"memur" と "işçi" | あぶくさぶく

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トルコ語あれこれ

"memur" と "işçi"

トルコの社会組織や状況には あまり詳しくないんですが、トルコの会社や 公務員組織には "işçi" と "memur" という 二種類の社員・職員が いるらしいです. 公務員の場合、日本では いくつかの階層(昔で言えば 上級職、中級職など、現在は 総合職、一般職など)に 分かれてはいるものの、いずれも 公務員としての 権利と義務が 一応平等に 与えられています. 非常勤職員など 他の<公務員>と 比べて 権利が制限されているようにみえる職員も いますが、全体のごく一部を占めるにすぎません.

一方、トルコでは KPSS(Kamu Personel Seçme Sınavı)と 呼ばれる公務員選考試験があり、"memur" になるには この試験を パスしないといけません. 有名な難関試験で 多くの学生や社会人が これを目指して 勉強しています. 日本との違いは 公務員試験・KPSS によらない職員が かなりの数いることです. 彼らは、通称でしょうが、"işçi" と 呼ばれています. もともと、"işçi" は 職員・労働者という意味なので、そういう意味で 使われることも ありますが、ここでは "memur" でない職員を指します. 実際の比率は 知りませんし、職種によっても 違うだろうと 思いますが、事務室で 事務の仕事をしている人たちのかなりの部分が "işçi" であることを考えると "işçi" 率は 相当高いように見えます. 恐らく 半数以上じゃないでしょうか.

問題は、"memur" と "işçi" の間に、<壁>と 大きな待遇の差が あることです. 例えば "işçi" では 地位が保証されておらず、いつリストラされるかもしれないそうです. 具体的な金額は わからないのですが、恐らく 給与にも相応の差が あることが 当然 予想されます. "memur" は 難関試験を受けて 得られる地位ですから "işçi" が "memur" に <昇進>することは できないだろうと思います. つまり、仕事を どんなに頑張っても 能力を示しても "memur" には なれません. こういう状況で 誰が仕事の質を よりよくしようと 思うでしょうか?

これは 公務員に限った話では ありません. ある24時間営業のスーパーの従業員(işçi)は、「おれたちは 24時間、土日も関係なく働かなきゃいけないし、労働時間も長い. Memur の連中は 9時5時だし、週末は 休みだから いいよな.」と ぼやいてました.

日本の評論家などが トルコの抗議行動について 説明していますが、こういう観点で 説明している人を みたことが ありません. 私は 抗議行動の、少なくとも 根っこの部分に この閉塞感が あるんじゃないかと 思ってるんですが.


タクシーム行きの路面電車 (イスタンブル、2005)

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