<艶が~る、妄想小説>


今回は、後半戦の彼らの様子を書いてみました。座興杯で酔っ払った四人と、投扇興での勝負の行方は?



【温泉♪おんせぇぇん♪】(後半戦:第1部)



「お酒、持って来ました!」


投扇興で競い合っている彼らの様子を窺い、追加のお酒とお水の準備をして戻ってくると、完全に酔っ払った四人が私を迎え入れてくれた…。


「おお!待っちゅうよ!(待っていたよ)こじゃんと持ってきて!」
「龍馬さん!そ、それに翔太くん…」


上機嫌の龍馬さんの隣りで、上半身だけ裸になって胡坐をかいている翔太くんの背中が目に飛び込んで来た。


(翔太くん……ぬ、脱いでる…)


さっきよりも酔っ払っている彼らの元へ急ぐと、完全に目が据わっている状態の翔太くんが小器でお酒を飲み干した。


「うっ……今夜らぁけわぁ…負けられないんだぁぁ……」
「翔太くん……」

「水、くれっ」

「あっ……」


翔太くんにお水を手渡そうとして逆に手首を掴まれ、ほんの少し零れ落ちる水滴をもう片方の手で受け止めながら、その熱い視線と目が合う。


(翔太くん…なんか、いつもと違うなぁ…)


「お前は、だぁれにもぉ…渡さない」
「……えっ…」


トロンとした色っぽい目に見つめられると同時に、いつもよりも男らしい口調で低く囁かれ、心臓がドキドキと跳ね始めた。


バスケで鍛えられた腕の筋肉と、程好い厚さの胸元に目を奪われる…。


「おい、翔太」
「何れすか…」


不意に高杉さんに声をかけられ二人でそちらを見ると、これまた色っぽく細められた視線と目が合い、そのあまりの艶やかさに思わず視線を逸らした。


「それは、俺の台詞だ」
「…いくら高杉さんれも…この勝負だけは…負けられないんだぁぁ…」


翔太くんは、気持ち良さそうに息を漏らすと、高杉さんに男らしくキッパリとそう言って、私からお水を奪い取って一気に飲み干した。


「翔太が酔うと、面白いんだな…」
「ほうじゃろ?何故かこうして脱ぎ出すんじゃ。もっと酔うたらしょうえい(面白い)よ」

「他には、どんなふうになるんだ?」

「乾杯しろぉぉ~言うて、迫ってくるがじゃ」


苦笑紛れに呟く高杉さんと、笑いながら言う龍馬さんに対しても、翔太くんは上目遣いに見ながら同じように、こいつだけは渡せない…と言ってくれたのだった。


酔っているとはいえ、彼がそんなふうに私のことを大事に思ってくれているのかと思ったら、なんだか嬉しかった。


そして、終始無言だった枡屋さんも静かに口を開く。


「こん中で早々に一抜けするんは、翔太はんやと思うてましたが…なかなかどうして、あんさんのその想いに負けそうや…」


時々、苦しそうに…でも、気持ち良さそうに酔っている様は、みんなとっても色っぽくて思わず見惚れてしまうほど……。


「ほな、そろそろ決着をつけさせてもらいまひょ…」


そう言うと、枡屋さんはまた駒を回し始める。


くるくると回る駒を見つめ、早く決着が着かないかと心の中で祈りながら駒の行方を見守っていると、目は小を指して止まった。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



「お酌を頼みます。もうそろそろ、決着がつきそうどすな…」


言われるがまま、枡屋さんの持つ小器にお酒を注ぐと、彼は喉を鳴らしながらゆっくり飲み干して、高杉さんの前に駒を置いた。


「さ、高杉はん…」
「……ふぅ…」


高杉さんは、駒を見つめながら吐息を漏らすと、真剣な顔つきで駒を回した。やがて止まった駒の目が出したのは、大器だった。


「……くそっ」
「高杉さん、顔色が悪いです…もう、このへんで止めて下さい」
「心配は無用だ」


私は心配しながらも、差し出された大器にお酒を注ぐと、器の穴を押さえていた彼の指の隙間からお酒が少しずつ漏れ始め、高杉さんは慌ててその穴を押さえ込んだ。


「なっ……」
「お!高杉、おんしの負けじゃ!」
「手が滑った!」


座興杯のもう一つのルールは、お酒を飲み干す前に、それぞれの器の底に開いている小さな穴からお酒を溢すと、負け…というものだった。


「これで、三回目どしたな…」


(……よかった…)


私は、心の中でそう思った。


それは、高杉さんが負けたからではなく、これ以上高杉さんの苦しそうな顔を見ていられなかったから…。


「まさか、この俺が一番初めに抜けることになるとはな…完全に飲まれた」
「高杉さん…」


私は、高杉さんにお水をそっと手渡すと、彼は「残念だ…」と、言って瞼をゆっくりと閉じながらそれを飲み干した。


「お前との一夜を楽しみにしていたんだがな…」


そう言って、またこちらを見つめる彼の妖艶な瞳に釘付けになる。こんなになるまで、私との時間を楽しみにしていてくれたなんて…。


それから、少し離れた場所で息を整える高杉さんを気にかけつつ、引き続き勝負を再開する三人を見守る。


「次はわしの番か…」


龍馬さんが手に取って駒を回した結果、大の目が出た。


「まぁた大が出てしもたのう~♪こうなったら、倒れるまで飲むぜよ!」


龍馬さんは、その結果を目にして半ばやけくそ気味に笑いながら言うと、とうとう片腕を胸元から出して私に器を差し出した。


「ごんごん(どんどん)注いでくれ!」
「は、はいっ」


ますますご機嫌になる龍馬さんの笑顔と、翔太くんと枡屋さんのどこか殺気だったような雰囲気と、半ば座ったまま眠っているかのような高杉さんを気にかけながらも、私はまた、あちらのお座敷へと向かった。



一方、こちらのお座敷では、投扇興で競い合っていた秋斉さんと土方さんの決着がついていた。


「お二人とも、前半戦が終わったんですね…」
「ああ」


私の問いかけに、土方さんは明後日の方向を見ながら呟くと、枕の上に蝶を置いていた慶喜さんがこちらに微笑みかける。


「秋斉に惨敗していたからね」
「……俺がこいつで勝てるわけがねぇだろ」


土方さんは、腕組みをしながら溜息をついた。枕と向かい合って正座している沖田さんも、にこにこしながら口を開く。


「土方さん、勝敗はまだ決まった訳ではありませんよ」
「こういうのは向かねぇんだよ…」


「扇を掴む手つきや、投げる勢い、宙を舞う扇を見ればだいたい分かるもんだよね」


慶喜さんはそう言って、不適な笑みを浮かべながら沖田さんに扇を渡すと、土方さんの傍にしゃがみこんで言った。


「土方くんの……」
「慶喜公、それ以上は言うな…」


私と沖田さんは、その会話の意味が分からず首を傾げていると、すぐ傍でお茶を飲んでいた秋斉さんがポツリと呟く。


「そない話は他でしなはれ…」
「そない話って…どない話です?」


沖田さんがいつもの笑顔で尋ねると、秋斉さんも薄らと笑顔を浮かべながら、「分かれへんならええ」と言ってまた美味しそうにお茶をすすった。


土方さんを横目に、なおも、慶喜さんと沖田さんは楽しそうに話し出す。


「どういう意味か知りたいかい?」
「ええ、是非!」


「俺のことはいいから、さっさとやってくれ…」


二人が楽しそうに話す中、その会話に割り込むように土方さんが口を開くと、彼らは更に楽しそうに微笑み合った。


「今度、男同士でゆっくりそのへんの話もしようか」
「楽しみにしています」


「総司……いちいち口車に乗るな」
「あはは、そうやってすぐむきになるから、からかいたくなるんですよ」
「……………」


(確かにそうかもしれない。さすが、沖田さん…土方さんを黙らせてしまうなんて。兄のように慕っているだけあるなぁ…土方さんも、沖田さんには弱いみたい…)



これから、前半戦では後攻だった沖田さんが先攻で、後半戦が始まろうとしていた。


「沖田くんには悪いが…この勝負は貰ったよ」
「いいえ、私がいただきます」


慶喜さんは、沖田さんの背後で自信有り気に呟くと、沖田さんは、深呼吸をして姿勢を正した。


さっきまでの和やかなムードはどこかへ消え去り、真剣な眼差しを蝶だけに向ける沖田さんと、その背中をじっと見つめる慶喜さんの視線が、その場の雰囲気を重苦しく変えていく。


「まずは、一投目…」


沖田さんの右手がすっと曲げられた次の瞬間、ふわっと扇が舞い上がると、枕の上に扇が乗った状態で、蝶が扇の持ち手の部分に引っかかり、篝火(かがりび)を出した。


「やった!篝火(50点)が出た!」


そう言って大きくガッツポーズをすると、沖田さんは私を見つめながらにっこりと微笑んだ。


「凄いですね!なかなか篝火は出せない技なのに…」
「あなたと、素敵な時間を過ごしたいですからね。狙ってみました…」
「沖田さん…」


沖田さんは、少し照れ笑いをしながら枕と蝶を整えると、慶喜さんに扇を手渡す。


受け取った慶喜さんは、「これは、うかうかしていられないね」と、言うと、沖田さんと同じように正座をして集中し始める。


いつにないその真剣な眼差しに、更に緊張が高まって行く。


「いくよ…」


慶喜さんは、ふわっと下から掬い上げるようにして扇を投げると、桐壺(20点)を叩き出した。枕の上に扇が乗った状態で、その脇に蝶が立っている状態だ。


「うーん、俺としたことが…少し力が入り過ぎてしまったようだね」


苦笑しながらこちらを振り返る慶喜さんの表情は、まだ余裕があるように見えた。



それから、三投ずつ投げ終わり、いよいよ最後の一手を残すのみとなった。


二人の戦いはこれで最後。


(なんか、私もドキドキしてきた……)


沖田さんは、今までよりも時間をかけて何度も扇を握りなおし、手首を軽く回しながら無言で集中している。いつもの優しい眼差しが、まるで、獲物を狙う鷹のように鋭く変わって行った…。


「これで最後だ……」


沖田さんが投げようとしたその時だった。


はっ…という声がして、全員でそちらを見やる。


「はっ…はっくしゅっ……」
「えっ…」
「ごめん…」


慶喜さんは口元を軽く押さえ、もう片方の手で詫びるようにしながら苦笑した。


(慶喜さんのくしゃみ…可愛いんですけど……)


そんなふうに思っていた時、今まで黙っていた秋斉さんが静かに口を開く。


「あんさん、わざとやないやろな?」
「人聞きの悪いこと言うなよ、秋斉」
「どうだか……」


秋斉さんと慶喜さんの会話にそれぞれが苦笑し合うと、沖田さんはまた、体勢を立て直し蝶に集中し始める。


「さぁ…今度こそ行きますよ」


しばらく集中した後、扇をふわりと投げた……。


すると、長い間お目にかかることの無かった、夢の浮橋(50点)が綺麗に出来上がったのだった。


「……で、出た!」
「沖田さん、お見事です!」



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



夢の浮橋…。誰が名づけたかは分からないけれど、まさに、幻の…と、言っても良いくらいの出来栄えに、胸がわくわくして思わず自分の手を握り締めた。


けれど、満面の笑顔でこちらを振り返る沖田さんとは正反対に、慶喜さんの表情は曇って行く…。


「となると…俺は、50点代を出さないと駄目ってことか…」
「そう、なるな。こないに早うあんさんが負けるところを見られるとは」


慶喜さんは、微笑む秋斉さんに少し不貞腐れたような顔で言い返す。


「なんか、楽しそうだねぇ…お前」
「こない楽しいことはおまへん」
「おいおい、本来ならここは俺を応援するところだろう?」
「応援して欲しかったんか?」
「いつにも増して、凍てつくような冷たさをありがとう…」


完全に言い負かされて、少し肩を落としながらも、慶喜さんはいつもの笑顔で最後の一投の準備をし始めた。


自ら蝶を枕に置いて、定位置につくと扇を構え始める。


「……最後の一手だ」


周りが緊張して見守る中、慶喜さんはゆっくりと息を吐きながら呼吸を整えると、さっきよりも滑らかに扇を投げた。


枕から落ちた蝶が綺麗に立った状態で、蓬生(よもぎう)を決めた。


「一歩、及ばず…か」


慶喜さんは、ほんの少し落胆しながらも、沖田さんの傍に行き賞美すると、沖田さんも慶喜さんに微笑み返す。


「完敗だ。手加減もしたつもりは無いよ」


それから、慶喜さんは私の隣りに寄り添い、「お前との素敵な時間を過ごすことが出来なくて残念だ。こんなことなら、秘密にしておけば良かった」と、私の耳元で囁いた。


そして、慶喜さんと入れ替わるように、沖田さんも私の元へやってくると、「次も勝ちます」と、言って微笑んでくれたのだった。



「さ、次は…土方くんと秋斉の番だね」



慶喜さんと沖田さんの勝敗が決まると同時に、秋斉さんと土方さんの後半戦が始まった。


相変わらず渋々と立ち上がって定位置に座る土方さんと、余裕の表情を浮かべる秋斉さん。


二人の勝負の行方は……。


そして、座興杯で酔っ払ったあちらのお座敷の勝敗の行方は……。




後半戦:第2部 へつづく>




~あとがき~


長くなってしまったので、後半戦は第1部、2部と分けさせていただきました汗


この続きは、まだ執筆中どすきらきら


結果は、もう決まってしまっているのですが…。・゚・(*ノД`*)・゚・。


話は変わりますが…さっき、沖田さんの着物をゲットしたくてガチャを回したら……特効薬が出て!!もう、嬉しくて嬉しくて悶絶してしまいまいた(笑)


翔太きゅんの時も、着物欲しさに回したら…とんぼ玉が!!


狙わないと逆に出るっていうねすまいる


世の中、そんなもんですなぁきらハート翔太きゅんの鏡を読み終わったら、沖田さんの水を目指すぞぉぉニヤリ


今日も、遊びに来て下さってありがとうございましたクローバー