[mixi より転載]

先日、松本大洋原作のアニメーション「鉄コン筋クリート」を観てきました。原作の漫画はビッグコミックスピリッツ連載時に読んでいましたが、松本大洋独特の奥の深い伏線や無国籍な設定に、圧倒されたことと、主人公の少年「クロ」と「シロ」のイメージだけを覚えていました。ストーリーや結末はほとんど忘れた状態で映画を観ることになりました。

映画を観た後でも、まだ消化しきれてないかもしれないが、以下、概略;
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時代は(たぶん)近未来、舞台は日本あるいはアジアのどこかの猥雑な街「宝町」。主人公は壊れた自動車をねぐらにする少年「クロ」と「シロ」;言うなればストリート・チルドレンだ。「クロ」のイメージは獰猛なカラス、「シロ」のイメージは真っ白なハト。お互いに自分の中に足りない「ねじ」を相手が持っていると信じている;2人合わせてやっと完璧になる。

「クロ」は喧嘩が強い。オトナにも負けない。ヤクザや警察とも対等にやり合うし、街のチンピラには一目置かれて居る。彼は「宝町」を俺の街と言う。「シロ」は純真無垢だ。だが、「ねじ」が足りないせいで日常生活も「クロ」に助けてもらわないとままならない。でも、すばしっこさは「クロ」に負けない。2人は大人から掠め取ったものやお金で、日々凌いでいる。

そんな、一見平和な「宝町」にも新たな権力が侵略してくることとなる。その組織は「宝町」を再開発して、莫大な利益を得るつもりのシンジケートである。人殺しも厭わないし、子供だって容赦はしない。しかし、「クロ」は自分のなわばりの宝町への侵略を許すことはできないので、その開発を阻止しようとする。当然、組織からは刺客が放たれる。

「クロ」は自分が狙われることで「シロ」に被害が及ぶことを悟り、「シロ」を顔見知りの刑事に預ける。「シロ」は離れることを拒んだけれど…。そして刺客との戦いに臨む。
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ここまで書いてきて、あらすじを簡単に書くのが難しいことに気付いている。ストーリー以外の部分に松本大洋チックなところが溢れていて…。その部分は観ていただくしかない。上記のあらすじは、ほんとうに骨組と設定だけで、まったく映画の魅力を伝えていない。いろいろなエピソードはともかく、8割ぐらいは上の説明で間違いはないのだ。後の2割はネタバレになるので書けないし、ネタバレ覚悟でも僕にはとても魅力的に書くことは不可能に思える。

原作を知っていても、松本大洋を知っていなくても、楽しめる映画だと思います。ぐいぐい引き込まれます。ちなみに、脚本と監督はアメリカ人です。これは、松本大洋の世界がワールドワイドであることを物語っているし、その世界をスクリーン上に構築した監督はスゴイと思いました。

もう1つの収穫は「シロ」役(声)の蒼井優さんでしょう。アイドルを使った「話題作り」かと思ったけれど、僕のイメージしていた「シロ」にピッタリはまり、彼女の隠れた力量を見せられた気がしました。(蒼井優さんはアイドルでなくて女優ですね。これからに期待したいと思います。)

途中、「ジブリチックなところがあるなあ。」と思っていたら、エンドロールでジブリが1枚噛んでいることがわかりました。

大人向けのアニメです。