Banbi通信 VOL.350 | 初鹿明博オフィシャルブログ Powered by Ameba

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外国人技能実習生、3年間で69名が死亡

 外国人受け入れ拡大法案の強行採決に強く抗議する

 

 外国人を労働者として受け入れる新たな在留資格を設ける入国管理法の改正案が会期延長することなく成立してしまいました。

 経済界からの強い要請を受けた安倍総理が来年の4月からの受け入れを可能とするため、この臨時国会内での成立にこだわった為に、十分な審議を行うことなく、与党の数の力で押し切られてしまいました。

 5年間で最大34万人の受け入れを行うと表明していますが、これだけ大量の外国人を受け入れることになると、この国の在り方が大きく変わるかもしれない大きな政策転換であり、国民への説明を丁寧に行い、理解を求めていく必要があり、48日間という短い会期内での議論で済むはずはありません。それにも関わらず、議論を閉じて採決を行ったことは非常に問題だと感じています。

 そもそも、来年の4月ありきで進んでいたので、制度の詳細が全く詰まっていないままに法案を提出してきたのです。例えば、真に人手不足の分野に限って外国人労働者の受け入れを認めるとしながらも対象となる業種や分野は法律が制定された後に政令で決めることにしています。また、単純労働者を入れるのではなく一定の技能や専門性を持った労働者のみ入れるのだと言っていながら、一定の技能がどの程度のものなのかも法律が決まってから考える。新たに設けられる在留資格の「特定技能」で就労した期間を永住権の取得に必要とされる日本での就労期間と見做すかどうかも決まっておらず、新たに在留する外国人のうちどの程度の割合で永住者となっていくのかも分からないで、移民政策ではないと安倍総理は強弁していました。このような状況ですから、国会で審議をしていても、野党の質問に対して「法律が成立した後に、政令で定める」という答弁しかせず、議論が全く深まりませんでした。憲法第41条には「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」と規定されていることは皆様もご存じだと思いますが、今回の法案は国会で決めるべきことを官僚が決める政令に委ねてしまっていて、憲法を無視し、議会制民主主義を冒涜するような酷いものなのです。このような法律の出し方を認めてしまえば、国会での議論が殆ど意味をなさなくなり、民主主義の基本が失われてしまいます。明らかなる欠陥法案であったことを理解していただきたいです。

 また、今回新設される在留資格「特定技能1号」は技能実習からの継続を前提とするような要件になっていますが、野党による合同ヒアリングや国会審議の中で技能実習制度の問題点も明らかになりました。技能実習制度は海外から実習生を受け入れ我が国の技術をその国に移転することを目的とする国際貢献であるという建前を唱っていますが、実際に受け入れている企業の多くが労働力不足の穴埋めとして技能実習生を受け入れているのが実態となっています。事実上の労働者であるにも関わらず、労働法規もきちんと適用されず、ひどい待遇で働かされているケースが後を絶たず、国連やILOから「技能実習制度は現代の奴隷制度である」から改善を図るべきだとの勧告を度々受けているのです。そして、毎年、7000名以上の実習生が実習先から失踪しているのです。

 法務省は失踪した実習生約2800名から聞き取り調査を行っており、失踪動機などを公表していました。法務省は当初失踪動機の87%が「より高い賃金を求めて」としていましたが、野党の側から、調査の元となるひとりひとりの調査票(個票)を開示せよとの要求を出したところ、この数字を67%に引き下げる訂正をしてきたのです。

 そして、政府は個票を開示せざる得なくなりましたが、与党は公開するものの閲覧のみで、手書きで書き写すことは認めるがコピーは認めないという驚くべき対応を決めたのです。

 この調査は2年前の法改正時に衆参の委員会で附された附帯決議に基づいて行われた調査です。国会からの要請で行ったものであるのに、国会議員がコピーすることも認めないという暴挙を行ったのです。与党による数の力で決められてしまったので、我々野党は手書きで2800枚書き写す作業を手分けして行った結果、7割近くが最低賃金を下回る賃金で働いていたり、週160時間を超えるような長時間労働を強いられていたりという「より高い賃金を求めて」という理由とは大きく異なる実態が明らかになったのです。確かに今の賃金に不満があり、逃げ出したのかもしれませんが、最賃以下で働かされていた外国人がその悲惨な職場から逃げ出したことを「より高い賃金」を求めてという欲をかいているかのような印象を持たせる発表の仕方をしたことに強い憤りを感じます。

 このように新たな制度の前提となる現在の技能実習制度の問題点を改善せずに、新たな在留資格を設けることは断じて許すわけにはいかないと思います。

 参議院で採決を提案されたその日に更に驚くべき事実が判明しました。それは3年間でなんと69名もの技能実習生が亡くなっていたのです。

 日本に憧れ、夢を抱いて来日した外国人を失踪しなければならないような奴隷扱いをしたり、最悪な事態では死を選ばざるを得なくなるような事態が起こっているのに、何ら改善を図らずに外国人をより多く受け入れる制度を新設して良いのでしょうか。我々はまずは技能実習制度を廃止して、国際貢献などという誤魔化しはもう止めて、労働者としてきちんと受け入れる制度に転換するべきだと考えています。

 技能実習制度の闇の部分に目を瞑っていては、国際社会からの批判に耐えられないし、美しい日本からほど遠い、恥ずかしい国となってしまうのではないでしょうか。

 立憲民主党は他の野党と連携して、内閣不信任案を提出するなどして徹底抗戦しましたが、数の力の前に、成立を許してしまいました。

 しかしながら、ここで諦めることなく、国際社会から奴隷制度と批判されるような技能実習制度を廃止し、外国人を単なる労働力として受け入れるのではなく、地域社会で共に暮らす生活者、人間として受け入れ、共生していく多文化共生社会を構築することで、海外から尊敬される日本にしていきたいと考えています。