「はばかりながらこの俺だって。」

というアンドレのセリフが不意に通勤途中に浮かんで、あれ〜どこだったっけ?この図々しいセリフと頭の中のベルばらをスキャンするも見つからず。確か、元娼婦のデュ・バリー夫人が宮中に上がったのを受けてのセリフだったはず。なんで見つからないんだろっと。あ、もしかして外伝か!?っと思って調べたらやっぱり宝石泥棒一族の話の外伝でした。いや、外伝、私は話は結構面白いし、いいと思います。背景は本伝以上に細かく丁寧に描いてあるしね。問題はキャラクターの、特にオスカルとアンドレの絵ですよね。というか、本伝後半のキャラの絵が超弩級に良すぎなのよね。オスカルはむっちゃ色っぽいし、アンドレは、もの凄うセクシーだしね。

ああ、AIに本伝の後半の絵を全部ぶち込んで、一番近いものをうまく組み合わせて外伝に出力してくれるソフトがあればいいのに。そうすれば外伝は結構楽しんで読める内容ですよ。

あ、エピソード編はいいわ。話が面白いと思えないので別に2度読みしなくとも。うーん残念ながら。

 

もって回りましたが、アンドレってその存在意義というかアイデンティティが

 

1.男であること

2.オスカルが好きで愛していること

 

しかないんですよね。

 

もちろん、とても図々しい性格とか(女主人を呼びつけ、それも旦那様や奥様の前で、さらに宮殿で王の前で)(あまつさえ、ばかとんまどじと女主人に言う)、思い込んだらいきなりとか(ブラびりと毒ワインの時、踏みとどまったけどね)、オスカルさまは、優しい?とか温かい?とかおとなしい(嘘だろ)とか、いうんですけど、まあどれも後付けっぽい。

 

でも、それで良いです。オスカルさまという稀有なキャラクターの受け止め役として、成功したことが、まず彼のアイデンティティです。

 

で、今日は暑いところ、さらに熱い、7月12日の考察をしてみたいんですけど、

まずは、タイタンとサテュロスね。

ギリシャ神話ね。

アンドレはギリシャ神話大好き。(オスカルもジェローデルもだけど)

アンドレはまず、ペガサス。オスカルのドレス姿を例えるところでアフロディーテさながら、あと、毒ワイン後にオリンポス、なにもないプロポーズでタイタンとサテュロス。二人のシーンでカストルとポルックス。

オスカルさまは、かの有名な軍神マルスの子ですかね。ジェロにはオリンポスの神々と共に立たせたいのセリフがあります。

圧倒的に、アンドレのセリフの引用が多いです。

 

難解度の高さではなんといってもタイタンとサテュロスね。

作者先生は、色々とギリシャ神話を引用なさっているけど、マルスとアフロディーテは不倫の相手同士だったりするから、一人の人物(オスカル)に喩えるにはあんまり良くないのかも。というか、あまりそこまで深く喩えてギリシャ神話を引用していらっしゃらないかなとも思います。だからそんな無理に考えていかなくともとも思います。

 

でもあえてやってみましょう。

深読みしまくってみましょう。タイタンとサテュロスです。

タイタンはフランス語ではティーターンですね。ギリシャ神話の天空の神ゼウスの一つ前の世代の神々を表しています。複数形でティーターン族です。ティーターン族とはウラノスとガイアの子どもたち12人の神々たちです。ガイアはウラノスを一人で産み、息子と近親婚をしているというギリシャ神話の古い形態の神。

でもって、ティーターン族兄妹の末弟、クロノスは父ウラノスの男根を切り取って、海に投げ、その海の泡から美の女神アフロディーテが生まれるというエグさです。それでクロノスはティーターン族兄妹の長に立つんですが、悪いことはできないもので、こんどは子どもに地位を奪われると言う予言に遭ってしまうんですね。クロノスは生まれた子どもを片っ端から丸呑みしてしまいます。ゴヤに怖い絵があるよ。我が子を食らうサトゥルヌス(クロノス)ね。

最後に子どもを飲まれる時、母レアーが石を産着に包んで差し出したので、ゼウスは飲まれるのを逃れ、父を倒すのに成功するのですね。その間10年かかったというティーターノマキアー大戦争。ティーターン族は倒されてタルタロスという地獄へ幽閉される。

 

で、ティーターンのタイタンの力なんですけれども、一番力が強いとされているのはヘカトンケイルというガイアの息子たちなんですが、これってとても醜い化け物とされています。五十頭百手の巨人。造形で表すのは難しすぎです。絵画もほとんどないです。50頭一つの体に描けんし、100本の手も無理。

でもタイタンの力ってこれを言っているんではないと思います。五十頭百手の力がないってそれは無理すぎ。

 

そうすると多分、タイタンの力はティーターン族兄妹の首長、クロノスの力ですね。そう、父のウラノスの男根を切り落としたというヤツ。とっても性的です。

そういう力が無いと。

 

サテュロスですが、こっちは具象的には割とわかりやすいです。半人半獣、酒の神ディオニソスの眷属、大体下半身が山羊で描かれることが多く、常に欲情している。陽気で知性はない。私のイメージではサテュロスってセクハラオヤジって感じ。

サテュロスの蹄が象徴しているものはよくわからないんだけど、単純に蹄=下半身でいいのなら、まさしく欲情。

 

つまりどっちも男性のリビドーを表していると考えて良いのかもと思います。

 

それでもう一度(もう何度でも!)7月12日夜の最初へ

 

アンドレが「何か用でも?」と言う。(アンドレ、鈍すぎ!いくら誓いを立てているからってさーー、明日、出動なんだよー。恋人たちの熱い時間の御用がないとても思ってんの?なんの期待もせずに本当にこの部屋に来たの?)

でもって、オスカルさまの、今宵一晩をお前と、お前と一緒に、アンドレ・グランディエの妻に と言っています。(一気に言っちゃった。)

アンドレ、驚愕の顔。アンドレってさー、自分はオスカルのことを全部わかっているとか言っているけど、ぜんぜんわかってないよね。いっつも驚いているよ。アンドレの驚き顔コレクションとか作ったら結構な数行くと思うな。(これもAIがやってくれないかな。)

で、アンドレは、こっから捨て身の「おれには何もないプロポーズへ」

だけどさー、いきなり

「すべてをくれると、おれのものになってくれるというのか、こんなおれの。」

ですよ、えっと、オスカルさまのセリフと微妙にズレていると思うんだよね。

だって、ここでいきなり男のリビドー放出発言です。

オスカルさまはさー、妻にって言っているんだよね。これって、本来は、それに対応する言葉がくると思わない?

愛の誓いの宣言が先だよ、本来は。「夫としてお前を妻として娶らせてください。」が本来だと思う。

なのに、アンドレったら、いきなり、おれのものになってくれるのか発言ですよ。欲望全開めっちゃくちゃ先走ってますね。

その後、何もないプロポーズ。

地位も身分も財産もない。まあここまではいいでしょう。実際持ってないしね。

次のタイタンの力とサテュロスの蹄もない。これは男性のリビドーとしたら、アンドレ、豊富に持ってんじゃないの?

その後の男としてお前を守ってやれるだけの武力もない。なんですが、アンドレはサヴェルヌの時も黒い騎士でパレロワイヤルから救い出した時も、パパから成敗されそうになった時も、しっかり守ってあげてるではないですか?オスカルだって絶対それはわかっているでしょう。

それなのにアンドレは、あえて?自分には何もないプロポーズをしているんですよね。でもって、とても真剣な熱意に溢れた眼で(見えないけど多分心の眼でがっちり見てる。)オスカルを見上げているんですよ。

この人ずるいよね。だってこれってさ、絶対断られないと知っていなければ、こんな何もないプロポーズってできないもの。

それでねー、オスカルさまの返答も、これがまた、なんかこうちょっとズレているんですよー。

男らしさについてのお話。心やさしくあたたかい男性こそが真に男らしいたよるにたる男性なのだと気づくとき たいていの女はもうすでに年老いてしまっている よかった…気づくのがおそすぎなくて

うーん、「何もなくてもいいのか?」と聞かれているんですから、「何もなくてもいい。」と答えるのが順当なんだと思うんですが。それでさー、心やさしくあたたかい男性が自分は好きなんだ、と言えばいいのに。謎のたいていの女は年老いている発言。

誰が言ったの?それ。そんなこと言うのオスカルさまだけですから!!

アンドレは心やさしくあたたかい男性なのか?まあ、オスカルに対してはそうでしょうね、一応。鉄砲ぶっ放し、ブラびりして毒ワイン心中を起こす男だけどね。

 

ここまで聞いたアンドレは何もいわずに立ちあがります。「OK!D'accord! 了解!」です。オスカルの背中にくっついて、さあ感無量!状態。

しかし、恐るべし乙女のオスカル。ここで「こわい」が出てしまいます。

ここからは、アンドレの本領発揮ですよ。リビドー全面放出、男のフェロモン全開。

やっぱりさあ、タイタンの力もサテュロスの蹄も彼は存分に持ち合わせていると思いますね。

 

これは彼一流のレトリックなんでしょう。

パパによる成敗の時、結構!でもその前に旦那様あなたを刺しオスカルを連れて逃げます と言った時にもよく現れています。

この時もその通りの意味のことを実行しようとしたわけじゃないものね。

 

ともあれ、オスカルとアンドレの二人は、究極の愛し合っている夫妻だとはもちろん思うのですが、男と女だし、違う一人の人間だし、ズレることも当然あると思うのですよ。

この2人、目のことと血を吐いたことを打ち明けあってないしね。