1.港則法 第16条 2項では、「帆船は、港内では、帆を減じ又は引船を用いて航行しなければならない。」と記されている。 つまり、セイルの面積を減らしたり、2枚のセイルのうち1枚を降ろせば、港内を帆走できると解釈できます。
2.40年前の小型船免許1級の講習では、「港内では帆走禁止」と教えられました。 港則法の記述と矛盾するので、ずっと疑問に思っていました。
当時のテキストはもう無いので、免許の更新で使うテキスト「海技と知識 」を見直した。
- 2013年「海技と知識 」(第8版)では、「帆船は港内では帆走しないようにしましょう」と努力目標となっていた。 私の記憶は禁止ですが、・・・。
- 2023年の「海技と知識 」(第11版)には、港則法の帆走制限は記載なし。
「港内での帆走」についての記述がなくなったのは、なぜだろう?
3.2005年版の横浜ベイサイドマリーナ海上安全チャートには、「HARBOUT LIMIT区域内帆走禁止・機走のみ」と明確に書かれていました。
「港内では帆走禁止」を意味しています。 これは、免許講習で教えられたことと同じなので、違和感はありましたが、受け入れていました。
実際には、HARBOUT LIMIT 区域内で、みんな帆走していましたが、巡視艇に止められたヨットを聞いたことはありませんでした。
私の横浜でセイリングしていた頃の理解は、HARBOUT LIMIT 区域内の
- 広い海面では、帆走は許される(違反に目をつぶってくれる)、
- 狭い防波堤の内側の港内は、帆走禁止。
現在の横浜ベイサイドマリーナのホームページの「東京湾・相模湾 安全チャート」には、港則法による帆走の制限は書かれていません。
「港内での帆走」についての記述がなくなったのは、なぜだろう?
4.日本の法令を法務省がの翻訳しています。
この英語翻訳文は日本語本文と矛盾しています。
港則法 第16条 2項の日本語本文と英語翻訳文(法務省の翻訳)は、
- 帆船は、港内では、帆を減じ又は引船を用いて航行しなければならない。
- In a port, a sailboat must navigate with its sails down or using a tugboat.
翻訳アプリ、Google翻訳を使い法務省の英語翻訳文を日本語にすると、
- 「港内では、帆船は帆を降ろすか、タグボートを使用して航行しなければなりません。」
翻訳アプリ、DeepLを使い法務省の英語翻訳文を日本語にすると、
- 「港では、ヨットは帆を降ろして航行するか、タグボートを使わなければならない。」
港則法 第16条 2項の日本語本文では、「帆を減じ」と、セイルの面積を減らせば港内を航行できるように読めます。 しかし、法務省の英語翻訳文では、帆(複数)を降ろすことを要求しています。 これが、「港内では帆走禁止」になります。
エリートの法務省の役人が、間違った翻訳をするはずがありません。
なぜ日本語の法令と矛盾する翻訳をしたのだろうか?
なお、法的効力は、当然日本語です。
5.私の新解釈:
港則法 第十六条を読み直します。
第十六条 船舶は、港内及び港の境界附近においては、他の船舶に危険を及ぼさないような速力で航行しなければならない。
2 帆船は、港内では、帆を減じ又は引船を用いて航行しなければならない。
「他の船舶に危険を及ぼさないような速力」がポイントです。
帆走について考えます。
- 風が強く、スピードが出すぎるときは、「帆を減じ」て「他の船舶に危険を及ぼさないような速力」にする(第16条 2項と同じです)。
- 風が弱いために、舵が効かなくなるほどスピードが遅いときは、「他の船舶に危険を及ぼ」すため、帆走は禁止。
第16条 2項だけを守っても、「他の船舶に危険を及ぼさないような速力」にできないかもしれないため、「港内では帆走禁止」を強く言わなくなったのかもしれません。
あくまで、私の感想です。
6.別府港は港則法の適用港です。 別府港の範囲は、港則法施行令において、「高崎山山頂から松ヶ鼻まで引いた線及び陸岸により囲まれた海面」と定義されています。
防波堤の内側の狭い港内で帆走することはありません。 事故の元です。 狭い港内での操船の難しさはヨット乗りが一番知っています。 修理費用は安くありません。
HABOUR LIMIT 区域内の漁港の一文字防波堤をレースのときに回っています。 一文字防波堤の内側は、事故は起きそうにない広さで、漁船と行き合ったことはありません。 これが法律違反(片目をつぶってもらえない)なのか気になり、今回調べました。
先日のレースのときは、片目を閉じてもらえてました。
このまま、曖昧にしておくのが日本文化なのでしょう。