もうずいぶん昔の話だが、義足になって困ったことのひとつに「トイレ探し」があった。なぜなら和式トイレで用を足すことは義足の構造的にも不可能だったからだ。

私が障がい者になった1980年代、公共的な場所のトイレは未だ和式トイレが主流。コンビニも黎明期でいまほど店舗が無かったし、トイレを貸してくれるコンビニは殆ど無かった。なぜなら当時のコンビニは客用のトイレではなく店舗奥の従業員用。バックヤードにトイレがあるため貸してくれたら奇跡的だと感じるくらいだった。

運良くトイレを貸してくれても和式トイレなら断念するしかなかったし、そうなるとただひたすら便意を我慢して他を探すしかない。そのため次第に外出することが億劫になっていった。(幸い漏らすことは無かったが、結構やばいときは多々あった・笑)

私の「洋式トイレがどこにあるのか探す苦労」はコンビニの普及と社会のバリアフリー化と共に解消されていったが、トイレ探しでまったく困らなくなったのはここ10年くらいではないかと思う。

で、なんでこんな話をするかというと、今日、重度の障がいを持つお子さんとお母さん5組の方々と岐阜市内で情報交換する機会があったのだが、お母さん共通のお困りごとに「おむつ交換台」の困り事を聞いたからだ。

近年は多目的トイレが普及しているが、多目的トイレに設置されているおむつ交換台は主として赤ん坊や小さなお子さんを想定した小さめのものである。これらの多くは制限荷重が小さいため、大きなお子さんの場合は壊れてしまう可能性があるし、そもそも寸法が足らない。となると中学生や高校生くらいの大きなお子さんの場合、おむつ交換ができないということだが、ショッピングモールやサービスエリアの多目的トイレは総じて小児用が主流であり、総合病院や公共施設でさえ同様のありさまなのだそうである。

大きなおむつ交換台の必要性は少数意見かも知れないが、当時の自分のトイレ探しと便意をガマンし続けた苦労とを重ねあわせると、便利な世の中になったとはいえまだまだ不便なことはあるものだと知った。

誰もが安心して気軽に外出できるようなトイレが普及することを願うばかりである。

(写真はメーカーサイトからお借りしました)