イ・ジョンソク書斎

 

<ロマンス別冊付録> の編集長イ・ジョンソク埋もれて過ごす一日。

ドラマキングのイ・ジョンソクが、<ロマンス別冊付録> で帰ってきた。ラブコメ職人 <ロマンス必要> のスタッフに、9年ぶりにTV復帰したイ・ナヨンすでにラブコメパワーは最高レベルに達したが、撮影中のイ・ジョンソクは何度も「わからない」と口にした。演技はますます「難しくて」「これでいいのかなとも俳優イ・ジョンソクが30歳にして抱えた悩み、人間イ・ジョンソクが顔赤らめながらも伝えようとした真心

 

 

この冬の寒さは厳しいが、<ロマンスは別冊付録> では野外ロケが多かったそうだが。体調はどうか。
良かったり悪かったりだ。幸い、死にはしない程度だ (笑)。一緒に撮影する先輩の1人がA型インフルエンザに罹り、非常事態になったが僕は罹らなかった。


<ロマンスは別冊付録> では初めてのラブコメジャンルに挑戦する。今までラブコメをしなかった理由が気になる。
あえてしなかったわけではなかった。作品を選ぶ時は、どことなくドラマチックな過去のある人物に惹かれて……。あ、よくわからないです (笑)。


そういえば <死の賛美> のキム・ウジンも、<あなたが眠っている間に> のチョン・ジェチャンも、<ピノキオ> のチェ・ダルボも、<君の声が聞こえる> のパク・スハもどこか悲しいキャラクターだった。
育ってきた環境が「悲しみ」の感情に包まれたキャラクターだった。そんな人物を演じるのが好きだ。


では、今回はなぜラブコメなのか? 作品の雰囲気も爽やかで、チャ・ウノは悲しいキャラクターではないだろう。
ファンが見たがったよ。プレゼントをあげたかったというか。1年半ほど何もしていない時期があって、あえてラブコメジャンルを探した。チョン・ヒョンジョン作家はラブコメ職人でしょう。それに台本も良かったので、しない理由はないと思って。


実際に撮影に入ってみてどうだったか。
初めはそんなに違いはないと思っていた。ジャンルの違いが大きな影響を与えるかと思ったが、本当に難しい。出来事によって感情が起こるのではなく、人と人との感情の成り行きで出来事が生まれる。セリフのニュアンスを表現するのも難しい。2か月以上も撮影しているのにそう思う。


恥ずかしいセリフもない。
チョン・ヒョンジョン作家は、かなり淡々とセリフを書かれる。シーンはコミカルでもキャラクターが壊れる事で笑わせたりしない。状況が笑わせるだけだろう。そこが良い。


作家の役ということで、2017年にナ・テジュ詩人の詩集『すべてが君のせい』に携わった経験も活かされそうだが。
出版社の話なので、あの時の事が思い出されたよ。台本を見るとチョン・ヒョンジョン作家が創作者としての哀歓と苦労を込めた部分もあるようで。僕は演技を通してそこを垣間見る感じというか。物を創りあげる人は本当にすごいと思う。


他人事のように話すが自分も創っているではないか、表現する芸術家として。
もちろん芸術家という意識はあるが……。映画 <ブラックスワン> の公開後、ナタリー・ポートマンがバレリーナ役で背中の筋肉を作る為にどれほど努力をしたかを打ち明けたインタビューがあった。俳優仲間とそれを読んで「うわ、俺たちって本当に軽い気持ちで芸術をしてるんだな」と反省した。作家の苦労とはまた別物のようだ。僕たちは創作者が作った物を、どう実現するか悩む人ではないでしょう。


最近も詩を書いているのか?
時々。憂鬱な時。ナ・テジュ詩人と本を出す時に感じたのだが、自分の書いた詩が本になる時、怖くなったよ。本当に色々な思いがあった。ところが、このドラマの中にも、作家が文を書いた後、他の人に見せる怖さについて話す部分があって。その時を思い出したよ。


どんな部分が怖かったのか。
自分の考えと感情が込められた文でしょう。裸にされたように思えて。その時の僕は、その時の感情で文を書いたとしても、何日か経って見てみると不思議な感じがして。そう考えると本当に作家はすごい。


<死の賛美> のキム・ウジンも、日本統治下の作家の役だったでしょう。キム・ウジンが、平穏な時代にチャ・ウノに生まれ変わって、愛する文学を思う存分書いたと想像してもおもしろい。ファンの間では「チャ・ウノのライバルは累積販売千万部越えのウェブトゥン <W>」という笑い話もあったよ。前作とのこのような関連性を考えてみたことはあるのか。
そんなふうに考えたことはない。人物がそうやって繫がっていくと面白いだろう。


おそらく全てのキャラクターにイ・ジョンソク本人がいくらか滲み出ているからだろう。チャ・ウノとの関連性はどうだろう?
今回のドラマは特にシンクロ率が高いと思う。 僕はよく顔が赤くなるほうだから。作家が、その特徴をキャラクターに活かされた。それまでは演技していて顔が赤くなるとやり直したり、キャラクターに集中して沈めようと努めたが、今回の作品ではそこがちょっとラクだったと思う。今回のドラマでは、ほとんど弘益人間 (自分の利益だけではなく他の人にも利益を、という精神) で演技している (笑)。


赤くなるのは恥ずかしいから?
恥ずかしい時だけではなく、気持ちの揺れで赤くなるようだ。キャラクターとイ・ジョンソクを分けて考えれば大丈夫だ。ところが集中が乱れた時に、キャラクターではなくイ・ジョンソクがこのセリフを言うと思うと、急にフッと入ってくる。


相手役イ・ナヨンとの息はどうだろう。デビューの時から大々的に「理想」だと言っていたでしょう。
現場の皆がその事を知っているが、誰もその話に触れないというか (笑)。20年以上のつきあいの姉弟の設定なので最初のうちから親しくなるべきなのに、初めはナヨンお姉さんが言葉をかけるだけで顔が赤くなった。困ってしまった。それでも現場でお姉さんに「ファンです」とは言えない。実は僕も知らない人と話をしている時に、その人が「ファンです」と言えば、姿勢を正すことになる。その人をがっかりさせたくないから。お姉さんが気にするかと思って素振りは出さないようにしているのに……。またこの話がインタビューに出てしまって (笑)。


<君の声が聞こえる>、<W> のような「年上年下」関係を期待する人が多い。
僕も撮りながら <君の声が聞こえる> が思い出されたよ。ボヨン姉さんとナヨン姉さんは同い年だし。でも <君の声が聞こえる> の時、僕の年が24、5だったから今回とは違う。(パク) スハは初々しくて爽やかな感じの子で、今回のキャラクターは大人で理性的な男だから。

 

 

インスタグラムを見ると、<君の声が聞こえる> の俳優陣とは今でも集まっているようだが。<死の賛美> にノーギャラで出演したのも、<あなたが眠っている間に> のパク・スジンPDとの縁だと聞いた。義理堅い。
だって不思議じゃないですか? 今までいろんな人に出会ったのに、特に親しくなったり気の合う人がいるって事が。なかなかない確率だ。それなら縁をできるだけ大事にしようと努力する。何でもしてあげたくて。


ファンや周りの人たちに「幸せになって」と呼びかけているって。「元気でいて」「お金持ちなって」もあって……。
「お金持ちなって」も良いね。(練習して)「お金持ちになって~」。でも僕はファンが本当に幸せならいいです。恋愛だって相手を好きだというシグナルを感じたらだんだん気持ちが膨らんでいくじゃない。ファンは僕を何が何でも愛する人たちだ。それが有難くて僕も何でもしてあげたくて。 だから何度も「幸せになって」と言うことになる。たとえ僕が幸せでなくてもファンの方々が幸せならいい。


2010年 <検事プリンセス> でデビューしてもう10年目だ。今はわかっていても、その時はわからなかった事はあるか。
今は撮影現場のカメラのレンズのサイズまでもわかってしまう。現場でスタッフが100mm、35mmと言うのを耳にすると、フレームサイズを計って「あぁ、これは悲劇だ」と思った。


それがわかると効率的に演技できるだろう。
ところが「モニターに僕の顔がこれくらいに出るかな」とわかった時からフレームから動けなくなってしまう。演技に制約が出るよ。最近は、できるだけその声を聞かないよう努める。はぁ、演技って何なんだろう。すればするほど難しいようだ。


経験年数が多いほど悩みが多くなるというのは、正しい道を進んでいるという証ではないか。
そうだろうか。以前は年数が経ると楽になると思っていたのに。それまでに自分が作った枠組みの中に閉じ込められてしまう感じがする。それ以上をするには枠組みを破らなければならないのに……そこが難しい。


これまでの発言を見ると、20代は俳優で激しく走り、30になると俳優ではなく人間イ・ジョンソクとして悩んでいる感じがしたが。
ナヨンお姉さんは僕より10歳上でしょう。撮影現場でも何度もお姉さんに聞いてみた。「お姉さん、生きる意味って何ですか?」お姉さんは即答しなかったよ。出版社を舞台にしているので現場には本がかなりあって、ある日、お姉さんが何かの本を見てメモを書いてくれた。ヴァージニア・ウルフの文章だったが、(携帯電話のメモ帳を開いて)「人生の意味とは何だろうか。それが全てだった。真に単純ながらも歳月が流れるほど私たちを窮地に追い込む質問だ。この問いを明らかにする偉大な啓示はただの一度もなかった」。お姉さんに感謝したよ。


よく「三十病」というじゃない。かなりひどくなかった?
自分はそんな事を全く気にしない人だと思っていた。ところが30から31になって振り返ってみると、僕は三十病に罹っていたようだよ。記者さんはどうでした?


私もひどかった (笑)。でも宮崎駿のインタビューを見て慰められた。「大人になるとは、つまらなくなるという事だ。大統領になろうが社長になろうが何になろうが、君が子どもの頃に持った夢、希望に比べたらつまらないものになっただろう。私は、つまらない大人になってしまった君にもかつては光る夢があったことを忘れないでほしいと願う一心でアニメを作る」と。それはたぶん私たちがドラマを見るのも似たような理由ではないか。
僕もそうだと思う。演技をする時より自分の演技を見る時のほうが大きな幸せを感じる。ご褒美のような感じ。これまで僕が撮った作品は日記のように一つ一つみな記憶している。そのシーンを撮影した時の雰囲や温度まで。2018年は <死の賛美> の一作品しかできなくて残念だ。


1年前の「HIGH CUT」2018年1月号で仕事をしたでしょう。当時はカフェをオープンしたばかりで「念願の事業を成し遂げた」と言って「次に、どんな目標を持とうかと考え中」と答えたのを覚えているか。
そういえば「HIGH CUT」は僕のターニングポイントの度に共にした雑誌だ。<君の声が聞こえる> が終わった時も一番先に「HIGH CUT」を撮ったし、YGに入る前も、今の会社を構える時も。そして今回もそうだね。


カフェオープンの夢は成し遂げたし、今年の目標は何か。
大俳優になりたいです。ハハハ。 とりあえず今年はドラマがうまくいくのが目標だが……。僕は本当に良い俳優になりたかった。実は何故こんなふうに顔が赤くなるのかずっと悩んでいた。今も。どんな感情からくるのか。よく考えてみると、僕が相手に何か気持ちを伝えて、相手の気持ちを予想する時に顔が赤くなったよ。たぶんだけどね。演技をする時も同じだ。僕を良い俳優と見る人もいるが、全く俳優と認めていない人もいるでしょう。僕の夢は良い俳優になること。良い俳優になりたい。


十分よくやっている。
演技的に完璧にはできないが、それでも完璧になりたい。上手にやりたい。良い俳優になりたい。全ての人に認められるような。


だからって皆に認められようとする必要はないのに (笑)。
そうだ。あえて皆に認められる必要はないけれど。あえて皆に認められたいって (笑)。

 

 記者 ソン・アンナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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自分で購入したものです

 

■参考

イ・ナヨンさんについて応えたインタビュー

2016年3月20日 Singles 2013年9月号

https://ameblo.jp/hb625/entry-12308220772.html

 

2013年2月17日 CAMPUS10 2月号 Vol.8

https://ameblo.jp/hb625/entry-12447085550.html