いまさらになって、北風が吹いて寒くなりましたね;とっくに「春一番」は吹いたのに。ちなみに、仕事場の部屋の空調は直って快適です(もう、報告したっけか)。

さて、先日(ずいぶん前ですけど)、シネコンで映画「墨攻」を観てきました。候補はいくつかあったのだけれど、いろいろ迷ったあげくに選びました。いつもはファースト・インプレッションを記録しておくのですが、この映画、結構曲者で、評論を公開することも頭にあって、なかなか書けませんでした。今日はいまから整理しつつ書いてみようと思います。

原作は1991年に出版された酒見賢一氏の小説ですが、有名になったのは1992年から1996年にかけてビッグコミックに漫画として連載されてから(漫画脚本;久保田千太郎、作画;森秀樹)です。2枚目でもない主人公(スキンヘッドに髭面)にもかかわらず、そのストーリーの面白さ、魅力ある登場人物と意表を突く展開で、熱狂的な支持を得た漫画です;残念ながら通しては読んでません。

舞台は中国、時代は春秋戦国時代という、ある意味「伝説の時代」である。中国を初めて統一した秦の始皇帝でさえ「あの」兵馬傭が発掘されなければ伝説の人だったのだから。その前の春秋戦国時代では、思想は儒家と墨家に2分されていたそうである。孔子を租とする「儒家」思想は秦とその後の漢においても「儒教」として生き残っていったが、「墨家」は秦、漢と時代が進むに連れて、理由は定かではないが(おそらく弾圧により)滅びてしまう。
【高校の世界史にも「墨家」は1回ぐらいは登場するが、「兵法」としての部分が強調されていたぐらいと記憶する。まして、漢文の授業で原文を読むなんてことはなかったですね。】

その荒れ狂う戦乱の時代において「墨家」は〝兼愛:自分を愛するように他人も愛せ〟と〝非攻:侵略と併合は人類への犯罪/攻撃はせず守りに徹する〟を説いた思想である。物語は、大国・趙の攻撃によって落城寸前の小国・梁に「墨家」の助っ人「革離(かくり)」がたった1人でやってきたことから始まる。大国に降伏寸前だった梁は、革離の説得で自分の国を守ることとなる。

天才戦術家・革離と10万人の兵を率いる趙の猛将・洪掩中との行き詰まる闘いを描いて、ぐいぐい引っ張って最後まで見せます。次々と繰り出される趙軍の猛攻を、墨家の秘策・奇策で凌ぐ革離。その役を演ずるのはアジアのNo.1 スター、アンディ・ラウ。敵役の洪を演ずるは韓国の国民的俳優アン・ソンギ。戦闘シーンはかなり見応えがあります。

一旦は趙軍に引かせるのですが、民衆の信望を得た革離に嫉妬し、自分の地位を脅かされるのではと恐れた梁王は、謀反の疑いで隔離を追放。しかし、趙軍は本隊を引かせた後も、虎視眈々と反撃の機会をうかがっていたのだ。革離の去った梁の運命や如何に…あとはご自分で観てください。

原作コミックは中国が舞台ということで、台湾や香港で翻訳され出版された。監督のジェイコブ・チャン(中国系アメリカ人)は、この原作コミックを読んで強烈なインパクトを受け、映画化を10年暖めてきたそうである。構想10年、制作費20億円という巨額を投じた本作品は、日本・中国・台湾・香港・韓国を巻き込んだオール・アジアの粋を集めた大作となった。日本からは原作だけでなく阪本善尚撮影監督、川井憲次音楽監督が参加しました。

原作漫画にない役で、この映画に華を添えるかたちになった女性騎馬隊長・逸悦を演じたファン・ビンビンは非常に魅力的な演技をしており、近い将来ブレイクすると予言しておきましょう。ただ、この登場人物のせいで物語の中心がぶれてしまったことは否めないかな、と思います。

あー、しんどい。難しいです。この映画の評論。できの悪い評論ですみません。見て損はしない作品です。★4つ。