「空き家対策特別措置法」の施行を機に空き家相談が増えています。
相談でよく出る質問に「借上げ」がありますが、今回は借上げについて仕組みの説明と、私の考えを書いてみたいと思います。
■借上げのしくみ
借上げとは、家を貸したい方(=以下、オーナーと呼ぶ)が、私のような事業者に家を借りてもらい、事業者はオーナーに成り代わり入居希望者を見つけて貸すことをいいます。
要するに「又貸し」ですね。
オーナーから見た借上げのメリットは「入居者の有無にかかわらず家賃が入ってくること」です。
万一空き家になっても事業者から定期的に家賃が支払われるので安心ですよね。
他方、事業者は、入居者がいてもいなくてもオーナーへ家賃を払い続ける必要があります。
つまり借上げとは、本来オーナーが負うべき空室リスクを事業者が肩代わりして運用すること。
事業者は空室リスクを軽減するため、入居者から受け取る家賃から一定額を差し引いてオーナーに支払うようにします。
例えば家賃10万円、85パーセント(注)の借上げ家賃で借り上げる場合、以下のようになります。
①入居者は家賃100,000円を払う
↓↓↓↓↓
②事業者は15,000円を差し引く
↓↓↓↓↓
③オーナーの手取りは85,000円に
(注、パーセントは事業者により異なります)
事業者は15,000円を毎月積み立てて空室に備えますので、積み立てが増えれば増えた分、入居者が出て行ってもオーナーへ家賃を払い続けられるようになります。
具体的に見てみましょう。
例えば定期借家契約で3年間貸したが2年で入居者が出て行ったケースを見てみます。
事業者は毎月15,000円を受け取っていますから2年で36万円を得たことになります。
36万円÷8.5万円=4.2ヶ月だから、空室が4ヶ月続いても事業者はオーナーに家賃を払い続けることができるというわけです。
もし3年間、一度も空き家にならなければ事業者は54万円を受け取ります。
家賃にして6.3ヶ月分です。
あなたがオーナーならこれをどう感じますか?
■広い戸建ての賃貸は空室になりにくい
戸建ての賃貸住宅はアパートなど集合住宅と異なり、入居期間が長期化しやすく、一節によれば10年近くは住みつづけるといわれています。(3LDK以上の間取りの場合)
なぜかというと、アパートは隣室や上下階に気遣いが必要だが戸建ては不要なので快適さが違います。
戸建てはアパートより広いので、部屋数や広さの問題が起きません。
だから引越し動機にはつながりにくい。
そして義務教育のあいだは学校区を変えたくないので定着しやすいといえます。
戸建ての賃貸は、引っ越したくなる要因がアパートに比べて少ないのです。
そうなると、そもそも空室になりにくい戸建てを借上げしてもらう意味はないかもしれませんね。
それに定期借家契約は、契約期間中の途中解約はできません。(これ、意外と知らない方が多いようです)
例えば3年定期借家契約なら3年間は解約できない。
だから2年で空き家になるのか?といえばその可能性はとても低いと思います。
定期借家契約で借主が無条件に解約できるケースは、転勤、療養、親族の介護などのみ。
解約できるのは「やむを得ない事情がある場合」だからです。
ただ単に引っ越したいなどの自己都合解約は貸主が困ってしまうのでできないことになっています。
■まとめ
いかがでしたか?
オーナーは事業者に借上げてもらえば、家賃が毎月いただけるので、ローンが残っている方には有効だと思います。
(ただし、家を貸して良いか銀行に確認されることをおすすめします)
借上げではなく普通に貸せば、事業者に差し引かれる分がないのでその分、オーナーの収入は増えることになります。
そこで私がオススメしているのは、そのぶん家賃を低めにして貸すことです。
だってそのほうが入居者に喜んでもらえるし、長く住んでもらえるから。
それに家賃が安ければ空室になりにくくなる効果が期待できますからね。
私はこの考えかたをオススメしています。
なお借上げてもらう場合には、耐震診断や内外装の改修に多額の費用がかかることもありますので費用対効果も考えましょう。
まとめとしては、
借上げを使った方がよさそうなのは
・ローンがある(金融機関に要確認)
・空室リスクを気にしたくない
・毎月家賃がもらえる安心感が欲しい
借上げを使わなくても良さそうなのは
・ローンがない
・改修費にお金をかけたくない
・安めの家賃で貸しても構わない
こんな基準で考えてみれば良いのではないでしょうか。