ベルばらで一番の旅人といえば、フェルゼンですよね。あの時代にストックホルムからパリまで何日かけて馬車で来たんだか。馬って1日に20キロくらいしか走れないらしいし、宿駅で替えウマしても3週間くらい?もっと?かかるのでは? ブレストから出航して新大陸まで1ヶ月から2ヶ月(このスパンの長さもすごい)も大変です。食糧とかどれだけ見込んで積めばいいのか?
まあ、フェルゼンから見たら、今私がやっている日本ー南仏の旅なんて日帰り旅行のようなものですよ。

でもって社交的で旅が長いフェルゼンはいろんな話をカスタマイズしてオスカルに聴かせてくれたに違いない。彼は人に合わせて話をする人だから、男として育っているオスカルの興味を引くような他国の軍隊の話や武器や馬の話とかしてくれたんでしょう。王妃さまや他の女性たちには、ちゃんとドレスやファッションの芸術的話を選んだと思う。

今回、飛行機の中で「リリーのすべて」という映画を見たのです。トランスジェンダーの夫とその妻、共にデンマークの画家で実話をもとにした話なのですが、すごく良かった。
オスカルさまは後天的なトランスジェンダーなので、この映画とは全然違うのですが、性自認というのは本当に命がけの問題で、自分の性を自覚して誰かを愛するということはすごいことなのだなと感じました。

何を言いたいかというとフェルゼンはオスカルを男として扱い、親友としている。オスカルはフェルゼンを男性の理想モデルとして尊敬するし、友情も深めているのだけど、自分が女で女として愛されないことに非常に飢えているんですね。
そう考えるとフェルゼンの振り方は相当ひどい。初めて会った時にお前を女として見ていればあるいは みたいなことを言う。これってお前が男として育てられてなかったら という意味ですよね。オスカルの人生全否定。
これは暗闇の中、一人で過ごすしかないですよ。
そこで、アンドレくん登場するんですが。

改めてこのシーンがオスカルの性自認、生きるか死ぬかのギリギリだったのだと思います。
オスカルはアンドレが自分を襲って、自分の男の部分を殺してくれて女の部分を蘇生させてくれるのを本能的なレベルで待っていたのかもしれない。
そう考えると、原作ではブラビリの後もアンドレを自分から遠ざけなかったことがわかるなと思いました。

あ、「リリーのすべて」とてもいいです。良かったら見てください。男性がトランスジェンダーで女として目覚めていくのでベルばらとは違いますが、性自認の重要性を改めて考えさせられました。