ノボの生き活きトーク 90号: メフィストーフェレス | 生き活きノボのブログ

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 年が明け、元旦は遠くになりつつも、まだまだ松の内です。ですが、那珂市では新年になって続いていた穏やかな天気は、ようやく雲が多くなり、午後からは雨という予報です。本日は、多分、散歩には行けないでしょう。

 さて、皆さん、年末年始を利用して、何か本を読まれましたか? ノボは、ゲーテの『ファウスト』を、1973年以来、41年ぶりに再読しました。再読する切っ掛けは、1年とちょっと前の12月のクリスマスにドイツのライプチッヒに4日間滞在しましたが、その時に“アウアーバッハス・ケラー”というワイン酒場に行き、ファウストを思い出したからです。『ファウスト』では、“ライプチッヒ市のアウエルバッハの酒場”(相良守峯訳:岩波文庫)の項で、悪魔のメフィストーフェレスがファウスト先生を書斎から連れ出して様々な場面に遭遇させる訳ですが、その初っ端が平民社会の“アウアーバッハス・ケラー”だったのです。ノボは、18世紀の西欧に興味を持っていますが、ゲーテは18世紀の中頃に生まれ、19世紀の初頭まで活躍しており、彼の活動は、当然のこと18世紀にドップリと浸かり、その影響を受けています。

 今回、41年ぶりにファウストを読んで、本には41年前に読んだ時の傍線、感想などを書いているのですから、確かに読んでいる訳ですが、恥ずかしいことに読んだ内容をほとんど忘れていました。その当時、多分、記憶に残るほど理解しないで、読んだのでしょうか。メフィストーフェレスに幻影を見せられて、ファウストはグレートヘンという理想の女性を手に入れ、彼女を不幸のどん底に陥れますが、その間、メフィストーフェレスに連れられてワルプルギスの夜を彷徨います。

 メフィストーフェレスは悪魔ですが、この悪魔とは、中世のキリスト教社会から生まれたもので、中世以降にその魔術は有効のようです。そのメフィストーフェレスが、それ以前のギリシャ、ローマの世界へファウストを導くのです。その世界では、メフィストーフェレスの魔術も効能が小さく、勝手が違います。中世からのキリスト教社会に生きるゲーテが、なぜそんな世界を描いたかは興味のあるところで、ルネッサンス以来の息吹を18世紀がどう評価し、考えたに繋がります。財政的に困窮した帝王が、メフィストーフェレスの誘惑に乗り、紙幣を発行して危機を脱する話もありますが、これは金本位制から紙幣制へ移行する欺瞞性を揶揄していますね。

社会が平和に、そして人々が幸福に暮らすには、道徳に基づき、自由、平等、所有の保障を調和させることが必要ですよね。しかし、そこに経済が深く入り込みます。富国論ではないが、富と幸せとは何か? 紙幣、株、債券などなど、現代社会は、金融工学などにも恵まれて、無限大の富を創出します。メフィストーフェレスがファウストに示したギリシャ、ローマの幻影が現代社会になるとすれば、メフィストーフェレスは、地獄でほくそ笑むかも知れないですね。 (平成27年1月6日)