「これより、一六大学の入学式を開催します。」

 

東京大学の入学式からさかのぼること数日前、一六大学なる大学の入学式が開催されていた。この一六大学というのは、この年に開校したばかりの新しい大学で、日本で初の数学専科の大学であることをウリにしている。入学案内のキャッチフレーズは「数学で世界を変える。」その言葉通りに数学好きのレベルの高い生徒を募集したのだった。が・・・

 

「まあ、こんなもんだよな。やっぱりな。今更新しい大学開校しても、レベルの高い生徒が集まらないわな。」そうぼやいたのは勅使河原悟。彼はこの一六大学の記念すべき第一期生の生徒としてこの大学に入学したのだった。とはいえ茶髪の学生も目立ち、いかにもいわゆるFラン大学風の大学かとなんか入学時から気持ちがなえるような状況であった。

 

「皆さん、ご入学おめでとうございます。この一六大学はこの春から新しく開校した新しい大学でして・・・」

 

こうしてこの一六大学の学長の話が始まったが、サイコロは1から6の目がある、まさに数字の基礎だから一六大学と名付けたとか、数字は美しいとかフィボナッチ数列だの確率だのピタゴラスの定理だの定説だのいろいろ話が脱線しまくり、学生たちもうんざり、ざわざわ、もうヤジが飛びそうなところで終了した。

 

「まあ、あの学長らしいな。」悟がつぶやく。

 

「それでは、新入生代表挨拶、新入生を代表いたしまして、山上哲郎君に挨拶をお願いしたいと思います。」

 

「山上哲郎?・・・どこかで聞いたことのある名前のような・・・」たまたま悟の隣に座っていた一人の男子生徒が思わずつぶやいた。

 

式の司会者からそう呼ばれた山上哲郎なる人物は、無事に新入生を代表してあいさつを行う。

 

「山上哲郎って、もしかしてあの子のこと?? 本当ならこんな大学に来るような人物ではないはずだけど・・・」