一昨日になりますが、母の日も近いということもあり、映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」を観てきました。TVでスペシャルドラマ化され、1クールの連続ドラマ化もされ、満を持しての劇場映画公開でした;企画は他よりずっと早かったと思いますが。

キャストもSPドラマ>連続ドラマ>劇場映画と進むにしたがい、グレードアップして行ったような気がします。TV版は連続ドラマの時に数回見たぐらいで、あらすじはほとんど知らずに観ることになりました。もちろん、原作も読んでません。

原作はサブカルの雄、リリー・フランキーの自伝的小説です。賛否両論はあれど評論家に「現代の聖書である」とまで言わせた、ベストセラーです。昭和から平成にかけて、ダメ親父と強い母を持った、これまただらしない息子の30年に渡る物語です。

監督の松岡錠司は、原作の連載が始まるやいなや、映画化を考えたそうです。リリー・フランキーのサイン会にも一読者として参加して、映画化権を得ようと直談判したほど。脚本は松尾スズキ。自分の出演作でもなく、監督するわけでもない作品の脚本を書くことになるとは夢にも思わなかったそうであるが、松岡監督から託されて書き上げた脚本は映画にすると雄に4時間を越えるものとなったそうです。そこから松岡監督が削り遺したものが2時間20分の映画になりました。

キャストは、ボクにオダギリジョー(この役を引き受けるにあたり半年間が必要だった)、オカンに樹木希林、オトンに小林薫、さらに思い出に出てくる(というか過去のオカン)に樹木希林の実娘で演技は初めてという内田也哉子という、納得の配役。この他、主人公の彼女役の松たか子をはじめ、重要な役からチョイ役までそうそうたる顔ぶれが並びます(あんまりチョイ役すぎてパンフレットで知った方も多数)。

ストーリーは、過去と現在を交互に描くことで2時間半という時間で30年の長い年月を表現しています。小学生のボクとオカンと、時々しか家に帰ってこないオトンのおかしなエピソード。高校、大学とボクはオカンの元を離れて自堕落な日々を送ります。しかし、なんとか奮起して(オトンのように)東京から逃げ帰らずに生活ができるようになったとき、オカンは癌に侵されます。ボクはオカンを東京に呼び寄せて一緒に暮らし始め、楽しく笑いの絶えない毎日が始まりました。

しかし、そんな楽しい日々は長くは続きませんでした。癌が再発したのです。抗がん剤で苦しむオカンの姿を真正面からとらえ、描写します。さすがのオカンも抗がん剤の苦しさには耐えられず、抗がん剤治療を諦めます。医者は残された時間をボクに告げます。そして、4月1日に珍しく雪の降った年、病室から東京タワーの見える病院でオカンは息を引き取ります。

映画はオカンの死後も、もう少し続きます。その部分は、ご自身でご覧下さい。どこにでもある普通の人々の物語だからこそ、楽しさも、悲しみも自分の手元に引き寄せて体験できる映画だと思います。

僕も、母を実家にひとりで残してきていますが、考えさせられる作品でした。

蛇足;ちなみに僕も子供の頃、この主人公と同じく「まーくん」と呼ばれていました。

★5つ