」
幼馴染の鎖を自覚したオスカルさま。わざわざ鎖を解いてあげたジェロ氏。やっぱりジェローデルはAOの神なのですね。
不幸せで納得してあげる。
(つーか、これって「かれが死んだらわたしも死ぬ」って言ってるんですよね。)
で、ジェロもわたしも不幸せにって言ってますけど、これも「自分も死ぬ」って言っていると思う。
「受け取ってください。たった一つのわたしの愛の証です。身を退きましょう」
すっばらしいですね。身を退く神ジェローデル
「オリンポスの神々とともに立たせたい。」
後ろ姿のコマが2個。一コマでは退場しきれない、神の退場です。ベルばら50周年ではジェロ氏の正面の全身ショットがなくて困ったらしいですけど、後ろ姿は全身2コマもあります。
オスカルさまが「愛のかたち」について草をくわえながら講釈を垂れる。
「身を退くことがたった一つの愛の証」
愛にさまざまな形があることを読者の少女たちに教えてくれる。オスカルはフェルゼンに思慕を寄せてそれは終わったが、愛は移ろぐものではなく、新たな形をもって生れ出ることを示してくれる。
ここで様々な愛の形、有り方を現わしてくれる作者先生は真に恋愛の達人です。なによりベルばらの恋愛は先をいそがない。自分に生まれ出た気持ちを焦って人に押し付けたり無理に進めたりしない。オスカルはここで愛の様々な形を知り、確実に成長したと思います。
そして、私が気になるのはジェローデルがジャルパパになんと言ったかなんですよねえー。
今はマッチングソフトでダメになったらブロックすればいいのかと思いますが、昔のお見合いは男性の方からは断れなかった。女性の振袖のお見合い写真を開いたらもう断れない。ジェローデルはもう求愛してますからねえ。古今東西、プロポーズを引っ込めるのは男性の方からはできないと思うんですよ。まあ、オスカルさまのしっちゃかめっちゃか求婚パーティーで世間の人はそれでダメになったと思うんですけど、ジェロはパパ将軍には自分からちゃんと言わなきゃならないでしょう。撤退は難しい仕事です。今も世界で戦争があり停戦も休戦もできないからこそ犠牲が積み重なっているのです。