オスカルさまサイドから書きます。

ワインを飲もうとしたらいきなりアンドレが襲いかかってきて、持ってきてくれたワインを「飲むな、飲むな!!」とぶつかって押し倒される。

何事?って感じですが、アンドレの涙がポトっと頬に。

 

ここはねえ、私の中ではもうラブシーンですよ。

こんな顔の近距離で涙を落とされる関係ってある?何センチなのこの距離。

恋人でも夫婦でもこの距離ってまずないわ。

それでもーーんのすごっっく挙動不審なんですけど、アンドレを問い詰めないオスカルさま。

アンドレは割れたグラスの一片を取り残し、オスカルがそれを見て

「まさか」って言っているんですけど、ここはアンドレが目が見えてなくて取り残したんじゃなくて、アンドレがヤった犯行について言っているんだと思うんですよね。

「まさか」って何を言っているんだか難しい。

こういうときはフランス語版を見てみましょう。日本語と違って、主語なし動詞なしではセリフにならないので、こういう「まさか」みたいなセリフは苦労して訳していらっしゃると思います。

André Il n'a pas essayé de...

Non

アンドレ、彼は何かを試みようとした? いや

ですね。訳文苦労されてます。少なくとも仏語版は「まさか」はやっぱりアンドレが何かしでかそうとしていたと解釈されてますね。

 

さて、アンドレの不可解な行動。まあ、ヤバいワインであったことは明白です。

でさ、犯人は、自分のグラス持って行ったんですかね?オスカルの命が助かったことに目がくらんで、叩き割ったグラスのヒトカケも残していくマヌケな犯人はどうみても自分が飲む杯をテーブルの上に残して行ったと思われます。いかんのう、証拠品残しちゃ。バレバレだよ。

 

さて、アンドレに押し倒されても動じない、さすがのオスカルさまもアンドレのしでかしたとんてもない事件に気づいてはいるでしょう。アンドレ戻ってこない。残ったアンドレの分の杯はオスカルさまが捨てたのかなあ。彩夏さんご指摘の、ワインが飛び散ったと思われるブラウスは?

 

今までになく不安になったオスカルは母上の部屋に行きます。

母上、不思議な人ですよね。前にも書きましたが母上、オスカル誕生の時にヒトカケラも出てこない。とても影が薄い。でも、非常に重要なシーンではその役割を果たしています。

ロザリーに母上が襲われるシーンで、「オスカル、そんなおそろしい目をして」と言われたオスカルが鏡(どっから出した?)を見るシーン。女性性を忘れないでのシーン。

 

オスカルは母上と言って、その膝に突っ伏します。

 

自分語りになって申し訳ないのですが、私はこのシーンが小学生の頃から羨ましかった。

ずっと母の膝に飛び込んで甘えてみたかったです。ついに母が亡くなるまでできなかったです。うちの母がポリニャック伯夫人だからということもあるのですが。いわゆるアダルトチルドレンでした。でもなんとかなりましたよ。30歳くらいでようやく、母は1人でなくていいんだ、別に産みの母が全てじゃない。近所のおばさんやおばあちゃんや先生やいろんな優しい人に母性を受けて育って構わないんだとわかってから、ようやく自分の人生受け入れ。自分も同様な幼い子や愛に欠ける人を愛することでちゃんと驚くほど満たされることを知った。愛が持てる人生は豊かです。世の中には信じられないほど愛に溢れた人というのがいるので、そういう人と共に生きていくとちゃんと自分も愛が持てるようになった。特に息子のベビーシッター&家事代行をしてくれた女性は3人の男の子を育てた保育士&幼稚園教諭の人で本当に愛情に溢れた方でお世話になりました。うちの息子が寝ると家事とかしてくれる手が動く人で、ほんとばあやみたいな人でした。

 

遠回りしましたが、ジャルママは出番は少ないんですが、オスカルの生育に特に女性としての生育に確実に関わっていますね。

オスカルが衛兵隊の連中に兵舎監禁された後、処分はせんと言って早足で歩いて行った後、窓辺で一粒涙をこぼして「母上」と言うんだものね。

影の薄い母上だけど、オスカルの思春期の初潮あたりには確実に父親の教育から引き離してちゃんと女性教育をしたよね。

そして、今ですが、母上の膝に突っ伏して、

「父上の人形ではない、男でもなく女でもなく」と泣いている。

 

おお、オスカルの女性性、相当育っています。今までだったら男として育ってきたと言っていた。「女でもなく」がつらくなってきたのですね。

でもって、結婚して後継を産めという父親の暴力的な所業を責めまくる。

ほんとは、こんな目になんであうんだ、自分だけじゃなくアンドレも追い詰めてるんじゃないかと言いたいところですけどね。

でも、まだここでは2番目の鎖の性自認が強いです。

ジャルママは娘の安全を思う親心を語る。いやー、オスカルさま、いい子だから大人しく聞いてるけど、普通、こんな矛盾されたことされたら子どもはここで暴れまくりますよ。

 

ジャルママのすごいところは、

「おとうさまは後悔しておいでです。」

のセリフですね。将軍として君臨し、後悔も弱みなども部下にも嫡子にも決して見せないパパですが、妻には娘を男として育て今になって結婚を言い出したことを悔やんでいると言っている。妻としてちゃんと夫と対峙しているということ?影薄いけどちゃんと母親と妻をやっているのね。

まあ、パパは妻に話しているんだったら、ちゃんと後悔していることを娘に話すべきだと思うけどね。

オスカルさまは「知らなかった」と言っています。

彼女はこの辺で自分の置かれた境遇を悟り、これから自分にふさわしい男性性と女性性を選び取っていくのです。

 

ママに出演して欲しかったなと思うのは出動前夜のテーブルです。

晩餐ですからママも絶対パパの脇にいるはずですが、ヒトカケラも映ってないの。

パパがアンドレにテーブルに着くように言った時、どんな顔してたのか、

オスカルが「アンドレ、後でわたしの部屋へ」って言った時のママの表情をぜひ見たーい。

ほんと、ママがなんでこのテーブルシーンに入っていないんでしょう。

 

回り道しました。

次回はいよいよ馬車襲撃です。