人間の生き方 | 作家 福元早夫のブログ

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人生とは自然と目前の現実の、絶え間ない自己観照であるから、
つねに精神を高揚させて、自分が理想とする生き方を具体化させることである

 ミゲル・デ・セルバンテス(1547―1616年)は,17世紀初めに活躍したスペインの作家である。

 

 セルバンテスは,スペインの黄金時代の16世紀半ばに,マドリード近郊で、貧しい外科医の子として生まれた。

 少年時代は父についてスペイン各地を転々として,正規の教育は受けられなかったが,文学に強い興味を示して、読書を好んだという。

 

 十代の後半からは、ある人文主義者に師事して学び,1569年には枢機卿の従者としてローマを訪れる機会を得て,そこでルネサンスの文芸作品に触れた。

 

 まもなくスペインの軍隊に入り,1571年には、オスマン帝国海軍とのレパントの海戦にも従軍したが,この際に負傷して左腕の自由を失った。

 

 16世紀末には、スペインの繁栄に影が差してくるが,それと並行するかのように、以後のセルバンテスの身には多くの災難がふりかかる。

 

 彼は,軍を除隊して帰国する途上で海賊に襲われて捕虜となり,それから5年も北アフリカのアルジェで虜囚生活を送ることになった。

 

 ようやく解放されて、祖国に帰還した後も、期待したような待遇にはありつけず,また創作活動を行ってみたものの、評価は得られず,やむなく食糧徴発員,ついで徴税吏などの職についた。

 

 そのようななか,1597年には、公金を預けていた銀行が倒産したことから責任を問われ,投獄されるという憂き目にあい,出所した後はいっそう苦しい生活を続けた。

 

 このような苦労を経験しながら,セルバンテスは詩・戯曲・小説などさまざまなジャンルに手をつけてみたが,そうした辛苦や試行錯誤の果てに生まれたのが,晩年の大作『ドン・キホーテ』である。

 

 これは,騎士道物語のパロディの形式をとった長編小説で,ある村に住んでいた50歳近くになる男が,騎士道物語を読みすぎて頭がおかしくなった結果,自分が騎士であると信じ込み,「ド・キホーテ」と名乗って,サンチョという従者を連れて、遍歴の旅に出て冒険を繰り広げていくという筋書きの物語である。

 

 ドン・キホーテが、行く先々で人々を巻き込んでは騒動を引き起こしていく姿が、滑稽かつユーモラスに描かれて,とにかくおもしろい作品となっている。

 

 この作品は,1605年に発表されると、すぐに大きな反響を呼んでスペイン中で評判になり,庶民から貴族・王侯まで多くの人々に読まれ,また外国でも次々と翻訳が出版された。

 

 セルバンテス自身は,作品の版権を安い額で手放してしまったために、暮らしは豊かにはならなかったが,それでもこの成功に励まされて,続編やその他の書きためていた作品を発表していった。

 そして,続編が刊行された翌年の1616年に,その波乱万丈の人生を終えた。

 

 彼の人生は、苦難と失敗の連続だったが,そのような人生の苦さを徹底的に笑い飛ばすことによって昇華させ,『ドン・キホーテ』という傑作へと結晶化させた。

 

 こうしてセルバンテスは,スペイン史上最高の,そして人類の財産となる偉大な作品を生み出した。

 

 セルバンテス(1547年1616年)は、近世スペイン小説家である。『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』の著者で、少年時代から道に落ちている紙切れでも、字が書かれていれば手にとって読むほどの読書好きであった。

 

 人間の生き方について彼は語っている。

「事実は真実の敵なり」

 さらに彼はこういう。

「君の友人を教えなさい。そうすれば、君がどういう人間か言ってみせよう」