さてさてフェルゼンに恋したオスカルさまなんですが、これはもうどこかで恋を諦めor失恋をしないとならないですよね。普通のフィクションならいいんだけど、アントワネットさまとフェルゼンは歴史上の人物で、鉄板の恋人同士なんですからね。

で、オスカルさまはどこかでは失恋が予想されるわけですが、じゃあその後、誰がそれを受け止めるかです。

 

星空キスの頃にはアンドレは恋人役候補として浮上した感じはあるけど。何せ彼はマイナス150からのスタートですからね。星空キスの時には、えっ従僕なのにやるなーっという感じだけど、オスカルは気を失っている(?)し、ここでは何とも。もちろん、この時キスしといたのは、ずっと後の結婚話の時になってとても有効で、潜在意識に一手打つことになるんですが。

 

その後のサベルヌの時には、もうアンドレ頑張れ底上げ委員会が立ち上がっていたと思います。

こっからアンドレをオスカルの恋人にすべく色々行われる。サベルヌではオスカルの命を救うし、髪切って偽黒い騎士になってルックスも現代風(連載当時)にアップ。目を怪我しているにも関わらず、包帯を解いて、オスカルを救いに。ここの包帯をぱらりと解いて走り出すところなんて、もうすごいカッコいいですよね。ヒーローですよ!

普通の少女漫画ならねー、もうここでじゅうーーぶん、ヒロインの恋人だと思う。

 

でもね、でも、オスカルさまは動かないの。アンドレの愛はじゅーぶんわかっているし、アンドレには感謝しているし信頼しているし強い絆に結ばれていることはわかっているんだけど、この二人、恋人方向に動かないの。

 

それは、やっぱり、最初に述べた

身分違い、性自認、幼馴染 の3連の鎖がガッチリはまっているからなのですよ。3本のイバラの枝にがんじがらめのオスカルさまでしょうか。(アニメのオープニング)

もうここまでアンドレを底上げしてやってもダメか。という感じ。

 

そして、あの運命のブラびりがやってきます。

2度目の失恋、せっかく諦めたのに、念入りにフェルゼンに心をズタズタにされた。フェルゼンが人気がないのはこのとても誠実な残酷さでオスカルをふったせいもあると思うのね。髪の毛あげちゃって、わざわざドレスを着たオスカルの女心を暴き、あるいは18歳の時に女の姿だったらとか、2人の運命は違っていたかも、なんて、なんちゅうことを言うのだ。オスカルさま、フェルゼンを一言も好きだと言っていないのに失恋ですよ。しかも、せっかく勇気出してドレス着た女心を2度目の粉砕だけでなくて、それまで男として生きてきた人生も全否定。ここまでズタボロにされる少女漫画のヒロインってあるんでしょうか。

でもって黒い騎士とちょっと喋って、父上から守って、疲れたから一人で暗い部屋に引きこもっているのね。

そこへアンドレ登場。

二人で幼い頃の出会いを話す。これはすごく重要だと思います。自分の人生を反芻。

これがあることで、アンドレはオスカルの人生に踏み込み完全修復。強引な愛の告白とブラウスをビリビリ。

もう、「おまえを女にするのはおれだ。」という男側からの恐るべき荒々しい越境ですよ。

でも、恐ろしかったと思うけど、これは確かにオスカルの何かの「女」を確実に覚醒させたと思いますね。彼女の性自認を動かしたと思う。繰り返しますが、これはオスカルさまに対するアンドレだから有効だったのであって、普通の男が普通の女にやったら間違いなく彼女の前から追放されますので(アニメはそう)やめましょうね。

 

とにかくもアンドレはここで幼馴染を脱し、オスカルの性自認をある程度壊すことに成功します。残るは身分差のみ。

ここでアンドレはようやく0クリアですよ。マイナス150からのスタートですからね。0にできただけでも奇跡的。

「もう2度とこんなことはしない。」という大きな犠牲を払っていますけどね。

3本の鎖のうち、2本をなんとか部分的にぶち壊すことに成功。これでようやく身分差だけの普通の恋人への道が開けた。

 

で、舞台は衛兵隊へ。

でも、ちょっと待って。同じように過去の小さい頃を話し、うまいこと人生の0クリアを行った、ずるい男がいるんですよ。

そうベルナール。ロザリーをちゃっかり持っていき、ついでに黒い騎士という窃盗罪と傷害罪(アンドレの目)をクリアして美味しいとこだけ持っていった。罪を贖うことなく。

ロザリー、いいの?その男で。まあ、ロザリーは姉ジャンヌを売ってますからね。手紙を渡してね。意外に罪悪感とかのハードルが低い。

 

ともあれ舞台は衛兵隊に移り、ここからアンドレは再スタート。

夜勤でフェルゼンに会い、相引きを知って逃がし、アランら衛兵に囚われて兵舎に監禁。

オスカルの女性性が侵される。飛び込んできたアンドレが発泡。

ここね、処分はせんと言い放ったオスカルが足早に去って行った先。「母上」と言って泣いてますが、ここねえ。

実に惜しい。ブラびりがなければ、「アンドレ」と言ってその胸で泣けるのにねえええぇ。

そうなんですよね。ここから3本の鎖のあっちを外したと思ったら、今度はこっちが。とか。

二人の愛はなかなかに困難。

無理やり2本の鎖を外したもんだからその代償は大きかった。

これからも、ずっとこの3本の鎖は絡み合い、こっちを外したらこっちが、みたいな状態が続きます。

 

もうどうしたらいいんだ、この2人、

というところで、作者先生は「結婚話」をぶち込みます。

 

今日はここまで。