不動産貸付業という職業がある。


職業と呼べるか否かは甚だ疑問だが、以前公開されていた長者番付でも高額納税者の職業欄にそうかかれていることもたくさんあったので、職業のいちジャンルなのだろう。


この職業、いわゆる家主とか大家という方がこれにあたる。


この業界、とりわけ居住用の賃貸不動産を保有する家主は様々な課題に直面しているといわれている。


最近では、京都地裁で起きた更新料無効判決。


居住用賃貸不動産(いわゆるアパート)は賃貸借契約期間(だいたい2年か?)というのが多いが、契約が切れる時点で引き続き居住する場合、契約を更新しなければならない。


その場合に入居者が家主に支払うお金が更新料だ。


更新料は礼金と同じで地域的な慣習があり、金額も様々。(更新料を徴収する習慣の無い地域もある。)


これを徴収することは消費者に一方的に不利益だからダメとなった判決である。


また、原状回復にも家主にとって頭の痛いルールが整備・波及しつつある。


退去する際に、借りた時点と同様に元に戻すことを原状回復とか現状復旧とか言うのだが、これにかかる費用はだいたいが敷金(保証金)でまかなう。

これまで原状回復費用(=修理代金)は全額、借りた人の負担となるのが一般的だった。


これが消費者に不利であるとし、自然に汚損した箇所の補修は家主負担にするという流れに変わった。


どこまでは自然損耗なのか、どの程度までが入居者の責任なのか、なかなか判然としないため揉めることも多いのではないだろうか。(一応、ガイドラインがあるらしいが)


これ、「東京ルール」と呼ばれていて、すでに一般的になりつつある。



話は変わるが、私は過去にこんな経験をしたことがある。


私自身も何度かアパートを借りた経験があるが、いまから12年くらい前、アパート(一戸建て住宅も建築する大手住宅メーカーのアパート)を借りたときにこんな経験をした。


地方都市の郊外に建つ築年数は2年くらいの比較的新しい2DKアパートだった。


家賃と共益費、駐車料合わせて6万円だった。


このアパート、せっかく借りたものの、1ヶ月ちょっとで明け渡さなくてはならなくなったことがあった。


実際、ほとんど住むことがなかったにもかかわらず、高額な費用を敷金から差し引かれ、内訳を見ると壁クロスの交換費用と畳6畳分の交換費用を請求されたことがある。


憤慨して、管理会社(この会社も同じ系列の大手不動産管理会社)の担当者に文句を言ったが、使おうが使うまいが支払っていただきますの一点張りで、しまいには本社に言ってくれとまで言われた。


結局クレームを言う労力や時間も惜しかったので、あきらめて払ったことがある。


これは極端な例かも知れないが、納得できない体験をした方は多いのではないだろうか。


最近、人口減少や人口に占める年齢構成の変化、ハコ(=物件)の供給過剰によるダブつき、不況の影響が重なり、家賃や礼金、敷金はダンピング状態になっているようである。


そして消費者保護のためか、家主に不利な法整備が進み、賃貸経営はますますやりにくくなっていくような気がする。


いずれにしても、あまり良い状態にある業界ではないように思われ、個人的にも行く末を憂いている。


なぜかというと、行き過ぎた消費者保護にも問題を感じるし、かといってアパート経営をしようと思う家主が減るような気がするからだ。


この問題に限らず、何かと難しい時代になったと思う。