「それではこれより東京大学の入学式を開催いたします。」
入学式では大学総長・教養学部長の挨拶の後、各界から祝辞を経て、新入生の総代、つまり新入生の代表が挨拶をするのだが、毎年各類系の持ち回りで、今年は理科一類、新入生を代表して大谷聡太が挨拶したのだった。
入学式終了後、新入生は家族やクラスメートと記念撮影したり、思い思いに過ごす。聡太も父親の茂と母親の真由子とともに「東京大学入学式」の看板の前で記念撮影をしたり、東京大学理科一類の33組のクラスメートとともに写真を撮ったりしていた。
「うちの両親、聡ちゃんの両親に挨拶してる。」
碧がふと視線を別のところにやると、自分の両親が聡太の両親に挨拶をしている。さらに陽翔と勇希と裕也と伊織の家族も聡太の家族に挨拶をしている。もちろん聡太本人の実績もあるだろうが、両親も日本有数の富豪である大谷トラストグループの創業家一族であることも影響しているだろう。
こうして多くの知人に囲まれながら彼らの大学生活が幕を開けたのだった。
「やはり大谷聡太君、東大だったよ、新入生代表で挨拶をしていたよ。」
「よかった、ひとまず潜入成功だね。」
「そう。でこれからどうする?」
「まずは本当に大谷聡太君が"あの会社”とつながりがあるかだね。まあ同性で、実は関係ないって可能性もあるけど。今まで確かめる手段がなかったけど、今回大谷君と同じ大学に入れたから調べられる可能性が出てきた。後は成績。ちゃんと勉強しなさいよ。留年したら元の子もないから。」
「わかってるよ。」
「頑張って、また連絡ちょうだい。」
「うん。」
「お父さんのためにもなんとしてでも大谷君、大谷家に復讐しなければ・・・」
「わかってる」