コール・エッコ第28回定期演奏会 | 孤独な音楽家の夢想

コール・エッコ第28回定期演奏会

■混声合唱団「コール・エッコ」第28回定期演奏会

11月13日(日)開演14:00

コスモスホール(栃木市岩舟文化会館)

 

◇混声合唱組曲「心の四季」(作詩:吉野弘、作曲:高田三郎)

◇「イギリス合唱音楽の楽しみ」

カノン「夏は来たりぬ」(作者不明)、ベネット:「泣け、わが瞳よ」、パーセル:「3つの短いアンセム」、ラター:「天使のキャロル」、アイルランド民謡「ダニー・ボーイ」(編曲:チルコット)

◇「第2回コール・エッコ紅白歌合戦」

「ゆけゆけ飛雄馬」vs「おしえて」、「あずさ2号」vs「ア・ホール・ニューワールド」、「最上川舟歌」vs「おてもやん」、「栄光の架橋」vs「ウィスキーがお好きでしょ」、「民衆の歌」

 

合唱:コール・エッコ

アナウンス:関口真弓

チェロ:吉谷夏子

エレクトーン:石川龍子

ピアノ:荒井俊子

指揮:初谷敬史

 

 待ちに待った「コール・エッコ」の定期演奏会。今回もメンバーがいろいろと趣向を凝らし、楽しいコンサートをお届けする。

 第1部では、現存する世界最古のカノンと言われる中世イングランドの「夏は来たりぬ」(1280 年頃〜1310年頃)をはじめに、イギリスの合唱曲を年代順に並べた。東アジアの島国日本と同じように、音楽において、イギリスは大陸ヨーロッパとはすこし違った発展を遂げてきたと言えよう。それは、いつもヨーロッパからすこし遅れて、そして、イギリス風に・・・。イギリス風・・・とは、とても形容しがたいが、その特徴をひと言で言うなれば「驚くほどの心地よさ」であろう。それぞれの曲の時代的な様式の特徴を活かしながら、分かりやすい解説付きで演奏する。

 第2部では、前々回の定期演奏会で好評だった「紅白歌合戦」を再び企画した。赤組(女声合唱)と白組(男声合唱)に分かれ、歌で競いあう。審査員は、もちろん会場のお客さまだ。全演奏が終了すると、「野鳥の会」が正確に赤と白の札を数える。笑

 第3部は、日本の合唱曲の名曲、高田三郎『心の四季』を演奏する。この合唱組曲を、以前、前任の指揮者であった茂木先生の指揮で演奏したというが、僕の指揮で、もう一度歌ってみたいという意見が多数あり、演奏会のメインに据えた。・・・その辺りの僕の想いは、プログラム・ノートに記した。

 

◆『心の四季』を演奏するにあたって

 

 高田三郎という作曲家を、僕はこころの底から信じている。・・・このように書くと、何かの宗教であるかのように思われるかもしれないが、そうではない。これは、ある種、直観的な働きによって至った、僕の結論である。

 2013年のコール・エッコ第25回定期演奏会において、高田三郎『わたしの願い』(高野喜久雄 作詞)を演奏した時、僕は舞台上でこの上ない幸福と感動を味わった。この楽曲のもつ真理、そしてこの詩のもつ真理が、その時の僕のすべてを捉え、全身を震わせていたからだ。何もできない僕ではあるが、『わたしの願い』を一生懸命に演奏することで、すべての人びとを幸福にすることができるかもしれない・・・と思えたことは、僕の音楽人生にとって、とても大きな出来事であった。

 2015年に足利で高田三郎『水のいのち』(高野喜久雄 作詞)を演奏した時も、同様のことを感じた。僕が仮定したのは、「この組曲は、ミサ曲である」ということ。肉体と精神の狭間でもがく人間の、精神的な救済を願っているのではないか・・・、と。

 僕は高田三郎が、音楽を通じて、すべての人びとの幸福を願っている・・・と思えてならない。『心の四季』を前にして、いま、改めてそう思う。人が、ただひとり、人生に立ち向かうように・・・、人が、ただひとり、死と向かい合うように・・・、人がただひとり、神と向かい合うように・・・、静かに己のこころと向かい合うのだ。何も飾ることのない、ありのままの己のこころと。そこにきっと、その人それぞれの苦悩に満ちた美しさや輝きを発見するにちがいない・・・。

 今回、『心の四季』を演奏するにあたって、作為的な表情の付け足しを、敢えてやめた。拍節法に則った和声の自然な流れを基本とし、言葉が内包する意味や力がそれと一体となって表出されるように、細部まで配慮した。それが、高田三郎が意図したことであるだろうし、それが、この作品の「こころ」であると思うからである。  (プログラム・ノートより)

 

by.初谷敬史