「志木第九の会」第21回定期演奏会 | 孤独な音楽家の夢想

「志木第九の会」第21回定期演奏会

■「志木第九の会」第21回定期演奏会

【日時】2024年9月1日(日)開演14:00

【会場】富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ メインホール

【入場料】2,000円(全席自由)

【問い合わせ】志木第九の会 090-4474-2901(大村)

 

【曲目】

佐藤眞:混声合唱のためのカンタータ《土の歌》

フォーレ:《レクイエム》

 

【出演】

指揮:三澤洋史

ソプラノ:藤崎美苗

バリトン:大森いちえい

ピアノ・オルガン:矢内直子

エレクトーン:長谷川幹人

合唱:志木第九の会

 

 

 大学生の頃からお世話になっている「志木第九の会」が、21回目の定期演奏会を迎える。これを、僕たちは、門出の演奏会と捉えてみてはどうだろうか・・・。

 

 前回の演奏会は2022年9月、節目となる第20回定期演奏会を「志木市民会館パルシティホール」で行った。ヘンデル《メサイア》全曲公演だった。これが、長年お世話になってきた「志木市民会館パルシティホール」での最後の定期演奏会となり、その後、市民会館は取り壊しとなった。ある意味、かつての「志木第九の会」は、これをもって完結したのかもしれない・・・。

 というのも、この演奏会は、2001年の第8回定期演奏会で、ヘンデル《メサイア》を抜粋で演奏したことと関わりがあった。つまり、「全曲」を「オーケストラ」で演奏したい・・・という団員の強い希望であった。大学4年生だった僕は2000年から指導陣のひとりに加えていただき、第8回定期演奏会では、ソリストも務めさせていただいた。それから団内クラブ「志木グリークラブ」の指揮・指導もさせていただいて、メンバーとは濃密に関わらせていただいた。

 しかし、残念ながら、コロナによって、団内で決定的な分裂が起きてしまった・・・。どうすることもできなかった・・・。僕の故郷のような温かな「志木第九の会」が、まさか、そのようになるとは思いも寄らないことだった。青天の霹靂とはこのことだった。コロナは、容易に、人と人とを分断させた。そこから逃れることができなかった。そして、この事件が、身体に影響したのかもしれない・・・。長年、強いリーダーシップで「志木第九の会」を牽引してきた事務局長の岡嶋登紀子さんが引退した。・・・それでも、「志木第九の会」は、20年越しの希望を形にすべく、2022年、第20回定期演奏会にて、ヘンデル《メサイア》全曲演奏会を行った。光栄にも、ソリストを務めさせていただいた。

 

 ・・・「志木第九の会」に関わらせていただいて24年。この月日は、僕の音楽人生そのものである。たくさんの人びとに出会い、お世話になり、そしてさまざまな形で別れた。それらひとつひとつが、僕の財産である。本当にありがたいことだった。何も分からない僕を、温かく迎えてくださり、諦めずに育ててくださったのだから・・・。

 今、合唱団をぐるりと見渡すと、24年前に歌っていたメンバーはほとんどいなくなってしまった。それでも、頼もしいメンバーがたくさん加わり、「志木第九の会」は継続されていく。事務局長の岡嶋さんのお弟子さんで、長年、「志木第九の会」でピアニストを務めている矢内直子さんの存在は大きい。岡嶋さんの精神が、矢内さんにしっかりと受け継がれている。

 僕たちは、志木市に新たな市民会館ができるその日まで、「志木第九の会」を盛り立てていかなければならない。「こけら落し」は、「志木第九の会」が《第九》を晴れやかに演奏すべきである。それには、いろいろな意味で、力をつけていかなければならない。・・・それが、これまでお世話になってきた方々の願いであろう。それがいつになるか分からない。だが、願い続けることが大切だ。歴史をつなぐ・・・これが残された者にとって、最も重要なことである。

 

 「志木第九の会」には、しっかりと根付いているのだ。「志木第九の会」の精神が・・・。矢内さんにも、僕にも、そして新たにバトンタッチされたメンバーにも・・・。・・・種子はすでに、大地に撒かれているのだ。たとえ、天変地異が起ころうとも、人と人とが不和になろうとも、戦争の災厄が起こっても、やがて、地上に芽を出し、花開く時が来るだろう・・・。

 このタイミングで、《レクイエム》を、そして《土の歌》を演奏する意味が、じわじわと僕の腹に落ちていくのを実感する・・・。

 

by.初谷敬史