俳優、そして男 イム・シワン

 

 

 

白い肌に無垢な瞳。どこか母性本能を刺激する男。彼は血にまみれたままの手で拳銃を握った。映画 <不汗党:悪い奴らの世界> (邦題 名もなき野良犬の輪舞) で会った俳優イム・シワンの話だ。

 

前作 <ワンライン> では、蛇のように言葉巧みに詐欺界の新星になった彼が新たな演技変身を試みた。「僕の感性で表現できるか」と心配が先に立ったと打ち明けたが、彼は刑務所を引っ掻き回す新人の姿から、家族への切ない感情、そして鳥肌が立つほどの残忍さまで、多彩な感情で120分を駆け抜けた。

 

この映画は、人を信じ裏切る過程を経て成長するヒョンスのキャラクターの成長記であり、俳優としてまた男としてのイム・シワンの成長記でもある。

 

 

 

新たな変身だ。<不汗党> では残忍な男の魅力を見せ付けた。
今まで出演した作品は、軽い気持ちで見ることができなかった。自分の演技に物足りなさがあって、作品を見ても楽しくなかった。ところが今回の <不汗党> は、演技よりストーリーに集中できる作品だった。言うまでもなく演技に物足りなさはあったが、内容がとても面白かった。これからは僕の酒の友になる作品だ。

 


なぜ <不汗党> を選択したのか。
シナリオを見て「自分が撮らないにしても必ず見なければならない作品」に思えた。ヒョンスというキャラクターは、つらい事が多く、成熟した人物だ。疎かにできないと思った。僕がもう少し成熟してから会えたら良かったが、監督が説得してくれた。できる! と応援してくれた。

 


ヒョンスというキャラクターは、どうやって作り上げたか。
まず、暗い部分をアピールさせなければと考えた。今までの演技の中で最も難しいと思った。ところが監督は僕の考えを覆した。傷のあるキャラクターだが、むしろ軽く明るいトーンで行こうと。監督とソル・キョング兄さんの影響で最も楽しく居心地のいい撮影現場だった。

 

 

序盤で濃厚なキスシーンがあった。難しくはなかったか。
そんなシーンがもっとあってもよかったのに (笑)。僕の意志ではなく、全部監督のディレクションがあった。そう難しいシーンではなかった。

 


演技でストレスを受けるタイプだと告白したことがある。
不思議なことに今回の作品でストレスを受けなかった。以前は完璧な準備があってカメラの前で演技できた。違う心構えを持とうと心がけた。それで下書きだけ整えて演技をした。そこから来るときめきがあった。今日はどんな新しい姿が出てくるのだろうか? と期待した。反面、心配にもなる。こんなに気楽に演技したが、観客はどのように見てくれるだろうか、と。

 


大先輩ソル・ギョングとの呼吸はどうだったか。
兄さんがよく冗談を言った。おやじギャグも飛ばして、出だしから雰囲気が良かった。大変だとか、気まずいとか一度も考えたことがなかった。

 

 

劇中のジェホ (ソル・ギョング) とヒョンス (イム・シワン) の関係について、よく話されていた。ブロマンスからロマンスまで。
演技をする時は、とことん兄と弟の義理の話だと思った。ところが、撮影後に監督が <ロミオとジュリエット> や、「ブロマンスより愛に近い関係」とおっしゃっていた。聞いた瞬間、戸惑った。

 


特別出演したホ・ジュノとは、大きくからむシーンがなかった。現場でどのような話を交わしたか。
ホ・ジュノ先輩が現場に来る前から、歌が上手だと聞いていた。それで先輩に「歌が聞きたい」と無理に頼んだ。その前はソル・ギョング兄さんとカラオケによく行ったが、一度はホ・ジュノ先輩と3人でカラオケに行った。もう本当に歌が上手い。思い出したらまた聞きたくなった。

 

 

 

 

この映画が第70回カンヌ国際映画祭に招待された。
監督が違って見えた。初めて監督とミーティングをした時、無意識のうちに先入観があったようだ。監督はよくあるスタイルではない。服も独特だ。あちこち破れた服を着ていたことが思い出される。僕の知る一般的な監督の姿ではなかった。それで何処と無く心配があった。ところが撮影一週間で心配はなくなった。監督だけを信じて撮影し、その後カンヌのニュースを聞いたりして、僕が知っていたより大変な方だという気がしたよ (笑)。

 


ちょっと変わった歩みだ。アイドルグループで始まって、カンヌ国際映画祭にまで行く。
自分でも本当に変わっていると思っている。今まで本当に運が良かった。この後の運がないんじゃないかと思って心配だ。

 


<不汗党> と、最近公開された <ワンライン> でも、これまでにない変身を見せた。変化するための意図した選択か。
それまで優しいイメージできたのは事実だが、そんなイメージを変えようと強く思っていたわけではない。しかし、監督のほうが欲を出した。自分のイメージを変えてみようと試みた。おかげで多彩な演技をするようになった。

 

 

今回は大胆な演技変身だ。何か期待は。
自分の演技を、こう見てほしいというわけではない。演技よりストーリーに集中できる映画になれるといい。このような良い作品で評価を受けるなら申し分ないだろう。

 


俳優としてのイム・シワンの強みは?
たった一度でさえ会うのが難しい大先輩たちとお会いできた。これは自分にとって最も大きなメリットだ。先輩たちに会う前? 大した事なかった。

 


まもなく軍入隊も控えている。経歴が途切れる心配は?
感が鈍るか心配になったりするが、これまで経験したことのない経験をしながら、また新しいものを得られるだろうという期待もある。半々だ。

 

 

 

170516

http://tenasia.hankyung.com/archives/1209721