プーブリウス・ウェルギリウス・マロー(紀元前70年―紀元前19年)は、ラテン文学の黄金期を現出させたラテン語の詩人で、共和政ローマ末期の内乱の時代から、帝政の確立期にその生涯をすごした。
ウェルギリウスは、マエケナスのサークルに加わる。『牧歌』の出版(紀元前37年ごろ)のあとのいつごろか、詳細な時期は不明である。
マエケナスは、オクタウィアヌスに種々の問題を取り次いだり、彼から相談を受けたりする有能な実務家で、文芸に秀でた者を、オクタウィアヌスの勢力に引き入れることで、名門の家柄の人々の間に、反マルクス・アントニウス感情を、引き起こす工作を行っていた。
ウェルギリウスは、当代のすぐれた詩人の間にも、その名がよく知られるようになっており、ホラティウスは、その詩作の中で、何度も彼について言及している。
伝統的な伝記記述によると、マエケナスの求めに応じて、ウェルギリウスは7年間をかけて(おそらく紀元前37年から29年)、長編詩『農耕詩』を制作した。
Georgica という原題はギリシア語に由来する。ウェルギリウスはこの作品をマエケナスに献呈した。
『農耕詩』の表向きのテーマは、農場の経営方法を紹介することにある。このテーマに取り組むにあたって、ウェルギリウスはヘシオドスの、『仕事と日々』やヘレニズム派の詩人たちによる「教訓詩」の伝統にのっとった形式を採用した。
そのためにこの作品は、六韻脚(ヘクサメトロス)の教訓詩形式で書かれている。
全4巻本の『農耕詩』のうち、第1巻と第2巻は作物と果樹、第3巻は家畜と馬匹の育て方を扱う。第4巻は養蜂に関する。
第4巻ではエピュリオンの形式で、アリスタイオスによる養蜂術の発見の神話や、オルペウスの冥界下りの神話が生き生きと語られる。
なお、セルウィウスのような古代の注釈家は、アリスタイオスのエピソードの箇所に、もともとは、ウェルギリウスの友人であった詩人のガッルスへの賞賛が置かれていたものを、皇帝(アウグストゥス)が命じて入れ替えさせたと推測している。
ガッルスは後にアウグストゥスの不興を買い、自殺した(紀元前26年)。
『農耕詩』の歌の調子は、楽観と悲観の間を揺れ動く。そのため詩人の意図するところをめぐって激しい議論がなされている。にもかかわらずこの作品は、のちの教訓詩の模範となった。
プーブリウス・ウェルギリウス・マロー(紀元前70年―紀元前19年)は、ラテン文学の黄金期を現出させたラテン語の詩人で、共和政ローマ末期の、内乱の時代から帝政の確立期にその生涯を過ごした。
ヨーロッパ文学史上、ラテン文学において最も重視される人物である。
人間の生き方について彼は語っている。
「労働はいっさいを征服す」