魔女と呼ばれた少女 - 悲劇の向こう | 39歳、KLC通ってます→41歳、再開しました→46歳、最後の移植

39歳、KLC通ってます→41歳、再開しました→46歳、最後の移植

2015年第一子を出産、2018年第二子出産。現在凍結胚移植のためklcに通院中です。

(この記事予約投稿するとき、間違って過去記事として一度アップしてしまった。いつものことならが通知いった方、ごめんなさい)


maoizm

内容に触れます。ネタバレはなしです。


「私はあなたを愛する自信がないの」


少女の台詞で幕が開ける。

明らかに十代の、まだあどけなさすら残る彼女のお腹は大きい。

台詞から察するに、望まない妊娠をしたようだ。


彼女の身に何が起きたのか?


ここからはこの少女、コモナの身に起きたことを、12歳から時系列に

彼女の口から語られるという形で、物語は進行します。


平穏だった村は、反政府軍の襲撃によって一変する。

まだ12歳だったコモナは、彼らに拉致され、自らの手で両親を銃撃するよう仕向けられる。

あまりに衝撃的な形で、物語は始まります。


まだほんの子供たちが、少年兵という形で、戦地に繰り出す。

自分たちが何のために戦っているのかさえ理解できないまま、彼らは戦火の中へ送り出される。

少年兵たちに自らの手で親を殺させるのは、彼らの精神を崩壊させ、

親元へ戻るという意志を失わせるためらしい。

つまりこれは、彼らがゲリラ兵として生きていくための通過儀礼なのです。

あまりにむごたらしい。これがコンゴの現状なのかと目を疑いたくなる。

(作中では語られこそしないが、本作の舞台はコンゴ民主共和国)


話を作品に戻して。

反政府軍に連行されたコモナはあることをきっかけに亡霊が見えるようになり、

それによって彼らの戦いを勝利へと導く。

「魔女」として崇められるようになったコモナだが、いつしか殺される運命にあると悟った彼女は、

何かと彼女に目をかけてきた少年兵・マジシャンと軍を抜け、逃避行を始める。そして・・



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この作品がユニークなのはアフリカの悲惨な現状に、

少女コモナと少年マジシャンの淡いラブストーリーが加わったり

コモナには、前述の通り霊が見えたりとファンタジックな要素が加わっていること。


二人が白い雄鳥を探して旅に出る様子や、森林の中でただじゃれ合うシーンなどの

映像がとても美しい。

そうしたシーンが美しいのは、おそらくそれがつかの間の儚い幸せであるからこそ、なのだろうか。



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このシーン、すごくぐっときた。


また、二人の逃避行先では、戦争など全く想起させない日常を営んでいる人たちが多く存在していたのも、ある意味驚きでした。

戦時中の国というと、あたかも全地域がきな臭い雰囲気に包まれているように思ってしまいません?

でもよく考えてみると、コモナのふるさとの村も、反政府軍が襲ってくるまでは平和な村だったんだよね。


コモナの身に起こったことは、わたしの日常からは想像もつかないことの連続で

でも何が起きても彼女は、ほとんど泣きもわめきもすることなく、淡々と現実を受け入れ、生きていく。

その姿は、心に重くのしかかる。

生きながらえるためには、そうせざるを得なかったのだろう。立て続けに起こるあまりに非現実的な現実に、正常な感覚など、麻痺してしまったのかもしれない。

しかし彼女は、それで終わらなかった。ついには自らの意志で、自らの人生を踏み出そうとするのです。


作中、反政府軍がどういった理念の下戦いを繰り広げているのかについては明確にはなりませんが、

唯一明らかなのは、彼らは「黒い石」を狙っているということ。

コモナがマジシャンに突きつけた唯一の結婚の条件が、白い雄鳥を捕まえること。

黒と白。そう言えば、彼女が見えるようになった霊も白。


ちなみに、マジシャンは独特の風貌をしているんですが、これはアルビノという先天性のメラニン欠乏症

のためだと、後で知りました。

アルビノの体には神秘的な力が宿ると信じられているそうで、そのせいで大量虐殺の憂き目に遭ったという歴史があるようなのです。

マジシャンもいわば、弱者だったわけなんですね。



天災も怖いし悲惨だ。だけど一番恐ろしいのは、やはり人間なのかもしれない。

こうした作品を観ると、改めてそう思います。


ただこの作品に関しては、目を背けたくなるような残酷な現実を、ひたすら声高に訴えるのではなく、

一少女の身に起こったこと、という描き方を貫いたことで、どんな環境に身を置いても、前を向いて生きようとする人間のもつ本質的なたくましさということの方が、より強く感じられました。

両親をはじめ、多くの奪われていった命。その失われていった命が、彼女が一歩踏み出す後押しをしているようにも、感じられます。


力強い生を強く打ち出し、また幻想的な描写を用いることで、

ただ戦争は悲惨だ的に終わってないのが、この作品のいいところだと思います。




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主演の少女、ラシェル・ムワンザは、コンゴの首都キンシャサの路上にいたところを

本作のキム・グエン監督によってスカウトされたということ。

演技未経験とは思えぬその存在感、前半の死んだように生きる表情、

一転後半の意志を感じさせる強い表情、様々な彼女の持つ顔に圧倒されました。

この作品で彼女は、ベルリン映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞しています。

これはアフリカの女性初の快挙だそうですよ。

また本作は、今年のアカデミーで外国語映画賞にもノミネートされました。

(ちなみに受賞したのは先日記事にした愛、アムール)



何が出来るわけでもないかもしれない、けれどもこうした現実があることもまた事実。

事実を知ることは、決して無意味なことではないと思う。

都内ではたった一つの映画館でしか上映されなかった、この作品。

こういう作品が、もっと多くの場所で上映されるようになればいいのに。


都内ではもう上映は終了しましたが、首都圏では神奈川、首都圏以外の地域も

今後随時公開されるようです、気になった方は、ぜひ。



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魔女と呼ばれた少女

原題:Rebelle(英題:War Witch)

監督:キム・グエン

出演:ラシェル・ムワンザ、セルジュ・カニンダ、アラン・バスティアン、ラルフ・プロスペール、ミジンガ・グウィンザ 他

字幕翻訳:日本映像翻訳アカデミー



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