Ian Farrierさんの設計したトリマラン(Fボートと呼ばれる)は、既に世界で3000隻以上走っており、
安全性と高性能のバランスは折り紙つき。
 
Fボートの安全性を支える大きな復元性能と浮沈性能を、Farrier Marine Newsletter TRAILERTRI No. 43をもとに、コルセア F27を使った実験を紹介します。
コルセア F27は、彼を有名にしたベストセラーのトリマラン。

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上の画像は疾風。 船体(コルセア F24 マーク II)はF27のジュニア。  F27と同じ設計思想です。リグはAeroRigに変えてもらいました。
 
1.復元性の実験
 
マストの上からロープを引っ張り、F-27を傾けた。 
 
フロートの後部は水面下に沈んでいるが、
メインハル(中央の船体)は空中に浮いている。
フロートが大きな浮力を持っているのがわかる。
「フロートの浮力は、船体の重さの2倍の設計思想であることが、現代的トリマランの設計基準である」と、マルチハルの雑誌で、昔読んだことがある。 
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さらに引張り、90度に傾けても、まだ船体は起き上がろうとした。
フロートの船首部分の浮力が大きく、重心が後方であるため、
船の船首が上を向いている。 
これがFボートのバウ沈の危険が小さい秘密。
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次に、フロートのハッチを開け、
フロートの中央の区画を浸水させた。
(注:フロートは前後方向に3区画に分かれている。)
 
メインハル後部、ビーム、それにフロートのサンドイッチ構造の外板の浮力で浮いている。 マストの先端には、船体を起き上がらせようとする復原力が少しある。 
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さらに、フロートの前部区画を浸水させたので、船は前後方向に水平になった。 
ビーム及びフロートのサンドイッチ構造の外板の浮力で浮いている。 マストもほとんど水平で、船体を起き上がらせる復原力はない。 
  注: 写真には桟橋でマストを支えている人が写っている。
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マストを少し持ち上げると、
船体を起き上がらせる復原力が発生した。
 
試験中、メインハルへの浸水はなかった。
実は、この実験は、転覆を避けるための装置を開発のためだったのです。 
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2. 不沈性能の実験
メインハルとフロートに海水を入れての実験。
外板はサンドイッチ構造であるため、浮力が大きく、
船体及びフロートに穴が空いてもヨットは沈まないことを示している。
Fボートは沈まない。
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重りをヨットに下につけたモノハルは転覆しないかもしれないが、沈む。 
船底のバルブが、破損すれば沈む。
船底に穴が開けば沈む。
転覆して、船内に水が入れば、沈む。
 
Fボートは転覆するかもしれないが沈まない。
沈んで、命にかかわる状況よりも、船自体が大きな救命いかだである方が、
安全ではないですか?
 
不幸にして転覆したFボート。
フロートや船体のデッキ面で浮くため、 
トランポリンに立てるし、船内の荷物も取り出せます。
大きな救命筏です。
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3.安全な操船
 
ファミリーカーでも、カーブで横転することがあります。 
レースカーではその確率はずっと増えます。
しかし、レースカーが横転したからと言って、誰もファミリーカーが危険とは言わないですね。  安全にカーブを曲がれる速度でファミリーカーを運転するのは、当然ですから。
 
Fボートでも同じす。 
強風に大きすぎるセールで速く走ろうとすると転覆の確率が大きくなります。
しかし、船長が2つのルールを守ればFボートを安全に操船できる。
 
ルール①.
ファミリーセイリングの場合、突風でFボートが傾いて風下のフロートが完全に水没するようなら、リーフ(セイルの面積を減らす)すること。 
疾風の場合、このときの傾きは15度ぐらい。
 
下の写真の状況では、そろそろリーフを考えるべきか。
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ルール②.
経験をつんだクルーが乗っているなら、フロートが完全に水没しても、
リーフせずに走っても問題ないが、一番大きなセイルをコントロールするシートは、いつでもセイルを緩められるように手に持っておくこと。 
 
なぜなら、最大の復元力は、片方のフロートとメインハルが水から浮いた時に生じるので、まだ転覆には余裕がある。  
 
余裕があるとはいえ、下の図のような走りは、経験をつんだクルーが乗っているときだけです。  
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私は、シングルハンドで楽しんでいるので、ルール①を守っています。  それでも、これまでの最高速度は、15.8ノット。  爽快です。
 
乗用車を安心して運転できるなら、現代的設計のトリマランにも安心して乗れます。
 
F27は1984年の設計ですので、現代的といってもいいのかどうか?
1984年はつい昨日のことのようだ(笑)。
 

 
「オジサンのぼやき」
モノハルのヨットが船検で旅客定員の許可をもらうには(限定沿海)、
復元性計算の提出、または80度まで傾けた実験を要求されます。
お金がかかることはできません。
新品のときなら、計算書をつけられたのに・・・。
旅客が乗ることを考えた厳しい検査を、新品のときにしてほしかった。
Fボートには、合格の能力は充分にある。 
 
一般にヨットには、旅客定員はなく、船員である乗員定員だけです。
赤ちゃんは乗員としての仕事はできないので、厳密には、旅客定員のないヨットには赤ちゃんは乗れないと思います。  定員10名の遊びのためのヨットに旅客定員の許可がない矛盾です。 疾風の乗る方には、乗員としての仕事をしていただきますので、よろしくお願いします。
日本のボート検査はおかしい。