夫は今でもたまに、


死んでしまった犬の名前を呼ぶことがある。


それは決まって、ソファーに座ったとき。


「呼んだら、ひょこっとその辺から出てきそうだよな」






犬がまだ元気なときは


夫がソファーに座り、犬の名前を呼ぶと、 


犬はどこにいてもソファーへ駆け寄り、


夫の膝の上に飛び乗った。


そして、夫が横になると、


犬も一緒になってお腹の上で寝た。






犬が死んだのは、6月。


夫が入院した翌日だった。


夫は犬が死んでしまった姿を見ていない。


だから、夫の中では、


犬はまだ生きているのかもしれない。





最近、笑うことが少なくなった夫。


もし、今も犬が元気だったら、


心身ともに弱った夫を慰めて、


癒やしてくれていたんだろうな。