10月に入り、10月の体育の日の前後の3連休、聡太の姿はシンガポールにあった。国際数学オリンピックで知り合ったシンガポールの数学学会の招きで、数学の研究の発表をすることになったのだ。現地の空港に到着すると、そこから英語でずっと会話をする。シンガポールの高級ホテルに宿泊、関係者と会食、そして大勢の教授や学生の前で発表。自身の数学オリンピックの経験から始まり、現在の研究内容までを発表したのだった。

 

帰国後はメディアの取材を受けながらも、あい変わらずの学生生活を送るのだが、その間をぬって軽井沢へ。軽井沢の唯一無二の超名店のレストランできのこメインの秋のコースメニューを家族とともにいただくのだ。

 

「今日はまたよろしくおねがいします。楽しみにしてました。」

 

「春以来ですね、またよろしくお願いします。」

 

すっかりこのお店の店主とは家族ぐるみの付き合いになっていて、今回特別にこの店主の子供に聡太が数学の講義を行うことにもなっていたのだ。

 

まず最初に出されたのは野ブタの前足から作られた生ハムに鱒茸と呼ばれるキノコを焼いたもの。この秋のメニューはきのこといっても、まず一般的には流通していない珍しいきのこばかりなのだ。店主自ら山に分け入り、命がけでとってきたきのこを最高の料理に仕立てるのだ。

 

そして珍しいきのこの盛り合わせ。サンゴ茸にシャカシメジなどの市場に流通していないきのこばかりを大葉で和えた麺とともにいただく。

 

初産の卵で作った茶碗蒸しの上にはまるでスーパーマリオに出てくるキノコのような大きさのヤマドリタケとヌメリイグチが。

 

「これ、めちゃくちゃおいしいです。シンプルで余計な味付けしなくても凄くおいしいです。」

 

きのこだけでもう完成している味。

地元産の軍鶏のローストに、天竜川産の子持ち鮎をこれまた地元産の100%のそば粉のクレープで包み、上にはタマゴタケと自家製の発酵バターをのせ、栗入りのクリームをかけて焼き上げたもの。イノシシ肉と香茸の春巻き・熊肉にきのこ・大根などの地元の恵みをたっぷり入った鍋。経産牛のハンバーグを細かく刻み、チョコ入りのパンに載せていただく。

 

さらには極めつけはハクビシンとたくさんのキノコが入ったビリヤニ。

 

「ハクビシン・生まれて初めて食べましたけど、おいしいです。」

 

さらに自家製の白樺の樹液から作ったシロップをたっぷりかけたかき氷で〆。

 

「本当においしかったです。ありがとうございました。またアマゾンの話もたっぷり聞かせてください。」

 

「ありがとうね。またアマゾンの話もゆっくりしましょう。」

 

そういって今回もお開きとなった。そして泊まるのが軽井沢にある大谷トラストグループ極秘の別荘。ここでも聡太は数学の研究を欠かさないのだ。