虹のゆきに咲く  姉妹店

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虹のゆきに咲くの姉妹店です!
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留美
痩せたね

もういいの

駄目よ

小百合だって
上杉さんが

もういわないで

小百合は強いのね

そんなことないよ

そうよね

うん



達夫さん

どうして
佐々木さんと違うの

何が

もういいです

小百合さん

今日の夜の12時にいつもの野原で待っているから
必ずきてほしい

はい
必ず行きます

わかった
待っているよ





達夫さん

小百合さん

僕もそろそろかな

私は留美のように強くはありません

じゃあ、僕は行ってしまってもいいのかな

そのようなことは聞かないでください
どうして、そのような悲しいことを聞くのですか
私の気持ちはわかってもらえないのですか

ああ、ごめん

そのために私をここに呼んだのですか
初めて後ろから抱きしめてくれた達夫さんは
どこにいらっしゃるのですか

ほら

見て

月のあかりにてらされて

あそこに

二つの花が咲いているよね

わかるかな

本当ですね

あの二つの花はどう見えるかな

近くに寄り添っていますね

僕は左の方の花なんだ

小百合さんは右の花だよ

あの二つの花になるためにここに来たんだ

月明りが少し邪魔だけどね

だけど、小百合さんの綺麗な花が見えるかな

透き通るような

でも、僕が左の花でいいのかな

私は月の明かりが見えてよかったです

達夫さんの瞳につつみこまれるのがわかるからです

私は右の花になれるでしょうか

いずれ左の花は消えていくくけど

また、必ず咲くからね

また、二つの花が咲くのでしょうか

ああ、一度は消えるけれども必ずいつか

二つの花になるよ

少なくとも今は二つの花だよ

はい

でも

花はひとつになるよ

はい

たとえ

短い時であれ

ひとつになるよ

月も恥ずかしいのかな

雲の中にかくれたよ

はい

小百合さん

はい

花はやわらかくて

優しかったよ

はい

花から音がきこえてきました

花も音がするのですね

そうだね

音が共鳴しあったね

花は花を待ちます

いつまでも

月はかくれていたけど

花の色はきれいだったな

花の優しい香りも

花の温かさも

すべて僕は花の世界へ行くことができたよ

私も花の世界につつまれることができました

今日は花のままでいよう

はい
 

 

お母さん

最近、遠い物が見えなくなってきたの

 

暗いところで勉強しているからじゃないの

 

留美

 

どうしたの

 

あの、黒板の字はなんて書いてあるの

 

小百合

あの字が見えないの

 

最近、急に目が悪くなったみたい

 

眼医者さんに行ってみたら

 

そうね

 

どうだった

 

それが原因がわからないって言われて

 

 

 

 

小百合さん

おはよう

 

おはようございます

 

なんだか、元気がないね

 

達夫さんには初めて打ち明けます

最近、急に目が悪くなって

達夫さんの顔も良く見えなくて

もう少し近づいてくださいますか

そうです

やっと、達夫さんの優しい顔が見えます

 

心配だね

小百合さん

野原に行こう

僕が手をつないであげるから

 

達夫さんが見えなくなくなるのが怖いです

 

大丈夫だよ

僕がついている

一時的なものじゃないかな

 

そうかもしれないですけど

達夫さん、怖いです

だんだん、見えなくなっていくのではないかと思うと

そうなったら

達夫さん、私のことが嫌いになるでしょ

 

そんなことはないよ

 

本当ですか

 

ああ、もし見えなくなっても

僕が小百合さんの目になってあげるよ

必ず見えるようになるから

約束するよ

 

ありがとうございます

 

そろそろ、帰ろうか

心配しないで

大丈夫だから

 

はい

 

 

 

 

 

上杉さん

小百合に渡して読みました

 

どうだった

 

小百合も会いたい

そう、言っていました

小百合のお母さんにも事情を話したから

会いに行って

 

ああ

ありがとう

留美さん

 

 

 

小百合さん

 

達也さん

 

会いたかったよ

夕日を見た野原へ行こう

 

でも

あの時のように手をつないでも

もう歩くことができません

 

大丈夫だよ

僕が背負っていくよ

ほら

背中に乗せてあげるよ

 

ありがとうございます

 

今、野原を歩いているよ

 

あの時みたいに夕日が見えますか

 

ああ、あの時と同じだよ

 

なんだか見えるような気がします

 

小百合さんの髪が首にあたって心地よいよ

柔らかい

 

達夫さん、重くないですか

 

大丈夫だよ

小百合さんの体が柔らかくて気持ちがいいよ

 

恥ずかしいです

 

最後に小百合さんの温もりを感じてうれしいよ

あの時と同じだね

 

はい

 

あの時と同じように二つの花が寄り添っているよ

野原に座ろう

 

はい

 

達夫さん

もう少ししたら出撃するのですね

 

ああ

明日から最後の特別訓練が始まるから

今日が小百合さんに会えるのは最後かな

このまま

時が止まってしまえばいいけど

でも、そういう訳にはいかないね

 

達夫さんが

私の元から去って

悲しいです

そのうえに

もう、周りは暗闇です

怖いです

 

小百合さん

僕が小百合さんの目になるって約束しただろ

覚えていないのかな

 

でも

無理です

 

約束は守るから

空からきっと守ってみせるよ

 

達夫さんの顔はここですか

 

そうだよ

 

そうですね

鼻が高くて

きりっとした輪郭

優しい目に唇

今、私には達夫さんの顔が見えます

最後に私の唇を優しくしてもらえませんか

 

ありがとうございます

 

あの時のように朝日が昇るまで一緒にいたいですけど

母が心配しますから

 

そうだね

でも、もう夕日も沈んだ

小百合さんを包み込む時くらいはあるよ

 

 

 

そろそろ、帰ろうか

 

はい

 

小百合さんと出会えてよかったよ

あの時の柿の味のように甘かった

いつも、お世話をしてくれてありがとう

 

私も達夫さんと過ごせて幸せでした

 

辛くなるから、縁側に降ろすよ

出撃したら、この家の上を通るから

それが最後のお別れかな

でも、遠い空からいつも見守っているよ

 

 

 

それでは、上杉少尉率いる部隊は出撃します

 

ああ、見事な戦果をあげてくれ

 

わかりました

 

 

 

今日が出撃の日ですね

特攻機の音がします

達夫さんの笑った顔も見えましたよ

 

達夫さん

 

 

 

そろそろ、空母が見えてきたな

準備してきたタオルで目を隠そう

 

神様

僕の目が届きますように

 

 

達夫さんの声が

聞こえました

目の前の庭に二つの花が見えます

あの時のようにきれいです

ありがとうございます

約束を守ってくださったのですね

今、柿の木に登っています

達夫さんの笑顔が見えました

遠い空で元気でいてください

私も頑張ります

 

 

 

 

 

 

上杉少尉

出撃日が決まった

8月10日だ

いよいよだな

 

はい

 

心構えはいいな

 

はい

 

 

怖いよ

お母さん

僕は果たして出撃できるのかな

駄目だな

こんな弱虫じゃ

本当に死ぬんだな

痛いかな

そうい間はないかな

あと2週間か

 

上杉さん

出撃日が決まったそうですね

 

ああ

8月10日だ

小百合さんは最近来ないけど

目が悪いのかな

 

そうなの

もう、周りがうっすらとしか見えなくて

学校も休んでいるの

 

そうか

もう、会えないのかな

 

そうかもしれないです

上杉さんも小百合さんもお互いに

 

なんとか

会えないものか

 

 

 

お母さん

怖い

もう、見えないの

お母さん、どこにいるの

 

小百合

ここよ

 

学校にも行くことが出来ない

私はもう

暗闇の中で生きていかないといけないの

 

小百合

きっと神様が助けてくれるわよ

 

そうかしら

達夫さん、今どうしていらっしゃいますか

会いたいです

でも、もう

達夫さんの顔を見ることは出来ないですね

 

 

 

小百合さん

大丈夫だろうか

小百合さんの目になってあげると約束したけど

いい加減なことを言ってしまったな

もう、暗闇に包まれているのだろうか

代わりに僕が

しかし、できないのか

そんなことじゃ駄目じゃないか

小百合さん

会いたいよ

何とかいい方法はないものか

 

 

 

留美さん

 

上杉さん、小百合のことが心配でしょ

 

会いたいけど

何かいい方法はないかな

夜空を見上げる度に

小百合さんのことを想うよ

 

そうね

もう、直接

家に行くしかないですね

 

そうか

そうしよう

 

 

 

すいません

特攻兵の上杉達夫といいますが

小百合さんに会いたくて参りました

 

小百合はもう目が見えませんが

 

かまいません

 

小百合

上杉達夫という方が見えられているよ

 

お母さん

帰ってもらえるように

伝えて

もう目がみないからと

お願い

 

わかったわ

 

上杉さん

せっかっく、お見えになられたのですが

小百合がもう目が見えないことを

気にしているみたいで

お会い出来ないと言っています

申しわけありません

 

そうですか

私は全く気にしていないのですが

そのことを伝えて頂けませんか

 

わかりました

 

小百合

上杉さんは気にしていないそうよ

 

駄目よ

こんな恥ずかしい姿を見せたくないの

 

そう、わかったわ

 

上杉さん

やはり会うのは難しいです

 

そうですか

わかりました

残念です

また来ます

そう伝えて下さい

 

わかりました

 

 

 

留美さん

小百合さんの自宅に行ったけど

会うことを断られたよ

 

そうですか

 

私が小百合に達夫さんの気持ちを伝えます

 

そうしてくれる

ありがたい

 

でも、私も小百合の立場になったら

恥ずかしくて会いたくないと思います

でも、上杉さんの気持ちもわかります

なんとか努力してみます

 

助かるよ

 

きっと会えますよ

 

そうだね

 

 

 

第8話

 

達也さん

ごめんなさい

怖いです

もう、目の前が真っ暗です

何も見えません

達也さんに会っても

もう、達也さんを見ることができないのです

恥ずかしいだけではなくて

悲しいです

お母さん、お手洗いに行きたい

お母さん、どこ

ここに柱があるから

あっちよね

痛い

支えるものがないから

立てないからどうしよう

 

小百合

ごめんね

お客さんが来ていたの

 

お母さん

お手洗いに行きたいの

 

大丈夫よ

お母さんが連れて行ってあげるから

 

ごめんね

 

いいのよ

 

もう、こんな姿を達也さんには見せたくない

でも、達也さん

会いたいです

 

 

 

上村少佐

南大尉が率いる部隊は見事な最後でした

しかし、残念ながら

 

そうか

わかった

また桜が散っていったか

 

 

 

僕もあと2週間後に出撃か

途中で空母に撃ち落されるのか

そう思うと

不安だよ

怖いよ

だけど、それより

小百合さんに会いたい

残り2週間しかないから

せめて一度でも会いたい

留美さん

小百合さんはどのような感じかな

 

やっぱり

会いたくないと言っています

私も小百合の姿を見て

小百合の立場になったら

そう思います

 

そうか

もう、会えないまま

出撃するのか

留美さん

申しわけないけど

手紙を渡してもらえないかな

 

わかりました

 

手紙で僕の気持ちを伝えるよ

小百合さんに渡して

読んで伝えてもらえないかな

 

はい

 

 

 

小百合さん

どうしたのかな

柿の木の下で出会った時の元気がないじゃないか

あの時にスカートの下が見えていたときの方が

よっぽど恥ずかしいよ

今、小百合さんに会って

小百合さんの姿を見ても、小百合さんのままだよ

ただ、ただ

小百合さんに会いたい

それだけしか、頭にない

僕も後、2週間したら出撃だよ

もう一度会って

小百合さんの優しい笑顔が見たい

これだけ、お願いしても駄目かな

小百合さんに会えずに出撃する方が悲しいよ

どうか、最後に小百合さんの笑顔をみたい

 

 

 

留美さん、この手紙を渡してくれないかな

 

わかりました

 

 

 

小百合、留美よ

 

どうしたの

 

上杉さんから手紙を預かっているの

今から読むから聞いて

 

留美、辛いよ

 

小百合

私も軍法会議で裸になったでしょ

あれほど、恥ずかしいことはないんじゃない

上杉さんは

小百合にとても会いたがっていたのよ

だから、聞いて

 

わかったわ

そうなの

私も会いたい

そうよね

会わずに出撃したら

私も悲しい

留美、達也さんに会いたいと伝えて

 

わかった

 

 

 

 

佐々木少尉
本日より別部隊への異動とする

はい、上村大尉殿

留美ちゃん
別部隊になってさ
兵舎が変わるけど
仕方ないね

どうして
黙っているんだよ

佐々木さん
大嫌い

留美ちゃん
待って

上杉
留美ちゃんをよろしく頼む

わかりました

留美
また
部隊が変わって戻ってくるわよ
泣かないで

今日からここにきた北野だ
よろしく頼む

はい、北野大尉

よろしくお願いします

お前たちが当番か

はい

お前、可愛いな
名前は

留美といいます

よし
俺の肩を揉め

はい



小百合

どうしたの

佐々木さんと毎日会っているの

そうなの

うん

よかったね

でも、悲しくて

そうね
でも北野大尉がいやらしいね

うん、でも
佐々木さんがいるから
我慢できる

馬鹿野郎
なにしているんだ

北野大尉
叩かないでください

お前みたいな気のきかない女は
このくらいしないとわからないんだよ

留美
大丈夫

兵舎の中ではまだいいの

え、どういうこと

ううん、いいの
佐々木さんがいるから

私に話して

いいの




おい、留美
お前は佐々木と交際しているみたいだな

いや、俺は昨日みたんだ
お前たちが抱き合っているのを

ちがいます

いや、ちがいます

じゃあ、あれは佐々木がお前を犯したのか

いえ、違います

女学生と交際は禁止のはずだぞ
しかも、佐々木はお前を犯したんだな

違います

じゃあ、交際しているのか

違います

わかった、俺も大尉として軍に報告しなければな

やめて下さい




大丈夫
留美

どうしよう
私と佐々木さんが軍法会議にかけられるの



どうして

佐々木さんが私を犯したと

北野大尉が軍に報告して
私は大丈夫だと思うけど
佐々木さんが

佐々木さんがどうしたの

なんらかの罰を受けるかもしれなくて

ええ

どうするの

私が説明する
交際を認めるの

でも

だって仕方ないじゃない

そうね
でも、留美もなんらかの罰を受けるのよ

いいの
もしという時は

もしって

いいの
小百合




今から軍法会議を始める

北野大尉、説明をしなさい

はい、少佐

実は佐々木大尉とここにいる女学生が
不謹慎な行為をしていたのを目撃しました

不謹慎な行為とはどういことだ

裸で抱き合っていました

なに
女学生とはまだ子供ではないか

そうです
ただ、女学生は嫌がって
佐々木少尉が無理やり行為をしつづけておりました

なに

それは強姦ではないか

そうとしか見えませんでした

そうか、佐々木大尉
それとも女学生が求めてきたのか

いえ、違います

それでは、お互い合意か
それともお前が無理やり行為を強制したのか
どちらにしても、二人とも何らかの処分をしないとな
女学生はまだ子供だから謹慎だが
お前は降格だな

いえ、私から求めたのです

なに
お前はまだ子供ではないか
謹慎じゃすまないぞ

いえ、違います
私が無理やり行為を強制しました

そうか
それでは、佐々木少尉は銃殺とする

違います
私は佐々木少尉を愛しています
悪いのは北野大尉です

なに
どうしてだ

これを見て下さい

やめたまえ
すぐ服をきなさい

いえ
私は北野大尉から行為を強制されていました
私の体の全てを見てください
いつも暴力をふるわれているのが
分かってもらえると思います
心の傷もあります


わかった、早く服を着なさい

北野大尉、それは本当か

いえ、ちがいます

佐々木少尉は私の体に傷薬をぬってくれていただけです

そうだったのか
わかった
北野大尉は銃殺処分とする
しかし、佐々木少尉とそこの女学生は交際をしていたのだな

いえ、私の片思いなのです
佐々木少尉は優しくしてくれただけです

そうか

いえ、違います
私もこの女学生を愛しています

なに

お前はこの女学生を愛しているのか

はい

わかった
聞かなかったことにしよう
お前も散りゆく桜だからな
今後もこの女学生に優しくしてあげろ

はい




留美

小百合

泣かないで
良かったじゃない
でも
辛かったね

うん
でもいいの
佐々木さんのためなら
なんでもできる
でも
それより

うん
仕方ないじゃない

嫌よ




留美ちゃん
ごめんね
ごめんねじゃすまないね
あんなことまでさせてしまって

いいの
佐々木さんが
何もおとがめを受けなかったから
私はなんでもできる

でも、それより




ついにかな

嫌よ
佐々木さん
行かないで

御国のために
そうだろ



そんなことを言ったら駄目じゃないか
留美ちゃん
また肩を揉んでほしいな

嫌です
佐々木さんがいかななら
揉んであげます

そんなことを言わないでくれよ




上杉
いよいよ
明日だ
お前より先になったな
本来なら一緒だったはずだけどな
小百合さんとは

いえ

まあ
わかっている

佐々木少尉こそ

俺は
まあ、いいだろう

はい

ご武運をお祈りします

わかった




留美ちゃん
いよいよ
今日でお別れだね

嫌です

いつまで
そんなにわがままを言うんだ

嫌です

ごめん
では

佐々木少尉、ご武運を

わかった

整備も整いました

では
佐々木少尉
桜として散ってくるのだ

はい、少佐

あれ、留美ちゃんがいない
最後に手をふるくらいしてくれよ

よし、行くぞ

う~ん

佐々木さん

留美ちゃん

留美ちゃん
ここに来たら駄目だよ

佐々木さん
いかないで

少佐
あの女学生が
走って追いかけています

見なかったことにする

佐々木さん

留美ちゃん

ぶ~ん

どうして

佐々木さん



留美
泣かないで
でも
泣かないでと言っても無理よね
私も

佐々木さんはいつも
傷ついた私の体を癒してくれたのよ
小百合
わかる
この気持ちが

うん、わかるよ
わかるよ
私も

でも、佐々木さんは運の強い人だから
だって私が言って
おとがめを受けなかったでしょ
きっと生きて帰ってくるの
兵隊さんに聞いてみる

留美
駄目よ
やめた方がいいよ

いいの
大丈夫だから




兵隊さん

ああ、君は

佐々木さんは生きて帰ってきたのでしょ

聞かなかったことにする
君を非国民にしたくない

いいの
教えて
どうして黙っているの

だから、聞かなかったことにすると言っているじゃないか

いいの
非国民でもいいの

そうか
佐々木少尉は途中で敵艦隊に見つかり打ち落とされたそうだ
君がどうしてもというから
教えただけだ
聞こえなかったことにする
これ以上言うな

そんな
どうして
佐々木さん
私を一人にするの

留美ちゃん

佐々木さん
どこ
佐々木さんの声が

幸せになるんだよ

佐々木さんの声が
佐々木さん
 

 

 

第3話 野原にて

 

お母さん

お母さんってどうしたの
野原で横になって

ああ
留美ちゃんか

佐々木さん
元気がないよ

いや
頭が痛いんだ

私も横になろう
いいでしょ

ああ

佐々木さん
お母さんが恋しいの

違うよ
たまたま
呼んだだけだよ
俺は独り言が多いからさ

そうなの

ああ

佐々木さん
あっちを向いて寝てみて

どうして

いいから

ああ

ほら、気持ちいいでしょ

ありがとう
肩をもんでくれているんだね
俺もさ
母の肩をよくもんでいたよ
肩こりだったからさ

そうなの

ああ

もういいよ
手がつかれるだろ

佐々木さん
泣いているの

いや
気のせいだよ

だって
泣いている音が聞こえるよ

だから
気のせいだよ

じゃあ
もう少し
揉んであげる

もういいよ

いいの
それとも
私がそばにいるのが嫌なの

そんなことはないよ

だったらいいでしょ
そうだ
じゃあ
私が反対になるから
佐々木さんが揉んで

まだ君は若いだろ

いいの揉んでほしいの
佐々木さんのお母さんになってあげる

もういいよ

佐々木さん
怒ったの





小百合さん

上杉さん

達夫でいいよ

じゃあ達夫さん

そこで何をしていたの

ここの野原から見える夕日はきれいなの

そうか
本当だね

小百合さんもきれいかな

からかわないでください

いや
本当だよ

僕は18歳だから
あまり小百合さんと歳はかわらないよ

そうなんですね
上杉さんは恋人はいらっしゃるのですか

いや

そうなんですか

ああ

僕は女性と付き合いをしたことがないんだ

そうなんですか

ああ
恥ずかしいな
こんなことを言うのも

小百合さんは

私も男性の方とお付き合いはしたことはありません

そうか

僕じゃ駄目かな

帰ります

小百合さん
待って

いえ

僕の命令でも駄目なのかな

命令なら仕方ありません

そこに立っていて
こっちを向かなくていいから

どうしてですか

いいから
そこでじっとしていて

はい
でも、どうしてですか

いいから

駄目です
後ろから手を回したら
恥ずかしいです

初めてなんだ女性を抱きしめたのは

駄目です

僕が嫌なのかな

そういうわけではありません

夕日がきれいだね

はい

小百合さんの髪が夕日に染まっているよ

恥ずかしいことを言わないでください

そんなことを言うと
僕がはずかしいじゃないか

ごめんなさい

きれいな髪の香りがするよ

それはきっと風のせいです
風のかおりです

小百合さん
こっちを向いてくれないかな

駄目です
帰ります

小百合さん


 

第4話 夕日が時をとめる

 

おはようございます

おはようございます

あれ、今日は
おはようじゃないのか

なんとなくです

そうか
昨日は肩をもんでくれて
ありがとう

どうして、私の肩を揉んでくれなかったのですか
私に魅力がないのですか

怒っているのかな

はい

ああ、ごめんな
恥ずかしかったのかな

佐々木さんも恥ずかしがり屋さんなんですね

どうだろう

佐々木さん
私のことをどう思っていますか
可愛いですか
そうでもないですか

いや、可愛いよ

良かった
それなら許してあげる

じゃあ、今、肩を揉んでください

駄目よ留美

いいの
小百合

揉んでくれないのですか

ああ、わかったよ
こうかな

そうです
そこから下は駄目ですよ

ああ、わかっているよ

でも
佐々木さんならいいですよ

駄目だよ

恥ずかしがり屋さんなんですね
佐々木さんは

からかうなよ

ふふふ

私に魅力がないのですか

いや、そういうわけでは

やっぱり恥ずかしがり屋さん

ふふふ



僕は小百合さんから揉んでもらおうかな
いいかな

はい

そこから下は駄目だよ

いえ、揉みませんから

ははははは




小百合

なに

佐々木さんとお別れする日が来るのかな

駄目よ
そんなことを言ったら
御国のためにって
留美が言ったでしょ

そうだけど
なんだか
悲しくなっちゃった

そんなこと言わないで

小百合は上杉さんのことをどう思っているの

なんとも思っていないよ

留美は佐々木さんのことはどうなの

私は佐々木さんが大好きよ

でも、お付き合いしたら駄目よ

そうなのかな

留美

うううう

留美




おはようございます

あれ
留美ちゃん
元気がないよ
挨拶もないし

ごめんなさい
上杉さん
昨日寝てなくて眠いの

そうか

佐々木少尉
留美ちゃんは返しましょうか

佐々木少尉
佐々木少尉
どうしたんですか

俺も寝不足だよ

二人とも元気がないのか

上杉さん

どうしたの
小百合さん

ちょっと外で話しませんか

ああ、いいよ
どうしたの

どうも、留美が最近様子がおかしいの

そうか、佐々木少尉も様子がおかしんだよな
僕の様子はおかしくないかな

どうして、そのようなことを聞くのですか

いや

私の様子はおかしくないですか

僕の方がおかしいよ

そうですか
それだけですか
達夫さん
今日は前を向きます

夕日がきれいだね

それだけですか
私のことをどう思っていますか

夕日がきれいだね
僕の背中に乗って

どうしてですか

いいから
ほら
少しこうして歩こう

何か言ってください

恥ずかしいことを言わせるなよ
それが僕の答えだよ

達夫さん
どうして、私の方を向いて言ってくれないのですか

夕日がきれいだね

達夫さん

夕日がきれいだね

もうここで降ろしてください

いや、小百合さんの家まで送っていくよ

そんな恥ずかしいことはやめて下さい

いや
送っていくよ

駄目です

夕日がきれいだね
小百合さんがきれいだね
これが僕の気持ちだよ

夕日と同じ色だったよ
小百合さんの唇は

達夫さん

小百合さんはきれいだね
夕日よりも
きれいだよ

もう、恥ずかしいから
離してください

このまま
時が止まってしまえばいいのにな
いつか

達夫さん

それ以上言わないでください

それ以上言わないでください

お願いします

仕方ないじゃないか

だから

言わないでください

私も明日は様子がおかしいと思います

僕もだよ

今日だけは時を止めてあげるよ

はい