【はっとの勝手に名画鑑賞会】
第483回「醜聞」(1950)
1950年公開、黒澤明監督作品、
「醜聞」を観ました。
東宝争議を経て、東宝を退社した黒澤明が、
山本嘉次郎、成瀬巳喜男、谷口千吉等と
映画芸術協会を設立し、松竹で初めて製作した
作品。
松竹では前回取り上げた「白痴」とこの作品
しか黒澤は映画を撮っていません。
事情があり、さんざんの評判だった「白痴」以前に製作された作品ですが、こちらはめちゃくちゃ面白いし、完成度が高い内容になっています。
ちゃんと松竹映画の雰囲気を大事にしながら、
過去の黒澤作品の良い所もふんだんに詰め込んだ内容になっていて、さすが娯楽系の脚本を書かせたら天下一品の菊島隆三が黒澤と共に良い仕事をしています。
ちょっと名作「スミス都へ行く」のテイストも感じられて、往年の映画ファンもニヤリとさせられます。
なんと!李香蘭こと山口淑子もヒロイン役で出演していて、その美しい歌声を惜しげもなく披露しています。
それに応えるかのように早坂文雄の音楽も秀逸なんですね。
三船敏郎、千石規子、左卜全、北林谷栄など
お馴染みのメンバーの安定した演技はもちろん、突出して良いのが志村喬ですね。
本人もこの映画の人間像が自分が演じた役の中で1番好きだと公言していて、活き活きと演じています。
野村芳太郎がある時、橋本忍に、「あなたと
出会ってしまったことにより、黒澤さんは
政治や思想など余計なものを作品に盛り込むようになってしまった。娯楽系で突き進めば、もっと世界に名を轟かす凄い作品を製作したかも
しれない」と語ったそうですが、
確かにこの作品然り、「七人の侍」、「用心棒」など娯楽に徹した黒澤作品は別格の面白さがあると僕も思います。
だからと言って言い過ぎのような
気もしますけどね(笑)
【人生はまるでロード・ムービー、
次回も一緒に過去に置き忘れた
宝物を探しに行く旅に出ませんか?】
それでは、また(^_−)−☆