【はっとの勝手に名画鑑賞会】
第479回「生きものの記録」(1955)
1955年公開、黒澤明監督作品、
「生きものの記録」を観ました。
当時、米ソの原水爆実験、第五福竜丸事件など反核の気運が高まる中、黒澤明がそんな
世相に翻弄される家族や人々を描いた問題作。
当時35歳だったにも関わらず、60過ぎの老人に扮した三船敏郎の迫真の演技が凄いです。
「七人の侍」直後の作品であり、ほぼ「七人の侍」と同じチームで製作されていますが、
興行的には全く振るわず、黒澤作品では珍しく
前代未聞の赤字になってしまったそうです。
題材が題材であり、ある意味、客が直視したく
ない現実を取り上げているのが失敗の原因だと
言われていますが、
果たして、この作品は失敗作なのか?と
問われれば、全くそんなことはなく、
福島原発事故を経験した今となっては、あまりに重要な内容の作品であると言っても過言ではないでしょう。
恐らく早過ぎた映画だったのかもしれません。
結局、人間は目に見えない都合の悪いものに
関して、それをなかったことにしてしまうようなところがあるのは今も昔も変わりませんからね。
その人間の業みたいなものを、いろんな側面から見事に描いていて、明確な答えをくれるわけではないですが、とても示唆に富んだ作品であると個人的には思います。
徳川夢声は、この映画を製作した黒澤に対して、「この映画を撮ったんだから、もうキミはいつ死んでも良い」と最大級の褒め言葉を与えています。
この映画を観た人が
三船敏郎演じる老人側に自分を投影するか?
それとも、それに対する家族側に投影するか?
で、この映画の楽しみ方も感想も変わって来て
しまうと思いますが、
僕は間違いなく老人側の人間なんでしょう。
恐らく黒澤にしてもそうなんだと思います。
いやもしかしたら、黒澤は苦悶する志村喬の役に自分を投影してるような気もしますね。
黒澤作品の音楽を支えて来た早坂文雄は
この作品の音楽を作曲中に体調を崩し、
残念ながら若くして亡くなり、
これが遺作となってしまいます。
期せずして、早坂が呟いた一言が、この映画の 製作のきっかけになっているってことで、
不思議な巡り合わせを感じますね。
いずれにしても、この作品からは今こそ学ぶべきことが多いと思うので、まだ観てない方は
是非観てみてくださいね♪
【人生はまるでロード・ムービー、
次回も一緒に過去に置き忘れた
宝物を探しに行く旅に出ませんか?】
それでは、また(^_−)−☆