「いらっしゃいませ」

 

「今日はよろしくお願いします。」

 

ここは会員制の鮨屋「鮨 光」。会員制の鮨屋といってもここは本当に限られた日本・世界のセレブのみが会員になれる、まさに超のつく最高級の鮨屋なのだ。会員になるためには厳しい審査を経なければいけない。一般庶民にとっては到底手の届かない鮨屋なのだ。聡太の実家は日本でも有数の財閥をルーツとし、大谷トラストグループ会社の創業者一族なのだ。今回は聡太の両親がこのお店の会員であり、その紹介で、東京大学の合格祝いを兼ねて家族でこのお店で食事をすることになったのだ。

 

「なんか緊張します。」聡太もこれまで両親や親族に連れられてさまざまな高級なお店に行ったことがあるが、このお店は初めて、しかも、超のつく高級鮨屋ということで、さすがに緊張気味である。

 

「そんな緊張にしなくても大丈夫だよ。楽しんでね。」店主の山辺さんが優しく聡太に話しかける。

 

このお店の最大のウリはなんといっても最高級の鮪。世界一の鮪仲卸業者であるやま幸さんが選んだ最高級の鮪が食べられるのだ。もちろん雲丹とか海老とか他の食材も最高級の食材ばかりで、まさに夢のような時間が過ごせるのだ。

 

「今日の鮪は本当に良いですよ」そう言って供された鮪は突先・赤身・ヒレ下・血あいぎし・蛇腹・中トロ・大トロ・頭肉の漬け・鉄火巻き・ネギトロ巻きの各種。

 

「うまい、もうめちゃくちゃ美味いです。こんなの食べたことがないです。」最高級の鮪に大の鮪好きである聡太も興奮を隠しきれない。

 

さすがに。本当に美味い。」そうかみしめるようにコメントしたのは父親であり、大谷トラストホールディングス社長の茂。聡太の最大の理解者であり、名家の生まれながらも、聡太がここまで数学・プログラミングの分野を極めることができたのも茂の理解があってのことだ。

 

「雄太も聡太も本当に凄い、誇りだ。」

 

 

「いやいや、聡太のほうが凄いよ。」そう言ったのは兄の雄太。実は兄の雄太は今年東京大学経済学部を首席で卒業。簿記1級など、数々の資格を取得、こちらも聡太同様MENSAの会員になっているのだ。そして大学卒業後、満を持して大谷トラストホールディング社に入社するのだ。そして実は両親もMENSAの会員、家族みんなでMENSAの会員なのだ。

 

「いやいや、兄ちゃんのほうが凄い。簿記とか宅建とか無理だよ。」聡太は謙虚に答える。今日は聡太の大学進学祝い・雄太の社会人デビュー祝いを兼ねての食事だったのだ。

 

「本当においしかったです。ありがとうございました。」最後のデザートを食べて大満足、神の体験ができたと聡太も夢心地だったのだ。

 

「また来てね。」山辺さんが聡太に語り掛ける。

 

「また来ます。このお店の会員にふさわしい人間になれるようにという目標ができました。今日は本当にありがとうございました。

 

こうして大谷家の贅を尽くした食事は幕を閉じたのだった。

 

「ごはんにしよう」

 

「うん。」

 

「今日は自分の好きな鮪がたくさん入ってるの買ってきたから」

 

「スーパーの鮪の寿司・・・一度でもいいから高級寿司店の寿司を食べたい」