世の中では夏休みの終わり&宿題の追い込みの時期に、下北沢の「劇」小劇場(写真参照)というところで芝居を観てきました。いや、観続けてきました。

                                           
劇

「Pain」;秦建日子(はた・たけひこ)作・演出

8月22日~31日までの10日間、「Pain」漬けでした。しばらく芝居のセリフが抜けないほどだったので、熱を冷ましてからの日記となりました。

脚本・演出の秦さんはTVドラマと劇場版「アンフェア」の原作小説を書いた方で、他にはTVドラマ(新しいところで「ホカベン」、ちょっと前なら「ドラゴン桜」とか)の脚本を書かれた方ですが、もともとは、つかこうへいさんのお弟子さんで舞台の方なのです。

今回の公演は「秦組」という自分の劇団の旗揚げということで、2001年に初演された「Pain」を大幅改稿し、小屋は小劇場にこだわっての公演になりました。劇場の定員は公称130名ですが、チケット発売からのあまりの売れ行き(たぶん1週間ぐらいで完売)に追加公演を2回追加(追加公演のチケットは5分で完売)し、座席も補助席を使って増やしての連日大入り満員の公演になりました。

で、僕は縁あって初日から千秋楽までの10日間、平日は仕事後に、土日は昼夜2公演、観続けました。こんな体験はこれ以降、人生でもう1回あるかどうか分かりませんね。前の日記にあるように舞台は変化し続けるものでした。常に100%、いや150%ぐらいを目標に千秋楽まで修正が続きました。

「Pain」のあらすじは簡単に書くのは難しい。作家の秦さんが舞台を通して発しているメッセージを自分が確実に受け止めているのか不安です。かなり複雑な構成になっているのです。

2つの時代が並行して描かれます。

現在;ピークを過ぎて落ちぶれて行く主人公のアイドルグラビアカメラマン(一郎)のマンションに、駆け出しの頃に写真を撮ってもらったというストーカー女(依子)が居候し、認知症になった母親(幸子)と一緒に暮らす。一郎は芸術写真集「Pain」を出版することで一流プロカメラマンの仲間入りをしたいと願う。一方、サイドストーリーとして、カメラマンの転落と行き違うようにRURIというアイドルがしたたかに頂点に向かって昇りつめて行く。

過去;カメラマンの母(幸子)が本当に好きだった「金を掘るのが夢」である一郎は女癖が悪く、夢をあきらめて父の会社を継ぐが、会社はうまく回らず自殺する。幸子は好きでもない会社の同僚と結婚し、男の子(後のカメラマン)をもうけ、一郎と名付ける。

と、ストーリーを書くと複雑なんだかあっさりなんだかわかりませんが、これらが微妙に絡まって話が進むのです(あー、魅力が伝えられない;泣)。舞台は後方に段があるだけで大道具も小道具もほとんどないスケルトン(と言うらしい)。冒頭と途中と最後に象徴的な挿話とダンスが組み合わされ、ダイナミック感を強調します。2時間ほどの舞台ですがメッセージがいっぱい詰まっています(たぶん)。

連日、脚本の改訂が行われ、ジュニアキャスト(若手)は端役ながら日に日に成長していく過程が見られました。シニアキャストでさえ、演技に余裕が生じ、アドリブが加えられ、連日観劇の僕達を飽きさせません。舞台後に書くアンケート意見もすぐに舞台に反映されるのが、驚きでした。良い意見は受け入れるという、常に上を目指す姿勢はすばらしく、小劇場ならではかもしれません。

舞台後のロビーでの「送り出し」にはシニア・ジュニア問わず役者さんが出てきて、ずいぶんお友達な関係になっちゃうのも小劇場ならではでしょうか。