一般的に「障害者手帳」と呼ばれるものには3種類あることは、これをお読みの方にとってはよく御存知ではないかと思います。

 

 

 そしてその中でも、自治体ごとに制度や基準、果ては「名称」までバラバラなのが「療育手帳」です。

 

 

 そんな中で、どこの自治体でもほぼ同様ではないか、と思うのが「療育手帳」でいうところの「再判定」の時期、なのかなと思います。
 尤も、国の基準によってそもそもの有効期間が2年と定められている「精神障害者保健福祉手帳」や、障害の原因となった疾患・年齢などでそれなりに「縛り」のある「身体障害者手帳」の「再認定」(不要であることも多いです)に較べれば、まだ「バラつき」があることは否めません。

 それでも概ね3年以内を目途にして「再判定」の時期を定めることが多いかと思われます。「小学校入学(6歳頃)」「中学校入学(12歳頃)」「中学校卒業(15歳頃)」「(現在では)成人前後(18歳頃)」に設定されることが多く、小学校の途中(8~10歳前後)でも実施する自治体も少なくないと思います。

 しかし、ほとんどの自治体では18歳頃の「再判定」が「最後」になります。

 成人した後に「障害の程度」が変化することはほとんどない、ということなんだろうと思います。
 尤も、何らかの要因によって重度化することや軽快することがないとは言い切れませんので、再判定を申請する(または「返納」する)ことはできるようです。

 長男は、中学3年生の時に療育手帳を申請し、発行されました。

 

 

 判定は「軽度」(「4度」とか「B2」などと呼ぶ自治体が多いです)で、再判定は18歳になった後の7月、とされています。
 従ってこの再判定は、高校を卒業した後、ということになります。成人している(というより18歳になっている)ため、判定は児童相談所ではなく(知的)障害者更生相談所で、ということになります。

 元々、(高等)特別支援学校への進学の可能性を考慮して、ということでの申請でしたが、既に何度も触れたとおり、全日制普通科の公立高等学校に入学したので、特にこれがないと困る、ということはありません。
 障礙者に対する福祉サービスの受給についても、元々持っている「身体障害者手帳」(第1種・3級)があるので、ほとんどのことはそちらでカバーできてしまいます。
 活用する機会があるとすれば、この後に控えている「就職」の場面だろうかと思います。

 就職にあたって、「障害のある人を対象とした採用区分」を設定している企業等も少なくありません。そしてその中には「身体」「知的」「精神」の区分別に採用試験・選考を行うところもあります。
 「障害者雇用促進法」などの観点から言えば、雇用される人が「障害者」である場合に、この3つの「区分」のいずれに当たるのか、「重度」なのか否か、ということが、企業等にとっての「法定雇用率」に関わる部分です。個々の障礙がどの程度であるのか、どのような配慮が必要なのか、は、就業後の課題(「障害者差別解消法」やその他の労働関連法の範疇)にはなりますが、採用時には「そこまで見ていない」ことが多いのではないかと思われます。

 長男の場合は「身体障害者」の区分であれば、手帳を返納しない限りずっと該当しますが、「知的障害者」の区分となると、高校卒業時には該当するものの、その後はわかりません。18歳の「再判定」で「非該当」になってしまったら「制度上は」知的障害者ではなくなってしまいます(言葉としての「違和感」がすごいですが)。
 期間を定めず雇用される場合、雇用者側から見れば「障害者」であることに変わりはない(ただし最近では障害種別によって雇用者が受けられる助成に差があることがあったりします)ので、そのままでいい、となる可能性があります。しかし、有期雇用の場合には、再度雇用の際には「知的障害者」でなくなっている可能性があるため、同じ区分での採用対象にならないことも考えられます。
 本人は、大学に進むつもりはないようですが、専門学校などで学ぶことは選択肢の中にあるようですので、18歳の「再判定」で「非該当」になってしまった場合、その後の就職については「一般」か「身体障害者」として考えるしかなくなってしまいます。

 18歳の「再判定」は、長男にとって「最初で最後」の再判定になると思うのですが、ここで引き続いて「4度(B2)」の判定になるかどうかが「分かれ目」になります。
 流石に「3度(B1)」以上ということはないでしょうし、もしそうであれば当地のルールでは「身体3級」以上との重複によって「2度(A2)」に繰り上がるので「重度障害者」になります。そうなると、税控除や医療費、果ては「法定雇用率」の計算上も「2人分」でカウントされますが。
 判定が重度であれ軽度であれ、それはあくまでも「書類の上の話」です。長男本人そのものに、何か違いがある訳ではありません。ありのままで判定されれば、そういうものとして受け止めるしかないでしょう。

 少なくとも「発達障礙」であることは間違いなく、自閉症系の診断名での「診断書」は、ほぼ確実に書いてもらえます。
 従って「療育手帳」が非該当になったとしても「精神障害者保健福祉手帳」の対象にはなり得ます。
 しかし、既に「身体障害者手帳」があるのなら、そこまでして「精神障害者保健福祉手帳」を持つメリットは薄いと思っています。2年に一度「更新」が必要なこともあります。

 自閉症(自閉スペクトラム症)などの発達障礙は、病気というよりも「障礙」ですので、基本的に治るものではありません。療育や訓練などによって、見た目上で「障礙が目立たなくなる」ことはあるかも知れませんが、身体障礙における「補装具」の代わりに「療育や訓練」でカバーしているにすぎません(言わば「形のない補装具」です)。
 2年ごとの「更新」が必要な「精神障害者保健福祉手帳」の精度には馴染まない障礙のように思います。

 仮に長男が高校卒業後、そのまま「期間の定めのない」雇用形態で就職したとしても、その後のことも考えれば、療育手帳の「再判定」は受けたほうがいいのではないか、と思っています。
 就職(再就職も含む)の際には、直接の関係や必要性が少なくても「使える『武器』は多いほうがいい」と思います。色々な「資格・免許」や「検定」などと同じことではないでしょうか。
 勿論、それ以外の場面も含めて「出す必要がない場面」であれば、出さなくて構わないでしょう。それも「資格」「免許」と同じです。別に(例えば)「英検2級」などと首から下げる必要もないことと同じです。

 この「療育手帳」の有無について、就職関係でも福祉サービス等でもない面で、一つ気になっていることがあります。

 これも何度か触れましたが、長男は現在、高校の部活動で「ボウリング部」に入っています。
 そして、今では「全国大会」にも出場するほどのレベルになりました。

 ボウリングも「スポーツ」ですので、色々な「大会」がありますし、その中には「全国規模」のものもあります。そして他のスポーツと同様に「障礙者」を対象とした大会もあり、その中でも全国規模の代表格が「全国障害者スポーツ大会」略して「障スポ」でしょう。
 「オリンピック」と「パラリンピック」の関係と同様に、「国民体育大会(国体)」改め「国民スポーツ大会(国スポ)」と「全国障害者スポーツ大会」も例年「同じ会場で連続して開催」されます。
 「オリンピック」や「パラリンピック」にはボウリング競技が採用されていないのですが、国体改め「国スポ」や「障スポ」にはボウリング競技も採用されています。
 ただし「障スポ」のボウリング競技は、知的障害者部門しかありません。これは20世紀末まで「全国身体障害者スポーツ大会」と「全国知的障害者スポーツ大会」として別々に開催されていたものが統合された経緯が関係しています。ボウリング競技の特性上、身体障礙の場合には「視覚」や「肢体」についてはそれぞれに対応する設備や道具が必要になることも関係がありそうです。

 「国スポ」にしろ「障スポ」にしろ、本大会に出場するためには、都道府県(障スポについては政令市をそれぞれ都道府県と同様の扱い(67都道府県市の選手団が参加という形態)にします)ごとの「選考会」で選出される必要があります。競技によっては更に「地方ブロック予選」も通過する必要があるものもあります。
 ボウリング競技については、国スポは都道府県予選と地方ブロック予選を通過する必要がありますが、障スポは都道府県・政令市の予選のみです。

 障スポについては、各都道府県や政令市での「予選」や「選考会」を兼ねた「●●(都道府)県障害者スポーツ大会」というような大会として開催されることが多いです。当地でも同様です。
 長男もこれまで3回ほど参加し、昨年は「少年の部」で準優勝したのですが、まだ障スポの選手に選ばれたことはありません。
 障スポの場合、年齢によって「少年」「青年」「壮年」の3区分があります。「少年の部」は、その年度の4月1日現在で19歳以下が対象ですので、今年(17歳)を含めて3回のチャンスが残っていました。
 そして当地の「少年の部」でこのところずっと「優勝」していた選手が、今年から「青年の部」に移りますので「今年は優勝のチャンス」と思っていました。

 一方で、高校のボウリング部員でもありますので、国スポの都道府県予選にも出場しますが、これはレベルが高すぎて、正直「参加することに意義がある」ような「超ハイレベル練習会」的な参加です。1ゲーム平均で230点から240点くらいを、数回に分けて20ゲーム前後続けなければ予選通過できません。
 競技としてボウリングをしている人は勿論、そうでない人でも「平均で230~240点」と聞けば、並大抵のことではできないとお分かりいただけるかと思います。
 ちなみに障スポの場合でも、当地では少なくとも平均180点前後以上が必要で、「これまでの出場歴も勘案してなるべく多くの選手に経験させる」という観点も入ります。平均180点となると、本格的にボウリングを始めてから6~7年になる自分でも「調子が悪くなければどうにかなるかな」というレベルです。でも今の長男は「調子が良ければ平均200点超えする」レベルになっていますので、可能性はあります。

 ところが、今年の「予選会」を兼ねた「障害者スポーツ大会」の日程が、「全日本高校ボウリング選手権(全高)」の都道府県一次予選会と重なってしまいました。
 当地では、国スポと障スポの予選会の日程は、例年まず重ならないのですが、「全高」と重なるとは思いませんでした。
 結局「障スポはあと2回『少年の部』で出られるけど、全高は今年が最後のチャンスだから」と全高の予選に出ることを選び、「障害者スポーツ大会」はキャンセルしました。
 全高の一次選考会は通過し、最終選考会も上位に残ったので、正式な通知はまだですが、(例年の出場枠数ならば)出られるのではないか、と思います。

 しかし、ここで「問題」が一つあります。

 「あと2回『少年の部』で出られる」ことが確実なのは、都道府県(政令市)の「障害者スポーツ大会」での話です。
 当地の「障害者スポーツ大会」は、なるべく多くの「障礙者」が参加できるように、ということからか、例えばボウリング競技の場合、「障スポ」では対象にならない「身体(ただし内部と聴覚のみ)」「精神」の手帳所持者についても「オープン参加(障スポ予選としては扱わない)」ができます。
 そもそもの「障害者」に該当するかどうかについても、事務局になっている障害者リハビリテーションセンターが、手帳の有無だけではなく判断してくれます。

 ところがこれが「障スポ」となると、そうもいかないのです。
 全国の都道府県・政令市から代表選手団が参加するため、統一された「基準」が必要になります。
 そのため「知的障害者」についても、

1 療育手帳の交付を受けている
2 知的障害者であることが判る医師の診断書がある
3 (知的障害者を対象とする)学校・施設等の在籍・卒業等を証明する書類がある

のいずれかが要件になっています。

 自閉スペクトラム症などの発達障礙は、「知的障害」と同義ではありません。
 「療育手帳」の交付対象に含まれるのは、あくまでも「知的な遅れ(度合いについて自治体ごとに差がありますが)を伴う発達障礙」なのです。
 従って、18歳の「再判定」で「非該当」になると、来年の障スポの時点では「1」を満たさず、ということは「知的障害」を有するともみなされないことになるので「2」も満たしません。
 「3」が微妙で、高校は対象ではないため、小・中学校の「特別支援学級」に在籍していたことの証明、で足りるかどうかですが、特別支援学級も区分上は「知的障害」と「自閉・情緒障害」に分かれるため、厳密には後者に所属していた長男の場合は(証明書の表現にもよるでしょうが)該当しない、とされても仕方ない気がします。

 その場合でも「障害者スポーツ大会」の申し込み時に「障スポへの派遣を希望」欄に「しない」と選択すれば、そのまま「少年の部」には出られます。
 「身体」で参加すると「オープン参加」になり、「少年の部」ではなく「オープン参加」の中での順位になりますが、それでも優勝できる可能性はあると思ってはいます。
 しかし、来年の申込時には、まだ「再判定」前なので、どうなるかわかりません。恐らくそのまま、今年と同じように申し込んで参加し、再判定の結果によっては事務局に「実は……」という話をすることになる可能性もあります。

 

 「国スポ」は、少年男子として予選に出られるのは今年が最後になり、来年からは出るとしても「成年男子」になってしまうため、更にハードルが上がります。実際、ちょっと無理だろうな、と思います。

 しかし「障スポ」ならば、可能性は低くないと思うレベルになっています。

 あと2回ある「少年の部」での出場機会のうちに、どうにかならないか、という気もしますし、仮に「青年の部」に移ったとしても、選考方法も「国スポ」とは違いますので、可能性はあると思っています。

 

 成長して、発達障礙による課題がかなり軽減されていく中で、中学卒業後の進路の「幅」を拡げようと取得した療育手帳でしたが、実際に活用する場面はありませんでした。

 ですが、就労については「武器」になり得ますし、進学の選択肢を拡げるきっかけになっただけではなく部活動でも取り組み「全国大会レベル」にまでなっている「ボウリング」についても、その活動の「幅」を拡げるための「武器」として、活用する機会がありそうになっています。

 

 しかし、以前にも書いたとおり、成人してから療育手帳を取得するのは困難です。

 そう考えると、3年前に取っておこうと腰を上げたことは、間違っていなかったな、と改めて思います。

 

 こんなこともあるので、療育手帳を申請するかどうか迷われている当事者やその保護者の方には、改めて「取得についてのメリットはいくつもあり、デメリットは『気持ちの問題』だけ」ということを強調しておきたいと思います。

 必要がなければ出す必要はなく、「お守り」あるいは「伝家の宝刀」として持っていればいい、と思いますので……。