続きです。

 

まずはギリシャ神話のヘレネーについて書きます。

ヘレネーってものすごい美人でギリシャ地中海世界のみんなに望まれちゃって、大変。それもそのはず、ゼウスとレダの娘で双子の妹にクリュタイムネストラ(これは幸せでない不幸な女)、もう一個の卵にかのカストルとポルックスがいるという生まれなんですよ。

最初からテーセウスにさらわれて兄たちに奪い返される。

義父は例のたくさんの求婚者に困った挙句、盟約をしてスパルタ王スパルタ王メネラーオスと結婚させるのです。

でもってパリスによってさらわれちゃう。黄金のリンゴで。3美神の謎かけで美を選んで。

 

まあ、ヘレネーの系譜はたくさん書かれていると思うので、ここで、ロザリーに登場いただきたいと思います。

彼女はさらわれ女ですよねえ。

シャルロットもそうだけど。オスカルさまの好きなタイプは大体この系譜が強いです。

性格がバレてなければポリニャック伯爵夫人(マルちゃん)も多分好きだろし、ディアンヌも。結婚ぶち壊しパーティーのジュヌビエーブもフローラも。

実は女は奪われさらわれてというのが好きなのでは(いや好きな人も多いのですね、そうでない人もいるけど)相手は強く美しく優しければもう十分条件。

 

ロザリーなんてほんと気を失って美しく黒い騎士にさらわれていくものねえええぇ。

 

王家の紋章という漫画があり、この漫画は常にさらわれて救い返すのを繰り返しているのですが、私の亡母はこれが大好きだった。飽きないらしい。ハーレクインロマンス、ヒストリカルシリーズも大好きだったです。

自分の人生も一回しかさらわれてませんが、祖父の決めた許嫁から父にさらってもらって結婚してますんで良かったと思います。

でねーー。もう父もいないから内緒でもないですが、父に不満のある時はこの手のさらわれ小説を読んでいるのを知っていました。逃避なのか?積極的浮気じゃないけど、不満が大きくなるとうまいこと逃げちゃうというか逃げたことも分からせないたくみな女がヘレネーです。さらわれ女は決して一途じゃないんなんだけど決してそうは見えない女性なのでしょう。渡り歩いているのではなく、罪なく奪われていく弱い(わけはない)女です。

 

オスカルさまはこの典型的少女漫画に、楔(くさび)を打ち込んでいる。

この人、さらわれ女じゃないんですよね。男と対峙している。戦う女なのです。

最初のフェルゼンの時なんて、対峙して、ああ、もうここまでして失恋する必要があるのかーー!!というくらいだし。

アンドレともね、ブラびり後、流されないで向き合う。結構、アンドレも強い男なんで、星空キスの後とか、このままさらっちゃえばみたいなのとか、ブラびりとか、色々、色々、あるんだけど、結局、対峙していくことを選ぶんですね。流されない。2本の足で立つ。

 

戦場では愛する男が死んだ後どうするかが重要ですが、

オスカルさまは次の日死んじゃうけどね。

クリュタイムネストラは最初の相思相愛の男タンタロスが死んだ後は復讐に生きていく。(再婚もするけどね)

 

私はさらわれ人生は生きれなかったなーーー。なんかここにはモラルハザードがあります。自我がそれを許してくれないみたいな。ナポレオンのポーランド妻なんかも弱く年老いた夫を庇いつつ、強く勇猛な雄にさらわれていくのだろうな。そういうのも一つの叙事詩なんでしょう。でも、私は負けてない負けられない男の弱さが好きだからね、剣持って最後まで戦うな、きっと。男の強さは最後の1人の勝者になってもやがては滅ぶ宿命にあるからね。

 

さらわれ女はどこまでさらわれていくのでしょうね。戻されても殺されることなく平穏に生きていたりするし、女の一つの理想型ではあるのでしょう。