さてアンドレの重要犯罪その2こと毒ワイン殺人未遂事件です。

 

まず、毒。

毒はねえ、多分亜ヒ酸だと思うんですよねえ。この時代、殺鼠剤として使われ、どこでも手に入る。相続の毒と言われ、夫人が(年とった?とっているかはわからないけど)夫を病気に見せかけて殺すのに使われていたそうです。

無味無臭。証拠が残らない。

古くはイタリアのボルジア家の毒薬「カンタレラ」。これは亜ヒ酸に豚の内臓を混ぜて薬剤にしたものらしい。

 

アンドレはこれを使ったと思います。

綺麗な小ぶりのデザートワイングラスに赤ワイン。二つ用意します。

でもって毒だけど、大事なのは量!読んだところによればこの毒は数分にして命を奪うこともできるし、少しずつ盛って身体を弱らせ病死のように見せかけることもできるとか。

アンドレさー、サラサラと一つの薬包?から2つのグラスに注いでいるようですが。

割と大雑把に見える。ちゃんと計量した?2つのグラスに均等に入れてる?

博識と思われるアンドレだけど薬学には詳しくないと思うんだよね。致死量の計算できてるの?

いやー、間違ってオスカルだけ死んじゃって、自分だけ生き残ったら、草むしりどころで済まないですよ。胸掻きむしって死んじゃう。

ってまあ、未遂に終わったから良かったんですけどね。

 

それでまあ。アンドレの独白ですけど、

実に勝手ですね。

「このままともに死んでくれるか?おれを許してくれるか?」

って、それさぁ、直接オスカルに言いなさいよ。

聞いてみて、一緒に死んでくれるというなら心中。

いやって言われたら一人で杯を仰げって。

アンドレの思考は明らかにおかしい。

同意を取らないんだもの。ブラびりのときもそうだったけどね。

アンドレはオスカルと距離0なんだよね。一応身分差が距離を作っていたんだけどさ。

ここへ至って、オスカルが奪われそうになって殺人を。

 

この心理を色々考えてみたんですけど、アンドレってオスカルのその純潔以外は手に入れているんだよね。

彼らは思春期や青年期に引き離されていないので、幼な婚のまんまなんですよね。精神的には。

だから、アンドレ的に記述してみると次のよう。

 

 

永遠の夏の庭で彼らは幼い王と后だったのです。

そうやって彼らにしか知り得ない心の王国で、とても長い間、二人はかたときもはなれず幸せに暮らしてきたのでした。

しかし、今、大国たちが力に任せて彼らの小さな王国を無惨に踏みちぎらんとし、彼の妻を奪っていこうとしているのです。

彼は決心しました。自分の美しい妻を誰にも奪われるわけにはいかないのです。

妻を殺し、自らもまた死ぬと。

 

そう、もうアンドレからみると彼らは一体化している(夫と妻)なので、同意をとる必要などないのですね。

それでこんな恐ろしい論理が出てくる。

「苦しませはしない。最後の最後までしっかりとだきしめていてやろう。命つきるその瞬間まで。かぎりない愛のうちに死ねるのだときっと確信させてやろう!だから許してくれ。」

って、許してくれってさー「許さないっ」って言われたらどうすんのよ。やっぱすごい勝手だわ。オスカルは自分のものと確信しているからこういうこと言えるのね。

でもって、神に祈りを捧げたかを聞いて、よかったと言って、彼女が毒の杯を飲むのを静かに怪しい目で待つのです。

 

ところが、なかなか彼女は飲まない。でもって「死期が近づくと」なんて言います。

ぎくっとするアンドレ。

こっからまた回想シーン。

でもまた改造されているよねえ。まず、士官学校は嬉しかったかもしれなかったけど、アントワネットさまづきは最初は結構シニカル。王太子妃のサロンにも入らないし、デュバリー夫人との戦いの時は、オスカルは「オスカルはどっちにもつかん、この面白い女の一騎打ちを観戦させて頂くさ」って言っているよ。だから最初っからそんな真面目な騎士ぶりじゃなかったのよん。アントワネットさまがデュバリー夫人に敗北してその誇り高さをオスカルに見せつけてからだよね。「命にかえても未来のフランス女王をお守りするのだ」ととなったのは。漫画の絵もここ。(結局、物語はその方向に行かなかったのだが)

 

回想シーンはアンドレのものに移ったのでしょうか。アントワネット落馬事件の最初。

アンドレが頬を染めてアントワネットさまに説明するシーン。ほぼ1巻の絵と同じ。ドレスも同じ。またまたどうでもいい話ですが、アンドレが頬を染める初々しいシーンはここだけだ。彼はオスカルに対しては常に大胆で、赤面もなく臆すこともなく堂々と告白、行為に及んでいる。アンドレ慣れてる!彼はオスカルの言動に驚くことはしょっちゅうなんだけどね。

 

そして回想シーンはオスカルが王太子妃を落馬しながら救うシーン。これはほぼそのまま。オスカルが剣を立てて国王陛下に申し立てるシーンもほぼそのまま。

その次なんですけどね、昔のシーンではオスカルはフェルゼンの方にグラっと倒れかかっているんですが、回想では反対に倒れているんだよね。これはアンドレの回想で、改ざんされている?それとも彼は気を失った彼女を運んだろうから、そういう感じの場面もあった?次の気を失っているオスカルは元のシーンにはないからこれはもうアンドレの回想なのでしょう。そして「おれはいつかおまえのために命を捨てよう。」

と決心した過去を思い出す。

 

「はっ」

よかったですね。マイナス150点スタートだった昔を思い出せて。うまいことブラびりで0クリアして衛兵隊では兵営監禁から救い出したり、細かいいろんなところで稼いで、今は30点くらいあるのかしら。そこへ98点のジェロが登場して、完全に血迷っている状態ですが、彼はようやく過去の決意を思い出します。

「飲むなー」

まさかの床への押し倒し。アンドレ2度目のオスカルを襲うシーン。

うわっとは言っているけど、悲鳴が上がらないオスカルも実はとても変。

 

そうなんですよねえ。実はおかしいのはアンドレだけでなくオスカルもなんですよね。

アンドレのこと、微塵も疑ってないのね。G線切りシーンの時にも書いたかもしれないけど、アンドレは幼い頃からオスカルの庇護者です。彼女は彼女の王国で彼に守られて生きてきた。

 

そしてグラスワインが彼女の頭のはるか上で割れ、彼は彼女の上に。

「よかった。」彼の涙が彼女の頬に落ちて涙の玉が割れる。

美しい涙のシーンですよーー。彼の憑き物がここで落ちたんですよ。

 

シーンのクライマックスですが、一旦ここで切ります。