公務員はゼネラリストが求められる。
よく言われますね。実際自治体の多くの職員はいわゆるゼネラリストだと思います。
市役所に入って仕事をすると本当に幅広い業務に携わります。住民票を発行するような窓口部署、福祉や子育てに関する部署だったり、税に関する部署だったりは割とイメージする人が多いと思います。このほかにも地域コミュニティに関する部署や、地域のお祭りなどの観光部門、道路や水道などライフラインに関する部署、広域連携を担当したり、市の総合的な計画を管理する部署、市役所内部に目線を向けた人事や契約、庁舎管理などの総務系の部署……挙げ始めたらキリがないほど多くの部署があります。大卒新卒で入って65歳まで40年を超えるキャリアの中でもすべてを経験することはおそらくないと言えるでしょう。
ただ、それでも公務員は3〜5年で異動をしていきます。そしてその異動は現在の仕事と同じ分野になることもあれば全く異なる分野になることもあります。一般事務で入れば、なおのことこの傾向は強くなっていくわけです。
いわゆるゼネラリスト的な働き方になっていくわけですが、これがなかなか大変です。異動内示が出て、引き継ぎを受けて勉強が始まっていくわけですが、何せ時間はないわけですが、それでも行政サービスの低下はさせてはいけないからです。
地方公務員は「総合商社」のようなもの、とか「異動は転職」と言われることもありますがまさにそのとおりです。異動をすると楽しさもありますが、最初はかなり戸惑い、苦労をします。笑
私個人としてはこのゼネラリスト的な働き方に事務職の職員全員がなる必要はないと思っています。もちろん、いろんな視野を持つことで施策に深さが出たりもしますし、大変であることにはそれなりのメリットもあるとは思います。
ただ、せっかく身につけた専門的な知識を深め切ることなく異動してしまって、また元の分野に戻ってきた時には制度も変わっていて勉強をし直すなんてことになったらもったいないと考えています。
どんどん尖って、専門的分野の知識や経験を深めていく。そしてそれをどんどんと市に還元していく。そんな働き方がこれからの公務員には求められていくのではないでしょうか。
特に最近は若手世代を中心に「終身雇用」の重要さが低下しています。市役所で働いていても民間に出ていく人もいれば、民間から入ってくる人もいて、人材の流動性はかなり高まっていることを実感しています。
せっかく民間から入ってくる人には、それまでの経験を積極的に行政に注いでもらうべき(むしろそれを期待して採用しているはず)ですし、若手の人たちも興味関心が高い分野での経験を積み、若手のうちからどんどんと活躍していくような働き方ができた方が双方にとって良いような気がしています。
また、「職員が退職する傾向」についてはむしろプラスに捉えるのもありではないかと思っています。というかむしろそれを止めることはできないのではないかなと思います。これをプラスに見て、民間でしか得られない経験を持って何年か先にまた改めて市の職員として戻ってきてもらうようなタイミングを設ければ、これもお互いにとってのメリットになり得るのではないでしょうか?
そういった意味で最近の「アルムナイ採用」の傾向はかなり注視しています。どちらかというと育児や介護などの理由で離職した人を対象としていることが全国的に多いですが、ここの条件を少し緩和させて、元職員で改めて行政で働きたい職員を対象として積極的に採用をしていくようにしても良いのではないかと思っています。
日本は全国的に少子高齢化の進行が深刻化しています。政治に参加するのも多くは中高年以上とも言われています。今のこの現状を変えていくには従来の採用の方法、人事制度を大幅に変えていく必要がある気がしてなりません。
もちろん「職場としての役所」が魅力的になり、離職者が出ないことが一番だとは思っています。ただ、今後人口減少が進み、働き手が少なくなっていく中で、人員の確保や維持はかなり困難です。ある程度の流出は覚悟しつつも、流出した職員とも協働していく。そんな自治体が生まれてくると、その自治体ってすごく魅力的で住みよいまちなんじゃないかなと思うところです。
長々と失礼しました。公務員という仕事やその人材育成への熱量を少し感じさせてしまったかもしれません。見方を変えたり、考え方が少し変われば地方公務員は良い業界だというのが伝わっていると嬉しいです。