Mは少し太ったようだ。
会うたびに小さくなっていってたのに。
「胃が痛くて、何も食べれない。」そう言ってた2ヶ月前。
そりゃ、そうだろう。彼女は、半年前に会社を立ち上げた。それだけでも、かなりのテンションとストレスなのに、彼女の私生活は、そのとき最もきつかった。
その時というか、その前からも、これからもずっとずっと、胃酸の出が激しくなるような毎日を送らなければならない。
彼女は、かなりエキセントリックなところがあるが、社長だの、代表などの看板はって仕事をする女子にはかならずそんなところがある。気性が激しく、負けず嫌いだ。
良家の男子の中には、「ボク、こわい人は苦手ですー。」と早めにご遠慮宣言する人がいるかもしれない。
反面、このかなりのじゃじゃ馬を「愛いやつ、近こう寄れ」と手招きする悪代官、いやいや紳士もまた、たくさん存在する。
Mは美人だし、誰に対してもサービス精神を忘れないから、食いつかれもすこぶるよい。
しかし、彼女は、心の中では、ただひとりのっ、たったひとりの男子のことだけ、考えてる。
考えてるだけじゃない。元はと言えば、起業したのだって、その男のためだ。
身もこころも、ってなもんじゃない。 尽くして家で待つ昭和のおんなじゃなく、自分でおとこの腕をつかみ、
さあ行くのよって、引っ張っていく平成のおなご。(男前やね~)
でも、、、そんな男前のMの相手が欲しいのは、たまに彼の家で待ってる、
甘いだけの女の子かもしれない。
彼女はときどき、そんな現実に気づかされる。
仕事がうまくいけば、それはうれしい。しかし、だからって、憂いが彼女の顔から消えることはない。
「ねえ、肉食いたいよね、肉!」
焼肉って時間じゃないから、近くのファミレスに立ち寄る。
Mにはステーキ定食、私には、ハンバーグがいっしょに運ばれて来た。
Mは、化粧のせいか、少しつんとして見える顔つきが崩れるのも気にせず、遠慮なくがばっ!と口をあける。
箸につままれた和風ソースのかかったステーキ、フライもの、白米が勢いよく飲み込まれていく。
くちびるには、ぎらぎら油と口に入りきらなかった茶色のソースが。
しばらくへびがマングースを呑む、いや、かえるが昆虫を食べる、もとい、
肉肉しい目の前の絵づらに気を奪われながら、わたしも自分の注文したハンバーグを食べる。
ハンバーグが貧弱に思える。
「食欲でてきたよね。」 取りあえず、そんなこと言ってみた。
ストレスで、まったく食べられなかったころのMを知ってる私は、思った。
私が男なら、飲み込まれたいな。
でも、途中で吐き出さないでよね。
註)私はノーマルです、誤解のなきように
本日は、小説風でありました。