[私が見たイム・シワン] 悪役の解放感に酔って

「目が狂っている」という表現が一番記憶に残って

 

 

 

 

誠実な眼差しの俳優イム・シワンは、温かいルックス、正義の味方、良い役専門の俳優としてよく知られている。その彼が正反対の目つきで観客を追い詰めると刺激的だ。軍除隊後、初の公開映画 <非常宣言> で初めて悪役を担ったイム・シワンは、出番は多くないにもかかわらず映画全体を貫く大きなインパクトを残した。

イム・シワンは登場する時間が多くないが、ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、キム・ソジン、パク・ヘジュンなど映画祭クラスのトップスターの中でも強烈な存在感を示した。名品演技のコース料理の後、食欲をそそるデザートだと思ったら、メインディッシュと呼んでもいいほど見事な味まで出した。

 

去る8日、取材陣と会ったイム・シワンは嬉しさを隠しきれない表情で、小さな顔をビデオカメラに向けた。以前から悪役演技を望み、好評を得ているからだ。イム・シワンは、演じたジンソクが一般人には理解できない絶対悪なので自由に表現できると感じたという。また、演技者として悪役があたえる解放感に酔い、楽しんで知恵を絞った瞬間を想い起していた。
 

 

 

 

<非常宣言> がついに公開された。今の感想は?
転役して3年が過ぎたが、これまで休まずに演じて映画だけでも3本撮った。その中で <非常宣言> が除隊後に初めて公開された作品になった。ずいぶん待った。軍服務期間までいれると5年ぶりに映画で観客の前に立つので感慨もひとしおだ。

 

 

誰もが知っているイム・シワンという俳優が何と悪役を引き受けた。演技の評判はかなり良いが。記憶に残る反応はあるか。また、悪役演技でどこに重点を置いたか気になる。

ファンの方々の反応で「目が狂っている」と表現が最も記憶に残る。悪役を引き受けた立場にしてみれば、その言葉が大きな称賛に思えて感慨深かった。

台本を初めて見て思ったのは、僕が引き受けたジンソクは絶対悪だということだ。演技で表現するにあたって「何か違った一面を見せられる」と考えた。演技者の立場で言うと悪役が与える解放感というものがある。良い役を引き受けると当然期待する部分があり、そのラインを守っていれば作品やキャラクターが良くなる。

程度の違いはあるだろうが、良い役は守るべき部分を守ってこそ美しいと思う。ところが悪役は、良い役と比べると表現の仕方が広いように思う。それで台本を初めて受け取った時、演技面では上手く表現できると期待した。

演技で好きなタイプの悪役がある。<アベンジャーズ> のサノス、<キングスマン> のヴァレンタインのような人物だ。悪役なのに信念が明確だからだ。悪役をする上で明確なストーリーを持っているべきだと思った。そう考えてキャラクターを研究した。

 

 

 

 

自分で考えてみたジンソクのストーリー。くわしく聞きたい。
ジンソクの背景は歪んだ価値観からきていると思う。ところが自分は納得できても他の人にはくだらない話にすぎない。悪役の価値観とは、それらしい因果関係があって当然なのに、それ自体が矛盾する形だ。自分でも納得できないキャラクターだった。それでストーリーを作ってみようと思った。

小さい頃にエリートの両親によって留学に行ったが、体格も小さくて英語もできず、いつも気後れしていたと思う。どこの集団にも苛めてからかう人はいるではないか。そんなことが積み重なり、信じているお母さんにも言えなかったようだ。それで自分で自分を慰めて持ちこたえていたが、人への憎しみが積もり積もって、自分以外の存在は要らないと確信したのではないだろうか。要らない存在を自分で浄化する人にならなくてはと考えたのではないかと思う。
 

 

予告編にも出たが、イム・シワンの不気味な目つきが話題だ。イ・ビョンホンの娘役スミンをみつめるシーンはどのように作ったのか。また、大先輩と共演した感想も気になる。
映画を見て自分でも驚いた。その部分はリハーサル時のものだったと試写会の時に監督から知らされた。監督は演技に対する目が確かな方だと思えた。
 

キャスティングのオファーがあった時、この先輩方と一緒にできるという事が初めは信じられなかった。ところが何日もしないうちに監督とミーティングの席が決まった時、「僕にこの作品ができると?」と疑問さえ湧いた。やると決まったニュースを聞いても信じられなかった。初めての撮影が終った時にやっと「本当にやるんだ」と思った。僕には大きなプレゼントのような作品で、とても夢のような作品だった。

 


こうやって顔を見ていると <未生> のチャン・グレを思い出す。俳優イム・シワンを知られるようになり愛された <未生> から8年が経つ。共に <未生> でケミを披露したピョン・ヨハン俳優の夏公開の映画 <閑山> 脇坂安治役も悪役で好評だ。
<閑山> はまだ見ていない。まだドラマの撮影中で <非常宣言> のプロモーションが続いているからだ。でも <閑山> はどうしても見たい。<宇宙+人1部> も <ハント> も。時間をみつけて絶対見る。もし見れたらピョン・ヨハンに連絡しようと思っている。久しぶりに連絡できそうだ (笑)。

 

 

 

 

最近は髪形でも注目されている。髪を伸ばすきっかけはあったのか。どう維持しているのか。
夏はとても暑く、乾かすのに時間がかかる。シャワーをしてもスッキリしないというか。長髪は今撮影中のドラマのためだ。久しぶりに長髪になったが、やった事のない新しい姿のスタイリングでとても良い。ヘアースタイリングチームがきちんとケアして下さる。

 


最後に <非常宣言> をどんな方々に薦めたいか。
久しぶりに映画を感じてみたい方々にお薦めしたかった。映画館で感じられる感性と文化があると思う。映画館 (で映画を見るの) が心配でなかなか行けず、家でTVや動画OTTを見て気を紛らわせていた方にこの映画をお薦めしたい。やっと飛行機に乗る機会もできるようになったから。これから飛行機に乗る計画がある方や、飛行機によく乗る方が見たら恐怖感や共感がいくらかあるのではないだろうか。アイマックスの他に4DXもあって色々な技術が融合した上映館が増えてきた。映画を見る事が趣味になると思う。お休みの日には映画で楽しんでくれたら良いだろう。

 

THE FACT イ・ハンリム記者

 

220810

 

 

 

何社か集めてのインタビューなので、内容が同じでも記者さんによって編集に違いがあり興味深いです。