出会いと別れの時期ですね。
この時期は引っ越しシーズンです。
アパートの需要がもっとも増える時期ですが、あなたのアパートは無事に満室になりましたでしょうか。


■アパート経営のリスク

アパート経営にはいくつかのリスクがあります。
※リスクとは、損失を被る危険性や可能性のこと

例えば、
・空室のリスク
・家賃が下がるリスク
・退去時の修理費負担のリスク
・修繕費負担のリスク
・金利変動リスク
・デッドクロスに伴うリスク

アパート経営とはこうしたリスクに対応しながら経営していくことですが、今回は「家賃が下がるリスク」について書きたいと思います。



■家賃が下がるのは相場の影響ではあるが・・・

突然ですがアパート経営している方へ質問です。
最近、家賃を値上げしたことはありますか?

ないですか・・・そうですよね。
家賃を値下げすることばかりですよね?

大家さんに「なぜ家賃が下がるのかご存じですか?」と聞くと、ほとんどの大家さんは知りません。

「いやいや直野さん、知ってますよぉ。家賃相場が下がっているからでしょ?」と言われるかもしれませんが、これは正解であり不正解でもあります。

確かに相場が下がればアパートの家賃は下がります。でも、なぜ相場が下がるのかは知らないのではないでしょうか。


■家賃が下がる3つの理由

家賃相場が下がる原因は主に次の3つだと考えています。

①需給バランスによるもの
②商習慣によるもの
③一括借上や家賃保証によるもの

順番に説明しますね。

①需給バランスによるもの
 アパートはもはや完全に余っています。昨年7月の日経新聞でも発表されていましたが、日本国内には820万戸の空き家があり、全住宅の13パーセント以上を占めています。
 このうち「賃貸用の住宅」は半数を占め、戸数にして430万戸、5年前と比べて17万戸も増加しました。
 その一方で相続等で空き家となっている空き家が320万戸もあり、多くは一戸建てだと言われています。またその数は5年前と比べて激増し50万戸も増えています。これらの空き家に問題を感じた政府は空き家対策に本腰を入れはじめ、そのひとつ「空き家対策特別措置法」が施行されましたが、この法律により今後は空き家が格安で売りに出されたり、賃貸住宅として市場に出てくることになります。
 また今年から相続税の基礎控除が6割に下がりましたが、その影響で新築アパートが増えはじめていますから、これも空き家の増加に拍車がかかる要因になると思われます。そもそも人口が減少し、家を必要とする人が減る一方だからアパート需要も同時進行で減ります。
 「空き家という名の在庫」が大量に増えれば家賃の値下げに向かうのは自然です。

②商習慣によるもの
 不動産業の主な収益は仲介手数料。多くの方がご存じのとおり、仲介手数料は契約しないともらえない成果報酬です。つまり借りてもらえない限り、売上にはならない。
 先の①にも書きましたが、空き家が増えた現代では完全に「借り手市場」だから「家賃を下げてくれたら借りる」と値引きを求める入居者は多くいます。また営業マンも契約の切り札として値引きを提示することも普通に行われています。
 家賃相場は「成約した家賃のこと」ですから、値下げすれば相場が下がるのは当然です。

③一括借上や家賃保証によるもの
 アパートを建築したいが経営に自信が無い方にとって、一括借上や家賃保証はとても魅力のあるしくみですが、これも相場を下げる原因になっていると考えられます。一括借上は入居者が居ても居なくても毎月家賃が入りますが、借上げしている側から見れば入居者が居ても居なくても家賃の支払いを肩代わりしなければなりませんから、常に満室の状態をつくり出す必要があります。
 空き家なら家賃を肩代わり(=経費・損失)、満室なら家賃収入(=売上・利益)だから、とにかく入居者を見つけることが求められます。
 一括借上や家賃保証は「肩代わりを保証」していますが「家賃の額」は保証していませんので、入居者を見つけるために家賃を値下げしなければならない、といった流れにならざるを得ません。その結果、家賃相場に影響することになります。


■家賃相場が下がる本当の理由とアパート経営のこれから

結論になりますが、家賃が下がる本当の理由は「オーナーがアパート経営をしていないから」だと思います。需給バランスのような要因は個人の経営努力ではどうしようもないことも事実ですが、多くの場合、「商品価値と価格が見合っていない」のです。

それもそのはずで5万円の価値しかないものを6万円で売っても売れない。
逆に7万の価値があるものを6万円で売れば売れます。

あなたのアパートはどうですか?

商品価値を上げる努力を人まかせにしている以上、相場下落の波に飲まれるのは避けられないのです。

経営がうまく行っている大家さんは、勉強もしているし工夫もしています。
例えば物件を常に清潔に保つのは当然として、エントランスに絵や花を飾るとか、工具や空気入れを常備しておくとか、入居者の声を聞いてテナントリテンションに務めるとかして経営努力しています。
(※テナントリテンションとは長く住んでもらう工夫のこと。これはまた別の機会に事例を交えて書きたいと思います)



これからのアパート経営はホテル経営の感覚が求められていきます。
入居者を顧客として位置づけ、持てなして、大家さん自らが考え、顧客満足を追求して実践することが不可欠となっていきます。

この業界の変革は始まったばかりですからいまからでも遅くはありません。
勉強して行動しましょう。