知的障害者福祉法に根拠が規定されていない「療育手帳」だが、その交付基準が都道府県・政令市ごとにまちまちであることを以前に書いた。基準どころか「名称」すらバラバラという状態である。


 ……という話を、よく聞く。


 実際のところ、どうなんだろう。
 ということで、各都道府県と政令市のウェブページなどを検索してみた。
 その結果、療育手帳に別の「名称」を付けている自治体は、次のとおり。


「愛の手帳」 東京都・横浜市
「愛護手帳」 青森県・名古屋市
「みどりの手帳」 埼玉県・さいたま市


 ……意外と少なかった(笑)。ただし、人口では最大の都道府県(東京都)と市(横浜市)が、別の名前(偶然にもその2自治体での名称は同じだが)を付けている。そして、埼玉県や名古屋市といった、やはり規模が大きな部類に入る自治体でも「療育手帳」以外の名称を使用していることから、別な名称を付けられた療育手帳は、相当な数が発行されているのだろうと思われる。


 なお、厚生労働省では、「療育手帳」であることがわかるよう、表紙等には「○○県療育手帳」のような表示をするような通知だったかを出していたことがあったらしい。
 筆者が実物を見たことがある「療育手帳」のうち、別の「名称」を持っていたのは、東京都と横浜市のいずれも「愛の手帳」。都のモノは表紙に「愛の手帳」と大書きされ、下段に都のシンボルマーク(イチョウの葉っぱの形の奴)を先頭に付した「東京都療育手帳」の少し小ぶりな表示がある。横浜の表紙も最上段に「愛の手帳」と大書きしてその下に「(横浜市療育手帳)」と添書き、下段に「ハママーク(横浜市章、カタカナの『ハマ』を縦に並べた菱形のマーク)」と「横浜市」の文字が並んでいる。いずれも一応は「療育手帳」だと判る仕様になってはいる。


 ところで、療育手帳には、身体障害者手帳と同様に「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」の表示があり、そこに「第1種知的障害者」または「第2種知的障害者」と記入されている筈なのだが、何故か航空運賃の障害(障がい)者割引を受けるためには、それとは別に「航空割引、本人・介護者」または「航空割引、本人」の証明印(手帳の発行元で証明するらしいが、それならば1種・2種の表示で足りそうな気がして仕方がない)が必要であると書かれている。この区分、身障手帳の1種・2種と同じ筈で、身障手帳にはそんな証明印は必要なく、単にJRの1種・2種の表示で足りるようだが、その違いは何なのだろうか。
 療育手帳が、本当に広く理解されるのは、一体いつになるのやら。